【映画評】浮草 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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ドサ廻り旅芸人一座の人間模様を描く、小津安二郎監督作品(1959年公開)。出演は中村鴈治郎、京マチ子、若尾文子、川口浩。
 
旅芸人の記録」というと、別の映画を思い出しますが、舞台はギリシャではなく、小津監督が少年時代を過ごした三重県です。小津監督作品と言えば、東京や鎌倉のイメージが強く、地方が舞台となるのは珍しい気がします。
 
確かに小津スタイルの映画です。ローアングルやカメラ目線のバストショットという技法、中年男三人の会話シーンという他の小津映画で見られる特徴はあります。それに斎藤高順の音楽が流れ、笠智衆や杉村春子が登場すれば、もう小津作品以外の何物でもありません
 
しかし、何かが違うのです。まず陰影の濃さが違います。ホームである松竹の小津作品は、薄墨で描かれた水墨画のような陰影が、独特の淡い雰囲気を出しています。それに対し、大映時代劇で活躍した宮川一夫撮影の本作は、しっかりと濃い黒の陰影で、画面に重さを与えています。
 
また小津作品らしからぬ激情シーンがあります。中村と京が雨降る中で道を挟んで口喧嘩するシーンや、若尾と川口のキスシーンは、他の小津作品に見られないものです。感情を抑制した台詞回しが特徴的で、生々しい剥き出しのエロスが封じられるのが、小津スタイルなのですから。
 
撮影当時は、映画会社間の監督、俳優の引き抜きを禁止する五社協定(当時は六社協定)があった時代で、それが各映画会社のカラーを形成した一因でした。松竹の小津監督が大映で撮った本作は、巨匠でも映画会社のカラーに染まることを証明した、異質の小津作品だと思います。
 
★★★★☆(2014年12月1日(月)テレビ鑑賞)
 
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