
高倉健さんの死を惜しみ、各テレビ局で追悼番組を放送しています。健さんの出演作も放映されるのですが、地上波のゴールデンタイムでは『網走番外地』シリーズや『昭和残侠伝』シリーズを放映しません。テレビ東京が「午後のロードショー」で19日に『網走番外地 北海篇』を、20日に『網走番外地 南国の対決』を放映したくらいです(テレ東、えらい!)。コンプライアンスを気にしたテレビ局のヘタレぶりが発揮されています。
『幸福の黄色いハンカチ』や『鉄道員(ぽっぽや)』も良作です。しかし、それらの寡黙で不器用なキャラクターは、それまで出演していたヤクザ映画の前歴があってこそ、より一層の深みを増すのです。
東映東京時代のギャング物では軽快なアクションを見せ、東映京都時代の任侠物では諸肌脱いで殺陣を見せてきました。やがて、これらのスタイルを捨てることになったのは、避けられない自分の肉体の衰えを察し、不完全な物を見せて、お客さんからお金を取ってはいけないというプロフェッショナルな姿勢から来たものだと思います。
「不器用で寡黙な高倉健」というキャラクターを守るため、健さんは不断の努力をしてきました。プライベートでは雄弁なのに、衆人の視線があれば黙し、テレビ番組に滅多に出演することなく、私生活を秘密に包んできた健さん。全てはお客さんのためであり、そのプロフェッショナルとしての姿勢を、後輩の芸能人だけでなく、お客さんである私たち一般人も学ぶべきだと思います。
今のテレビ局の人間にプロフェッショナルは存在しますか?