
昭和35年の大阪を舞台に、戦後最大規模の暴力団抗争事件を描いたアクション映画(映画.comより引用)。1976年公開作品。監督は中島貞夫で、出演は松方弘樹、梅宮辰夫、渡瀬恒彦、伊吹吾郎、成田三樹夫、小林旭、丹波哲郎。
『仁義なき戦い』シリーズのヒットによる、東映実録ヤクザ映画路線の勢いがある時代の作品です。それ故、『仁義なき戦い』シリーズなど他の実録ヤクザ映画と、出演者の顔ぶれが重複しています(タイトルも似たような作品が多いので、ファンでも作品を明確に区別できないことがあります)。
中島監督は、初期の『893愚連隊』から何度も組んだ松方を主役に置き、本作後、隠れた傑作『狂った野獣』で主役にする渡瀬をエネルギッシュに暴れさせています。タイトルにある「電撃作戦」の言葉どおり、ダレることなく、溜めることもなく、ハイテンションなアクションの連続で物語は展開していきます。
神戸最大の組織、川田組三代目組長を演じるのは丹波です。丹波は『仁義なき戦い 代理戦争』で神戸明石組の組長を演じています(スチール写真のみの出演で、台詞はありませんが)。川田組も明石組も、実在する山口組がモデルで、そこの三代目組長は田岡一雄ということになります。当時の芸能界でも有力者だった田岡なので、ヤクザ映画の田岡役にもスターが当てられ、『山口組三代目』では高倉健が演じています。本作でも、やはり大物の丹波でなければならなかったのでしょう。
川田組組長や幹部を演じる、丹波、小林らの貫禄ある大物感に対し、室田日出男や織本順吉が演じる組長役には、人間臭いセコさが出ています。この対照は、大企業の地方進出に対する中小零細企業の社長の姿のようであり、社会風刺になっています。
川田組に狙われる大阪双竜会は、構成員の役名で分かるように、在日朝鮮人の組織です(オープニングバックのスチール写真には、コリアンタウンとして有名な鶴橋の看板が映ります)。双竜会の構成員が、圧倒的に数で勝る川田組配下のヤクザの「人間狩り」に遭うシーンの残虐さには、在日朝鮮人差別が根底にあります。幕末から昭和にかけてのテロリストの生き様を描いた、『日本暗殺秘録』の中島監督ですから、娯楽映画に政治性や社会性を取り入れても、不思議ではありません。
強大な敵に対し、無謀と分かっていても反抗し、命を散らしていく血気盛んなアウトローの生き様に、中島監督は共感を覚えるようです。その姿勢は、神風特攻隊の短い青春を描いた『あゝ同期の桜』から一貫しており、思想が右か左かなどという、低次元な枠を超越した境地にあるのです。
★★★★☆(2015年12月16日(水)DVD鑑賞)
「三代目」と言っても、どこかのダンスグループみたいにチャラくないですよ。