【映画評】捜索者 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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南北戦争に従軍した主人公は終戦後、テキサスで牧場を営む弟の許に戻る。ある日、近所の牧場主の牛がインディアンに盗まれたので追跡する捜索隊に加わる。しかし、それは白人男子を家から誘い出すためのインディアンの罠でありと知り、引返したが時遅く、一家は皆殺し、女たちは誘拐されていた。復讐の念に燃える主人公たちは追跡を続けることになった(映画.comを参考)。1956年公開の西部劇。監督はジョン・フォードで、出演はジョン・ウェイン、ジェフリー・ハンター、ヴェラ・マイルズ、ウォード・ボンド、ナタリー・ウッド。
 
フォード監督でウェイン主演の西部劇と言えば、名作『駅馬車』です。それから20年近く経って作られた本作は、ハリウッド製西部劇の集大成的作品になっています。それにしても、西部劇はロケーションの広大さが羨ましいですね。日本版『許されざる者』は、北海道(蝦夷地)の大自然で近づこうとしましたが、本場のスケールの大きさには及びませんでした。
 
インディアンの追跡は、ウェインとハンターの「ベテランと若造のコンビ」で行います。これは擬似父子関係であり、一家総出で東から西へと旅をしたアメリカ白人の歴史的記憶を想起させるのでしょう。この「ベテランと若造のコンビ」という形式は、現代の刑事物におけるバディ・ムービーに継承されます。『ダーティハリー』から『セブン』、日本の『相棒』シリーズにまで継承されています。
 
「ベテランと若造のコンビ」と言えば、『ブラック・レイン』もマイケル・ダグラスとアンディ・ガルシアの刑事コンビなので、該当します。彼らの敵は、松田優作演じる日本人ヤクザです。何と西部劇におけるインディアンの役割が、理解不能なエイリアンとしての日本人に置き換わっているのです。そうなると、アメリカ人刑事の味方となる日本人刑事を演じる高倉健は、『ローン・レンジャー』におけるトントみたいなものでしょうか。両者とも嘘つかない人です。
 
インディアンがアメリカ白人の敵となったのは、白人に先祖伝来の土地を奪われ、同胞を大量虐殺されたからです。日本人がアメリカ白人を脅かす存在になったのは、原爆投下(黒い雨)などによる国家破壊から復興したからです。近年は中東のテロリストがアメリカの敵扱いされています。しかし、中東のテロリストを育てる礎を築いたのは、仮想敵国である旧ソ連と戦争していたアフガニスタンへの武装支援で暗躍したアメリカです(『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』をご覧ください。トム・ハンクス演じるウィルソン議員はテキサス出身です)。こうした事実を踏まえると、アメリカ映画における敵役は、政治的な意味があると分かるのです。
 
★★★☆☆(2015年1月14日(水)DVD鑑賞)
 
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