「たくさん読まれるアメブロの書き方」 木村賢 | 映画物語(栄華物語のもじり)

映画物語(栄華物語のもじり)

「映画好き」ではない人間が綴る映画ブログ。
読書の方が好き。
満点は★5。
茶平工業製記念メダルの図鑑完成を目指す果てしなき旅路。

 

★★★☆☆

 グーグル様を騙すのはいかん、いかんで〜という話。

 

 ブログを書く人で、アクセス数を全く気にしないという人はいないはずである。「これは人に見せるためのものではなく、自分の備忘録として書いている」という人でも、その想いが全くの偽りだとは言わないが、ウェブに公開している以上、誰かに見て欲しいという想いが1ミリもないというのはあり得ない話である。近しい人だけに見て欲しいのか不特定多数に見て欲しいのかその比重は各々違うとしても、アクセス数はいわば「評価」であり、アクセス数が多ければ単純に嬉しいという思いは共通する感覚であるはずである。

 アクセス数に大きく関係するのが、検索エンジンの存在である。伊坂幸太郎の『モダン・タイムス』でも描かれたが、スマホの台頭も大きく影響し、現代では気になることがあれば「まず検索」の時代である。

 

↓特定の単語を組み合わせて検索すると死ぬという話。『魔王』を読んでから読むと吉。

 

 

 検索エンジンで検索したとき、検索結果上位に自分のページが表示されるように対策することを「SEO(検索エンジン最適化)」という。検索結果上位に表示されれば、当然アクセス数も伸びるという理屈である。

 タイトルに「たくさん読まれるアメブロ」と冠されているが、いわゆる一般的なSE0に関する本だと思ってもらえれば良い。つまり、何もアメブロに特化した話というわけではなく、どこのブログやwebページでも通用する話だと言えるし、他のSEO対策の教本と同じような内容だともいえる。ただ、本著の価値は、「アメブロ内部の人間が書いた」という点で非常に興味深いところである。著者の木村賢氏はサーバーエージェント(アメブロ運営会社)のSEO研究室の室長なのである。

 SEOは、現在では「グーグル先生に教えを請うたときに最初に示してもうらようにしてもらう方法」と言い換えることができる。「グーグル」と単独で言い切ることができる。

 なぜなら、例えばナイツでおなじみ「インターネットのヤホー」の検索も、現在ではグーグルと同じ検索技術が利用されているからである(グーグルが技術提供している)。

 

 

 

 つまり、グーグルで検索順位をあげれば、ヤフーでも(基本的には)同じ順位になるということである。

 インターネットの黎明期には、「グーグルはクローラー型、ヤフーは登録ディレクトリ型」みたいな違いがあったが、現在では2社に限らず一般生活で目にする検索エンジンはグーグルの検索技術が使われていることが大半である。

 つまり、グーグルの検索に対するSEOを実施すれば、それがすなわち「検索エンジンに対するSEO」だということになる。検索エンジンの世界はグーグルの天下なのである。

 ただ、一見しなくても独占支配している検索エンジンの世界ではあるが、黎明期のようにいろいろな検索エンジンの仕組みがあると、SEO対策も一体どの検索エンジンに合わせればよいのかという問題が生じていたので、インターネットの世界で生計を立てる人にとっては悪いことばかりではない面もある(一方で、グーグルが横暴なことをすればそれを止める術がないが)。

 で。

 内容としては、前半は「一般的なSEO対策の基礎」と言って差し支えない。それこそグーグルで「SEO」と検索して上位にヒットするページに書いてあることと同様か、それ以上に易しい内容である。一部を簡単にかいつまむと

 

・ブログは一つのテーマに特化した方がよい

・タイトルが大事

・旬な話題で  etc……

 

 といったこと等である。もちろんもっといろいろ書いてあるが、要するに「読む人にとってわかりやすく、かつ、読む人の多そうなことを書こう」という、「本田圭佑はサッカーがうまい」というくらい超当たり前のことが書いてある。しかし、これはその当たり前のことができていない人が多いということでもある。

 例えば、ブログを書いてみるとつい意味深なタイトルにしてみたくなることが多々ある。これはなまじ日頃から文学に触れている読書家(あるいは文学者気取り←私?)に多い傾向で、キャッチーなタイトルを狙った結果、タイトルだけではどのようなことが書かれているかわかりにくい(あるいは全くわからない)ものとなる現象である。内容に関わる単語が一つも含まれていないなんてこともザラであり、そんなもん検索のしようがないという話なのである。

 また、意外と難しいのが「一つのブログはテーマを一つに絞る」ということである。ブログを日々書いていると、ネタ切れになるということも含めて、色々なことを書いていきたくなるものである。しかし、いろいろな話題があるブログは、グーグル的にはランクが下がるのである。そのため、よく言われるのが「違う話題をブログにしたければ、もう一つ別のブログを立ち上げる」ということである。しかし、日々なんとなくブログを書いている人は実際にはSEO対策などあまり意識していない人が多いだろうし、たとえわかっていたとしても商業目的ではないかぎりそんなんめんどくさいという人が多いと思われるので、仮にメインテーマがあるとしても実際にはいろいろな話題が混在しているブログが大半である。私のブログもあくまで映画ブログであるが、映画は普通くらいにしか好きではないし(一般人レベル)、本当に好きなのは本(読書)だし、一番アクセスが多いのは記念メダルのページであるという混沌としたブログとなっているので、SEOとしては不適切であるといえる。しかしながら、一銭にもならないただの趣味にも関わらず「書きたいことを書くからブログが面白い」という一面を切り捨ててSEO対策を施したところで、恐らく長続きはしないだろう。ちなみにトップブロガーと呼ばれる人たちには日々様々なことを書いている人も多いが、あれは「その人自身が一つのコンテンツ」にまで昇華しているからこそなせる技であるといえる。つまり、検索するときはそのブロガー自身の名前であることが多かったり、多くの人がそのブロガーを自分のブログ等で紹介していたりするため、記事内容そのもので検索にヒットしなくてもアクセス数が伸びたり、今までの蓄積があるから検索上位に出やすくなっていたりと、正のスパイラルにあるからこそ得た自由であるといえる。

 後半になると、多少ではあるが、検索エンジンの仕組み(アルゴリズム的なという意味で)を踏まえた専門的な話になる。詳細はあえて言及しないが、それらも要はアメブロに特化した話ではなく、一般的なSEOに対するものと同じだと考えてほとんど差し支えがない。ただ、アメブロを例にしていろいろと解説してくれているという点で、アメブロでブログを書いている人が改めて自分のブログの書き方を再考察してみるのには非常によい教材であるといえる。この点から、アメブロで継続的にブログを書いている人は、SEO云々にそこまで興味がない人こそ、一度読んでみるとよいと素直に感じた。冒頭で述べたとおり、ウェブ上にブログを公開している以上、アクセス数を全く気にしていないということはないはずだからである。そして本著に書かれていることは、そのまま「読みやすいブログとはどういうブログか」ということに直結するものでもあるのである。私、実践できてないけど

 実は本著の内容そのものよりも、著者のブログの方が面白かった(kindle版を購入したので、末尾に記載されたアドレスからリンクでいけた)。そこには、SEOの研究室長としての見解が本著よりもだいぶ専門的に、かつわかりやすく、かつざっくばらんに書かれており、ああこの人プロなんだなぁというのが伝わってきた。講演などがあれば行ってみたいレベルで面白かった。

 そのブログで書かれていたことで超わかりやすくよくまとまっているなぁと感じたことに、「一昔前のSEOは検索エンジンのアルゴリズムを逆手に取ることだった」というのがある。恐らくネットワークの世界というものを中途半端にかじり、SEOというものの知識が生半可にある私のような人間がイメージするSEOとは、まさにこれだと思うのである。「グーグルはこういう仕組みで検索の評価をあげるから、それに沿ったにしよう」というのが、一昔前のSEOであった。それの最も顕著な例が「リンクの多さ」である。SEO対策で最も多くかつわかりやすく施されることの一つに「他からリンクしてもらう」という手法が存在した。他のWebページで自分のページがリンクされていると、検索エンジンからの評価が上がるのである。そのため、インターネット黎明期では「相互リンク」という手法が活発に行われており、Webページには「リンク集」というページが必ずと言って良いほど存在した。「相互リンク」とは「私のページにあなたのページのリンクを貼るから、あなたも私のページのリンクを貼ってね」と申し込むことである。単純に仲良くなりたいから、また、自分が好きなウェブサイトの読者が自分のサイトにもきて欲しいから、という理由で相互リンクをするのが根本的な目的であったのだが、「検索エンジンの評価が上がる」という側面から、それを逆手にとって自分のサイトとは内容的に全く関連のないサイトのリンクを貼ったり、評価をあげるためだけにわざわざリンクを貼るためだけのサイトを別に立ち上げて相互リンクを自作自演したりする人たちが現れたことによって、このことに対する検索エンジン側の評価の仕方が非常にシビアになったようである。現在でもリンク数の数は全く関係ないわけではなく、「人が訪れるリンク」であれば評価が上がるというアルゴリズムらしい(アクセス数が増えれば検索エンジンの評価は単純に上がるので当たり前といえば当たり前だが)。

 しかし、作者も述べているが、世界有数の叡智が世界中から集まり発展し続けるグーグルを相手にして、もはや出し抜くことは不可能なのではないかと思うわけである。そしてグーグルのアルゴリズムは利用者目線で発展し続けているので、利用者に優しく親切な作りのブログを書くことが、結局はグーグルでの検索の評価を高めることにも繋がるということである。それが一番難しいからこそ出し抜こうとする輩が出てくるわけだが、まあそういうことなのである。

 ちなみに、アメブロは検索には不利とよく言われている。そして、それは恐らく真実である。そりゃ特定のキーワードであれば検索上位にヒットするページもあるだろうが、だからそれをもってして全然そんなことはありませんというのはまた違った話である。そもそもアメブロは純粋にブログといえるのか? もはやSNSの一つなのではないか? という問題も昨今よく言及されることである。そんな中でアメブロ内部の人からこのような著作が発売されたこと自体に感銘を受けて、思わず購入した次第である。内容としては正直拍子抜けなところもあるにはあるが、「アメブロユーザーに対して『こんなところを意識して書いてみましょう!』と呼びかける入門的教科書」だと思えば、レベルも合わせて良書であるとも思うので、継続的にブログを書いているアメブロユーザーならば一度目を通しておいて損はない。すぐ読めるし。

 ただ、恐らくネットの専門家からしたら、「アメブロが検索には不利な点をどう克服するか?」という観点からは全く、全然、これっぽっちも書かれていないので、評価は低いと思われる。

 ちなみに、最もグーグルから評価されるページのあり方は「知りたい人がそのページを読んで他のページを読まずとも納得してくれるページ」だと言われている。利用者目線で開発を進めていくのなら、そういう検索結果を目指すというのも必然であるかなと思う。そしてそれは私のブログには全くない要素であるといえる。ちゃんちゃん。

 

 

 

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