ワイルド・スピードX2 | 映画物語(栄華物語のもじり)

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「映画好き」ではない人間が綴る映画ブログ。
読書の方が好き。
満点は★5。
茶平工業製記念メダルの図鑑完成を目指す果てしなき旅路。




★★★★☆

 今思えばこの頃は愉快で平和だったなー、という話。


 『ワイルド・スピード sky mission』を鑑賞して、ポール・ウォーカー追悼への想いも強くなり、彼が唯一主役を張った本作(『1』もポール・ウォーカーが一応主役だけど、事実上は違う。いや、まじで)を思わず鑑賞した。いやぁ良い作品だなぁとしみじみと素直に感じ入った次第である。

 本シリーズにおいて本作『X2』は実は一番評価が低い。理由としては「内容がないよう」とよく親父ギャグも真っ青なことを言われる。が、私は別にそれほど内容がないとも思わないし、「『ワイルド・スピード』は車が主役だよ? なにか他に必要?」ということを一番全面に出している作品だと思う。とにかく出てくる車全てがかっこいい。今でこそメジャーなスタイルになったが、アンダーネオンを青く光らせ、車体にはオシャレ(を意識した)ステッカーを施し、いろいろなメーターやらモニターやらをつけまくって車内を光らせる「スポーツコンパクト(通称スポコン。スポーツ魂じゃない方の)」という車に興味のない女子がドン引きするスタイルを世に流行らせたのは、まぎれもなく本作『X2』の功績である。中でも、主人公ブライアンことポール・ウォーカーが最初に乗っていたGTRは本当にかっこいい。これ↓



←女子がドン引きするスタイル

 この車が、一時代を築いたのだ! 物語早々にフロント大破するけどね!

 他にも私好みの超カッコイイ車が多数登場して、もうそれを見るだけで満足値はMAXに近い。特に、異様なほど日本車が多いのが特徴で、それが日本で本シリーズがここまでのものとなった理由の大きなところだろう。車のSNS等を利用していても思うところだが、日本の「車好き」と、いわゆる「スーパーカー好き」とは、似て非なるもので明確な一線が存在している。本シリーズがフェラーリとかランボルギーニとかを駆使して走り回る作品であったなら、ここまでヒットさせることはできなかっただろう。一般人でも手が届く車を、手が届かないほどカスタムして乗り回すカーアクションにみんなが憧れたのである。今の『ワイルド・スピード』となっては失われてしまったカー・アクションというものが大いに盛り込まれ、ああ私達は本来はこれが好きだったんだなぁという感傷にも似た気持ちに浸るに至った。今の『ワイルド・スピード』はカー・アクションではなく、車を使ったアクション映画だからね~

 さて、肝心の内容であるが、本記事は最新作『ワイルド・スピード sky mission』までを全て鑑賞した上で書いているので思うことだが、今思うとこじんまりした話だなーと感じた。この頃は平和であった。街中を超巨大な金庫を引っ張り回して建物を破壊しながら走り回ったり、戦車や飛行機を爆破したり、車にパラシュートをつけて飛び降りたり、4億円の車でビルからビルへ飛び移ったり(しかも2連続で)しているのを観た後では、本作クライマックスで一番の目玉シーンであろう「車で坂からジャンプしてクルーザーに着地する」という行為が平凡に見えてしまった。まあそれくらいやるよねあなたなら、と。

 また、序盤でポール・ウォーカーが幼馴染と再会して殴りあうシーンがあるのだが、本シリーズ名物の「ハゲVSハゲ」の熱き戦いを知ってしまった後だと、非常にぬるい取っ組み合いに見える。なにじゃれてんの? というレベルである。というか、全てが平和に見えた。ドバイで殺し屋に銃乱射される前には、まだ平和だった時代があったのである。

 また、ああこの人ここに出てたのね~と思ったのが、シリーズを彩るハゲ達の一人「テズ」である。我々が気づかなかったのも無理はなく、なんと本作ではまだ毛があって、しかもアフロなのである。



←使用前


←使用後

 すっかり忘れていたが、彼は「マイアミの顔」として、自分のガレージ裏で競艇を開催したり公道レースを仕切ったりしていた人なのである。『sky mission』でチームの頭脳ともいえる立場で、いろいろあって今の方が断トツに金もあるはずなのだが、立場的にはなんかショボくなってしまった人である。「マイアミでは彼を知らない車乗りはいない」とまで言わしめた彼が、アフロを切ってボーズにしたら、ただのサポート役みたいな立場になってしまった。

 そんなこんなで、本シリーズの原点回帰作として非常に楽しい作品となっているので、ワイルド・スピードシリーズを愛している人にこそ、ぜひもう一度見直してみて欲しい一本である。


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