【映画評】善き人のためのソナタ | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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秘密警察による反体制派への監視が行われていた冷戦時代の旧・東ドイツ。秘密警察局員のビースラーは、ある日“反体制派”と目される劇作家ドライマンを監視するように命じられる。ドライマンの家に盗聴器を仕掛けたビースラーだったが、彼の部屋から聞こえてきたピアノ曲「善き人のためのソナタ」に心を奪われてしまう……(映画.comより引用)。2007年公開のドイツ映画。監督はフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルクで、出演はウルリッヒ・ミューエ、マルティナ・ゲデック、セバスチャン・コッホ。
 
主人公は盗聴と監視を行う秘密警察局員で、その地味でプロフェッショナルな仕事ぶりがリアリティを感じさせます。スパイ活動で言えば、『007』シリーズのジェームズ・ボンドより『ミュンヘン』の暗殺チームに近い仕事ぶりです。
 
その秘密警察職員を演じるミューエの外見が、これまた地味で役人らしいことも物語をドラマチックにします。事務的に任務を遂行し、私生活にも華がない(性欲処理も味気ないほどの)キャラクターだからこそ、彼の人間らしい行動に意外性があるのです。華のあるスター俳優が演じると、「あ、やっぱり」で終わってしまいます。
 
ドナースマルク監督は本作がデビュー作ですが、演出にわざとらしさがありません。娯楽性重視のハリウッド映画ならば、東西ドイツ統一後の劇作家に大臣を殴らせるカタルシスや、秘密警察職員と劇作家の感動の出会いを用意しそうなものです。それをしないことで、本作はより観客の心に響く効果を発揮するのです。
 
政治は自らの価値観の存立を脅かす、芸術という価値観を恐れ、何とか手の内で管理しようとします。そして、政治に阿った芸術の醜悪さは、北朝鮮の政治プロパガンダ映画で一目瞭然のはずです。政治による表現規制を良しとする方は、本作を観て何も思わなかったら、自身の想像力の貧困を恥じてください
 
★★★★☆(2014年12月19日(金)DVD鑑賞)
 
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