
ふるさとを愛する気持ちとは裏腹に、離ればなれになって暮らすことを余儀なくされてしまう一家の様子をつづったドラマ(映画.comより引用)。1997年公開で、同年度のカンヌ国際映画祭カメラ・ドール(新人監督賞)受賞作品。監督は河瀬直美で、出演は國村隼、尾野真千子、柴田浩太郎。
尾野のデビュー作です。地元の中学生だった尾野が、河瀬監督の目に止まって起用されたそうです。この初々しい田舎娘が、後に大阪岸和田で活発な洋裁店を営むことになるとは思いもよりません(それは『カーネーション』!)。
台詞も音楽も最小限に抑えられた静かな映画です。河瀬監督のドキュメンタリー的手法が生かされています。実は私が鑑賞中、家族の者がテレビの音量を消したのに、それに気づかなかったほどです。サイレント映画としても通用します。そのような作品だから、国の壁を越えて伝わったのかもしれません。
オープニングとエンディングが、美しい奈良の山林の画です。これは、悠久の大自然にとっては、本作の家族の物語も小さな一部にしか過ぎないということだと解しました。しかし、その(自然が重ねてきた大きな物語に比べれば)小さな物語でも、そこで生きる人間にとっては、掛け替えのない輝きを残しているのです。
★★☆☆☆(2014年11月15日(土)DVD鑑賞)
奈良の山林に包まれたような気になる映画をお探しの方はこちらへ。