「ダメよ~ダメダメ」で2014年新語・流行語大賞を受賞した日本エレキテル連合ですが、案の定ネット上では「一発屋」とか「すぐ消える」とかいう罵詈雑言が飛び交っています。確かに過去の受賞者の多くは、翌年以降の活躍がパッとしない方が多いです。
しかし、それらの批判を浴びせる人のうち、彼女たちのネタをフルで見た人は、どれくらいいるのでしょうか? また橋本小雪演じるロボット「朱美ちゃん3号」の設定が、寂しい独身男性を癒すためのラブドール(ダッチワイフ)という、ゴールデンタイム向きではないことを承知の人は、どれくらいいるのでしょうか?
YouTubeで公開されている日本エレキテル連合のネタを見ると、設定や内容が老若男女が視聴するゴールデンタイム向きではないものが多数あります。そうした毒気込みで彼女たちのネタは面白く、見所があります。しかし、ネタ全体をゴールデンタイムで放送する訳にいかず、「ダメよ~ダメダメ」というワンフレーズだけ切り取り、それだけが一人歩きし、ラブドールという本当の設定を隠したままでブレイクしてしまったのです。
そもそも、この「ワンフレーズだけ切り取って売り出す」という手法は、日本テレビ系「エンタの神様」やフジテレビ系「爆笑!レッドカーペット」が用いたものです。これらの番組ではネタ時間が非常に短く、その時間でインパクトあるワンフレーズを持っている芸人が人気者になります。しかし、その人気は一時的なもので、次なる展開ができなかった芸人は、単なる使い捨て消耗品として消えていきます。NHK総合の「爆笑!オンエアバトル」が終了した現在、ネタをフルで見せるお笑い番組は壊滅状態です。じっくり腰を据えて物事を見ようとしない視聴者に迎合したのでしょうか。実力を持っていながら、フルでネタができない芸人は次々と消費されていきます。
ところで、先日、俳優の高倉健が亡くなった時、「昭和残侠伝」の映像の一部がニュースやワイドショーで放送されていました。大体殴り込みのシーンでした。あのシーンは作品全体を見れば、敵対する組の理不尽な仕打ちに耐えた侠客が、自分の属する組への忠義を尽くすために命懸けで立ち向かうという意味があり、それゆえにカタルシスが発生するのです。そのような文脈を無視して見れば、粗暴なヤクザの暴行傷害殺人現場という意味しかありません。高倉健や菅原文太のヤクザ映画のテレビ放映が自粛される風潮は、そのような表面的で視野狭窄な見解に基づいてはいませんか。全体の一部だけ切り取ることの愚かさや怖さの一例です。
マスコミが政治家や芸能人をバッシングする時も、発言の一部だけを切り取り、それを大々的に報じて一人歩きさせるという手法が用いられます。それがマスコミの人間の思想信条や個人的感情に基づいて行われていれば、最悪の結果を生み出しかねません。現在、衆院選の最中ですが、マスコミの選挙報道には注意を払いましょう。マスコミの思うがままに飼い慣らされて、物事を深く考えられない人間になりたいのなら、かまいませんけれどね。