【映画評】ブルージャスミン | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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ニューヨークの資産家ハルと結婚し、セレブリティとして裕福な生活を送っていたジャスミンは、ハルとの結婚生活が破綻したことで地位も資産も全て失ってしまう。サンフランシスコで庶民的な生活を送る妹ジンジャーのもとに身を寄せたものの、不慣れな仕事や生活に神経を擦り減らせ、次第に精神が不安定になっていく。それでも再び華やかな世界へと返り咲こうと躍起になるジャスミンだったが……(映画.comより引用)。2014年日本公開作品。監督はウディ・アレンで、出演はケイト・ブランシェット、サリー・ホーキンス、アレック・ボールドウィン、ピーター・サースガード。
 
ブランシェットが転落セレブにして、精神的に病んでいるジャスミン役を演じます。ブランシェットは、どこか陰のある雰囲気を持っているので、この役が怖いほどハマっています。日本の女優だったら、麻生久美子や木村多江あたりが適役でしょう。
 
ジャスミンの前夫である資産家ハルを演じるのは、ボールドウィンです。若い頃はスリムだったボールドウィンですが、最近では恰幅のいいオジサン役を演じることが多くなっています。梅宮辰夫に見える時があります。
 
本作のテーマは「嘘」であり、ジャスミンは嘘がバレるとともに、自身を守るプライドのようなものが剥がされ、精神的に壊れていきます。実は、このテーマはアレン監督による自己解体と再構築ではないでしょうか。
 
本作公開当時、前妻のミア・ファローとの間にもうけた、息子のローナンの父親が、実はファローの前夫フランク・シナトラではないかと、アレンが発言したのです。確かにローナンはアレンに全く似ておらず、シナトラにそっくりです。そうなると、アレンはファローとの親権争いの間、嘘をつかれ、ローナンの養育費を払ったということになります。
 
自分の監督作品に出演することの多いアレンが、本作には出演していません。しかし、所々に自己投影しています。①ジャスミンはニューヨークから西海岸のサンフランシスコに移住します。これは生粋のニューヨーク出身者であるアレンが、西海岸のハリウッドの映画人たちと仕事をすることを表しています。すると、ジャスミンがジンジャーたち西海岸の住民に抱く思いは、アレンが抱くハリウッド人種への本音と言えます。②ハルが年下のフランス人留学生と本気の恋に落ちたことが、ジャスミンとの結婚生活に破綻を来たします。アレンがファローと破局したのは、ファローの養子である韓国人女性スン・イーとの交際が発覚したからです。ハルが自分の恋を真剣だと力説するのは、アレンの言い訳を代弁しているかのようです。③ボロボロになったジャスミンは、再会した義理の息子ダニーに見捨てられます。これは、アレンが我が子だと信じていたローナンとの関係ですね。義理の息子=血の繋がっていない息子ですから。
 
ジャスミンに関するエピソードは、アレンが私生活のエピソードや「嘘をつく奴(ファロー?)なんて酷い目に遭ってしまえ!」という私情に基づいています。自分自身を客観的に分析して解体し、それを再構築することで一級品の物語に仕上げてしまう、アレンの実力を見せつけられるのが本作です。
 
★★★★☆(2015年9月22日(火)DVD鑑賞)
 
本作は『欲望という名の電車』に似ています。
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