ピーター・パン2 ネバーランドの秘密 | 映画物語(栄華物語のもじり)

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「映画好き」ではない人間が綴る映画ブログ。
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満点は★5。
茶平工業製記念メダルの図鑑完成を目指す果てしなき旅路。


 

★★☆☆☆

 ピーターパンが「少しは大人になりなさいよ!」と怒られる話。

 

 

 

 

 ディズニー名作続編シリーズである。レンタルビデオ屋のディズニーコーナーにひっそりと佇む例のアレである。が、私はそもそも『ピーターパン』を誰もが楽しめる「名作」とは思っていない。子供の残虐性を暗に訴えている社会派作品であると考えている。

 前作『1』のレビューでも書いたが、フック船長がワニを怖がるのは「ピーターパンに腕を切り落とされてワニに食べさせられたから」である。私だったらこの場合、真に怖くなるのはワニではなくピーターパンの方である。しかもピーターパンはそのフック船長に「今度は腕だけでは済まさないぞ」と半笑いしながら告げるのである。怖い。怖すぎる。重犯罪の低年齢化が叫ばれて久しい昨今であるが、その警鐘をディズニーは50年以上前から訴えていたのである。

 さて、そんな『ピーターパン』の純粋な続編である本作は、ディズニー続編シリーズの「『2』は前作主人公の子供が活躍する」というセオリー通り、前作の主人公ウェンディの娘がネバーランドへ行く。のだが――

 その前に非常に目を引くのが、ネバーランドに至るまでの経緯である。

 まず冒頭に、ウェンディの旦那が(主人公の父)が徴兵されるというところから物語は始まる。そう、時代は戦争(第2次世界大戦?)の真っ最中なのである。残されたウェンディと二人の子供は、ロンドンが空襲に遭い自宅近くの防空壕に避難する。防空壕の中で空襲に怯えるウェンディの息子(主人公の弟)に、ウェンディはそっと、自分がかつて体験したネバーランドの話、ピーターパンが大活躍する話(フック船長をいたぶる話)を元気いっぱい、勇気いっぱいに語って聞かせる。

 なにこの暗い話?

 そんな時代にたくましく生きる主人公なので、当然年齢よりも「大人」なのである。「ネバーランドなんてないわ。現実を見て。これは戦争なのよ」と言っちゃうのである。当然である結果的にネバーランドがあったから良いものの、空襲の恐怖を味わった日に母親がそんなのん気なことを言っていたら、「大人」は不安にもなろう。今の状況をもっとまじめに考えろ、と。

 ネバーランドがある派(母ウェンディと弟)とない派(主人公)での論争で――正しいことを言う者の運命なのだろうか――一人ぼっちになってしまった主人公は、崩れ落ちるように一人眠りに入る。そんな中、フック船長が大空襲をかける戦闘機の合間をかいくぐって主人公のことを誘拐しに来る。ワニが怖いフック船長は、後に実はタコが怖いことも発覚する。そんなことが霞んでしまうほどの勇気に私は拍手を送りたい。

 さて、なぜフック船長が主人公のことを誘拐したかというと、かつてネバーランドに行った母ウェンディと間違えたからである。ではなぜウェンディを誘拐しようとしたかというと、ピーター・パンに盗まれた自分の財宝を取り返すためにおびき寄せるエサとして利用しようとしたからである。どっちもどっちだが、先に手を出したのはピーター・パンであるという事実。

 「ピーター・パン症候群」という言葉がある。これは「ずっと子供でいたいと思う大人になりきれない人間」を指す言葉なのだが、それではいけないということをピーター・パン自身が反面教師として教えてくれるディズニー渾身の一本なのである。

 

 

 

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