プラーナとクンダリーニはどちらも生命エネルギーであるが、それぞれの役割に違いがある。

プラーナは活動のエネルギーで、呼吸、循環、消化、排泄といった生理機能、交感神経と副交感神経、体温、分泌などの自律機能、さらに知覚、感情、意識、その他精神機能全般に至るまで、ほぼすべての生命活動に関与している。
人体だけではない。
あらゆる生物や植物、自然界にある光や熱、水、大気にもプラーナは存在している。
つまりプラーナは、万物の中にあり、万物に作用するエネルギーと言える。
中医学等で「気」と呼ばれるものに等しい。

対するクンダリーニは創造のエネルギーで、胎児のときに体内に宿り、肉体(粗雑体)、知性・エゴ(微細体)、至福(コーザル体)を形成した後、冬眠中の蛇のようにとぐろを巻いた姿で背骨の基底ムーラダーラに納まる。
創造を司るゆえに神聖なこのクンダリーニは、根源、宇宙意識、神なる自己そのものであり、新しい生命を創造し生み出す性のエネルギーでもある。

生命エネルギーの通り道をナーディという。
プラーナが「気」なら、ナーディは「経絡」にあたる。
ヒトの体内には一説に7万2千ものナーディがあると言われているが、その中で主要なナーディが背骨に沿って3つある。
それが、スシュムナー、イダー、ピンガラーである。

まず、脊髄の内部にあり、基底ムーラダーラから頭頂を貫いてサハスラーラまで続いているのが、中央のスシュムナー。
クンダリーニが目覚めると、ここを上昇していく。

そして、スシュムナーの左右にあるのがイダーとピンガラー。
この2つは陰と陽の関係にあり、スシュムナーに巻き付くようにそれぞれ螺旋を描きながら、陰のイダーは左の鼻孔、陽のピンガラーは右の鼻孔に繋がっている。
陰は女性エネルギーで、静の性質を持つ。
月のエネルギーに反応するため、イダーはチャンドラ(月)・ナーディとも表現される。
対照的に、陽は男性エネルギーで、動の性質を持つ。
陽は文字通り太陽を表し、ピンガラーはスーリヤ(太陽)・ナーディと表現される。

これら3つのナーディのうち、クンダリーニの通り道であるスシュムナーのみ、通常は閉じた状態にあるためプラーナは通れない。
スシュムナーを開くには、イダー、ピンガラーの両ナーディ内の詰まりや汚れを完全に浄化し、陰と陽のバランスがとれた状態に整える作業が必要になる。
さらに、そうしてスシュムナーが開いた後も、クンダリーニを目覚めさせ、昇華させなければプラーナは通せない。
霊的な覚醒までには大変な労力と相当の時間を要する。
覚醒者のほとんどは、ヨーガや瞑想、宗教的な祈りや業行、太極拳などで長年修行を積んできた信仰者たちである。

ただし、イダーおよびピンガラーが未浄化であっても事故的にクンダリーニが目覚める場合がある。
例えば以下のような出来事がきっかけとなり得る。

・身体的または精神的な外傷
・九死に一生を得る体験
・危険ドラッグの使用
・プロセスを無視した覚醒法の実行
・エネルギーレベルで深い繋がりのある存在との接触

事故的に目覚めた場合、クンダリーニ症候群発症の危険がより高くなる。
加えて、修行者たちがチャクラや結節をクリアしながらゆっくり着実にクンダリーニを上昇させるのに対し、事故的な目覚めは急激に荒々しく上昇する傾向があるように感じている。

とはいえ、クンダリーニ・プロセスの生理学的特質およびクンダリーニへの感情的、心理的反応は、ヨガ行者たちも体験していることであり、その内容はクンダリーニ症候群と重なる部分が多い。
両者がスペクトラムの線上にあるのは明らかであり、単に重篤さが違うだけの同じ症状か、あるいは医学的概念で捉えるかそうでないかの違いしかないのかもしれない。