
南北戦争のアメリカで、北軍スパイに機関車と恋人をさらわれた機関士が孤軍奮闘の末取り戻す様を描くアクション・コメディ(映画.comより引用)。1926年日本公開作品。監督はバスター・キートンとクライド・ブラックマンで、出演はバスター・キートン、マリオン・マック、グレン・キャベンダー。
原題は『The General』ですが、別邦題に『キートン将軍』と『キートンの大列車強盗』があって、検索するのに面倒くさいのが本作です。
監督・製作・主演を務めるバスター・キートンは、チャーリー・チャップリン、ハロルド・ロイドと並ぶ「世界の三大喜劇王」の一人です。特徴として、無表情で体を張った無茶なアクションを見せて笑いを取ります。
さらわれた恋人(マック)を取り戻すために、列車で追跡するアクションが見所です。走行中の車両の上を歩いて渡ったり、列車の先頭に張り付いたりします。列車に積んだ大砲による砲撃シーンや、車両が脱線して転倒するシーンもあります。実は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』と、やっていることは変わりありません(列車と自動車の違いはありますけど)。
恋人役の扱いが意外と雑で、麻袋に詰めて運んだり、放水でズブ濡れにしたりします。戦場シーンでは、兵士の死傷をも笑いに結びつけます。笑いのためなら、マナーやモラルを無視する、狂気じみた追求心が感じられます。
キートンのように体を張ったアクションで笑いを取る流儀は、ジャッキー・チェンに継承されたのではないかと、私は前から思っていました。ジャッキーの命懸けのアクションは、その危険度の割に殺伐としたムードを出しておらず、むしろ明るい娯楽として楽しむことができるからです。キートンが撮影中に首の骨を折る大怪我をしたことがあるのに対し、ジャッキーは撮影中に頭蓋骨骨折の大怪我をしたことがあるという共通点もあります。
そして、ジャッキーの体を張ったアクションの継承者は、トム・クルーズではないかとも思うのです。『ミッション・インポッシブル』シリーズで高層ビルの壁に張り付いたり、空中の飛行機にぶら下がったりと、驚愕のアクションを見せますが、トムの陽性なキャラクターのおかげで明るい娯楽の範疇に収まっています。キートンの笑いは意外な人物に受け継がれているというのが、私の仮説です。
★★★☆☆(2016年1月14日(木)DVD鑑賞)
昭和の喜劇俳優、益田喜頓(ますだきいとん)の芸名の由来でもあります。