医師国家試験から学ぶこと 5(医師国家試験 第115回 精神科) | 天上界 Great Materia University 総合医学部 総合医学科学科 医師養成コース(※歯科医師も併合)

でも、頑張って、
精神科の問題も解いていきます。
口腔外科を中心にしていくと
目と精神が弱くなるから、
過去問題を足しておきます。

115回の過去問をみると
精神の問題は
Aブロック(各論)
115A15
115A23
115A24
115A54
Bブロック(必修)
115B18 
Cブロック(総論)
115C23
115C33
115C55
Dブロック(各論)
115D15
115D28
115D31
115D57
Eブロック(必修)
115E18
115E31
Fブロック(総論)
115F4
115F6
115F55
となっています。

115A15
身体依存が形成される薬物はどれか。2つ選べ。
a 大麻
b コカイン
c モルヒネ
d メタンフェタミン
e フェノバルビタール

全部精神依存がある薬物に見えますが、
問題文をよく見て下さいね。
「身体依存」と書かれています。

医師国家試験では、
このパターンの問題は
①身体依存・精神依存・耐性のすべてをみるもの
②精神依存と耐性をみるもの
③精神依存のみみるもの
の3つに分けて整理して解いています。

耐性というのは、効かなくなってくることです。
身体依存というのは、身体が依存しているということですが、
耐性によって薬が効かなくなってくるので、
離脱によって否定的な身体症状を生じることです。生理的依存ともいわれます。

離脱の症状は、
減量の間に経験する
心拍
血圧の増加、
発汗、
振戦。
より重篤な離脱症状では、
混乱、
発作、
視覚的な幻覚
のような重篤な緊急事態。
緊急に医療を必要とします。

離脱けいれんを誘発する
ので問題視されている薬物には
GABAA(ギャバA)受容体に作用する
アルコール、
ベンゾジアゼピン系、
バルツビール酸系
のような鎮静催眠剤があり、
オピオイド受容体に作用する
オピオイド系の薬物である
モルヒネがあります。
これらは能力水準を下げるために
雇用を難しくするため
規制するかしないかの話がよく出る薬物です。

ここまで基礎知識を確認したうえで
問題文を読んで検討を行っていくのですが、
a ③に分類されます。
b ③に分類されます。
c 正しい。①に分類されます。オピオイド系です。
d ②に分類されます。
e 正しい。①に分類されます。今書いたバルビツール酸系の抗てんかん薬です。

よって、
c. モルヒネ
e. フェノバルビタール
が正解になります。

115A23
35歳の男性。テレビを見ている時に口をもぐもぐと動かす、
舌を突き出すなどの動きがみられることを、
家族に指摘されたと訴えて来院した。約6か月前からその動きがみられるという。
30歳ころ、幻覚妄想状態を呈して抗精神病薬を投与され、
以後、服薬を継続中である。
この動きについて正しいのはどれか。
a 睡眠中は消失する。
b 抗Parkinson病薬が著効する。
c 抗精神病薬に特異的な副作用である。
d 口の動きに注意を向けさせると増悪する。
e 片側上下肢を投げ出すような不随意運動を伴う。

解き方としては、
キーワードを問題文から見つけ出して
法学で教えたように「要件」ー「効果」のセットでのインプットのように
「原因」→「症状」→「病名」→「治療法」の論理の流れを
セットでインプットしていくことになるので、
単に「趣旨・目的」→「要件」→「効果」を定めた法学よりも
自然科学の方が、自然の法則をふまえた医学のほうが
覚えることが多くなります。
単に人間が定めたものであれば、宇宙の法則なんて考えなくていいので
単に社会で利益の衝突があって、これがいいと思ったから、こういう考えで
この解決法をとったという理解よりも
プロセスとしては長くなってきます。
白血球の動きとかインターロイキンとか全部の動きを精密に考えないと人体は
死んでしまいます。

そこで、問題文から
キーワードを探すと
①テレビを見ている時に口をもぐもぐ動かす・舌を突き出す
②5年前ころ幻覚妄想状態を呈して抗精神病薬を投与され現在も服用継続中
とあります。

①は不随意運動と考えられます。
②から抗精神病薬の副作用の可能性が高く、
診断としては遅発性ジスキネジアが合致しやすいです。

ここまでを問題文を読んで
思ってから
選択肢を読んでいくと
a 正しい。睡眠中には消失します。
b 抗Parkinson病薬は一般に治療に用いられていません。
c 抗精神病薬のほか、制吐薬や抗てんかん薬、抗うつ薬でも惹起されます。
d 意識した際に不随意運動は減弱〜消失します。
e これはバリズムという不随意運動についての記載です。

よって、a. 睡眠中は消失する。
が答えになりますが、
これは簡単な問題ですよ。

できないと精神科医にはなれません。

普通の精神科医がどれだけ分かっているかというと
医師国家試験の合格水準の1/3の点数が
町の医師ですが、
合格のときには、これくらいはできないといけません。

本当に覚えることが多いので、
まず、歯科口腔外科を皮切りにして
考え方でわかるように教えたいです。

別にこの医師国家試験に受かる講義をしているのではなく、
皆さんが生きていくための問題解決に必要なことを教えたいのです。
解き方としては「論理プロセス」です。
あとは、必要な「知識」というものを授けていきたいのです。
割と最小限に近い程度で。

115A24
55歳の男性。
夜中の記憶がないことを主訴に妻とともに来院した。
数年前に不眠に対して睡眠薬を処方されて以来、
継続して服用し、
仕事を続けていた。
経営していたレストランに2週前に泥棒が入り、
ひどく落ち込んでいる様子であった。
昨日、
午後7時に帰宅して夕食を済ませ、
午後11時に就床した。
翌日の
午前1時頃、
少しでも本人を励まそうとする友人から、
カラオケに誘う電話があり、
カラオケ店にタクシーで行き宴会に参加し、
午前4時頃帰宅した。
帰宅後約8時間睡眠をとって午後勤務についたが、
夜中のことを全く覚えていない。
友人によると普通に歌い飲食したとのことであった。
アルコールは全く飲めず、
当日も飲酒していない。
妻の話によると2か月前くらいから
夜中に食事をしたり、
コンビニエンスストアに行ったりしていることを、
翌朝全く覚えてないことが3回あったという。
この患者で考えられる疾患はどれか。
a 夜間せん妄
b 一過性全健忘
c 全生活史健忘
d 睡眠薬による前向健忘
e レム〈REM〉睡眠行動障害

問題文を読んで
「数年前に不眠に対して睡眠薬を処方されて以来、継続して服用し」、仕事を続けていた
とあるので、
d 睡眠薬による前向健忘かなと思ったら
答えになります。

「昨夜は午後11時に就寝した」と問題文にあるので、
このタイミングで服薬したのかなという
推測をさせる問題ですが、
「ベンゾジアゼピン系の睡眠薬」には
「前向健忘」の副作用があります。
そのため、
「カラオケ店での記憶がなくなってしまった」と考える問題です。

センター試験の評論の文章読解問題と同じなのですよ。
読んで論理的に解くのです。
矛盾があるものは、答えにできません。
これは、法学問題でも一緒です。
司法試験でも法学検定上級問題でも
こういう解き方をするのは、
大学教授が作る問題というのは
理性によって解かせる問題だからです。

阿呆を受からせる試験ではないので
暗記をさせて答えさせて受からせるのではなくて
「暗記」「+論理的思考」によって解答を導かないといけないのですが
それ以前に
問題文で「文章読解」をしないといけない長文にしてきます。
これは大学教授が難しい試験を作るときの特徴です。
私も医学部や法学部や大学院で教授をしていたので、
こう書きますが、これが大学教授の問題の作り方です。

だから、一本釣りで答えてもいいですが、
阿呆ではないので、おっちょこちょいだと間違えますから、
慎重に全選択肢を確認していくと
a 友人によれば普通に歌い飲食をしており、夜間せん妄は否定的です。
bは、一過性の強い前向健忘がみられる状態であり、新たな記憶もできなくなります。
一般に反復はしないため、「同様の症状が2か月前くらいから3回あった」という
記述と矛盾します。よって、間違いになります。
cは、主に自分に関する事項の逆行性かつ全健忘です。
本症例では前向健忘がみられているので、否定的です。
d 正しい。上記の通り。
eは、夜間の異常行動がみられます。
友人によれば普通に歌い飲食をしており、否定的です。

よって、
d. 睡眠薬による前向健忘
が正解になります。

これは、正答率81%の問題でしたが、
これで間違っている人でも
医師になっている人はいますが、大体60%を切ると
不正解になってはいけない問題です。

なぜ間違うかというと
阿呆だから間違うのですよ。
この問題には
何も難しいことは書いてありません。

間違える阿呆なポイントしては、
どういうものがあるかを説明します。

よく予備校の講師で
一本釣りの答え方を教える人がいますが
予備校の講師は、
ただ、予備校の講師の仕事に就職しただけであって
ちょっと点数が高かったのかもしれませんが、
その年度のテストのあたり外れがあるだけで
誰からも解き方を習っていない人達が、
自己流の解き方を教えているだけです。
失敗を防ぐために、
必ず全選択肢の検討が必要です。
インプットしている正しい医学と
問題文が
論理的に合致しているかを
選んで下さい。

「こういう気がするから、これが答えだ」という
答え方は絶対にしないで下さい。
難しい試験なので、ひっかけが満載です。
そう思わせてひっかけるというセオリーが確立されつつある
試験です。

115A54
6歳の男児。
首を左右に振る動作を主訴に、
母親に連れられて来院した。
昼食後テレビをみているときに
首を左右に振る動作が5分程度続いたため受診した。
7か月前から素早い瞬目を繰り返すことに気付かれ、
2か月程度で一旦治まった。
4か月前から瞬目が再びみられるようになり、
突発的、
非律動的に
顔をしかめたり、
首を左右に振ったりするようになった。
いずれの症状も
睡眠中にはみられず、
リラックスしている時に多く出現する。
短時間であれば自分で抑制することができる。
神経診察で異常を認めない。
最も考えられるのはどれか。
a 振戦
b チック
c バリズム
d 舞踊運動
e アテトーゼ

この問題文のキーワードは
①6歳の男児
②首を左右に振る
③素早い瞬目を繰り返す
④突発的・非律動的に顔をしかめる
⑤睡眠中にはみられずリラックス時に多く出現
⑥短時間であれば自分で抑制可
という明快なキーワードが羅列されていて、
チックの診断になりました。
正答率は、ほぼ100%でした。

チックとは、
意図しない体の動きや発声を繰り返す病気です。
脳から出る司令を伝える物質に異常が起こることが原因
だと考えられています。
4歳から11歳ごろに発症することが知られており、
男児に多い傾向にあります。
症状が軽い場合は心理療法や行動療法を行うことで改善します。
症状が重い場合には、抗精神病薬が用いられることもあります。

以下のような動きが症状として出ることが多いので
キーワードとしてインプットするものです。

・動作性の症状
まばたき
顔をしかめる
口をゆがめる
口を尖らせる
舌を突き出す
首を左右に振る
肩をびくっとさせる、すくめる
腕を振る、まわす
地団駄する
跳び上がる

・音声性の主な症状
咳払い
鼻を鳴らす
舌を鳴らす
突発的で反復的な発声(「あっ」「うっ」などといった声が出る)

・トゥレット障害の場合は、
汚言(人を罵るような言葉や卑猥な言葉を発してしまう)
が見られることもあります。

突然、速く、反復的に繰り返される運動や発声のことです。
まばたきや鼻すすりをイメージするといいです。

多彩な運動チック、音声チックが1年以上にわたり強く持続し、
日常生活に支障を来すほどになることもあります。
その場合をトゥレット症とよんでいます。

では、ここまで基礎知識を確認したうえで、
各選択肢を検討していきます。

aは、拮抗筋同士の律動的な不随意運動です。
一般に振戦は自分で抑制することができません。ずっと震えています。
bは、正しいです。上記の通りです。
cは、上下肢を投げ出すような不随意運動です。
dは、四肢遠位部や顔面に好発する
不規則に繰り返される短くやや速い不随意運動です。
eは、ゆっくり流れるような、うねる不随意運動です。

今回は115回の医師国家試験の
Aブロック(各論)を解いていきましたが
時間がないので、ここできります。

たいした問題数ではないですが
AMIを作っているので、
こちらの作業は、切らせて下さい。

上記の理由から
医師国家試験に
あまり王道はありません。
暗記することが中心的な学習になりますが、
日本ではCBTで4年生までは看護学科+αくらいの知識を学習し、
5・6年生で臨床問題を解いていく訓練をしていきます。
頭の良い医学生でも、暗記+2年くらいは実戦練習をしていくので、
それでも正答率100%は、あまりみないので、
皆さんにとっては、びっくりした問題かもしれませんが、
簡単な問題ばかりでした(笑)

これは、皆さんにとっては
ドッキリする問題ばかりだったかもしれませんが、
こちらにとっては超平易問題なのですよ。本当にびっくりするほど
幼稚なパズルばかりなのですよ。

ただ、医師国家試験の場合は、
司法試験も法学検定もそうですが、
覚えないといけないことがたくさんあって、
その「暗記」プラス
「読解」プラス
「論理思考」という3段階が、必ずあります。
そうでないと誰でも受かってしまうのですよ。

暗記だけだと中堅以下の私立大学の試験です。

文系最強は司法試験。
理系最強は医師国家試験。
このように昔からいわれてきた通り
文系と理系の各分野で
最強を試す試験ですから、人間の限界に挑戦しています。

この限界の問題を解いていく訓練は、
実は、多くを得られる学びになっています。
それは、人間の「限界」の問題を「解決」する
「最高」の「技術」がここにあるという示しになっているのです。
もう一度書きますが、人類の至高の技術が示されているので、
もし、あなたが最高の人になりたければ、
これらの問題演習によって、
「最高の理性」を手に入れることです。

それはオセロや将棋でも学べることですが、
こちらは実戦になっています。
現実問題に向き合う実践問題です。
オセロだけできても、現実社会の問題について
まるで情報がインプットできていないのであれば、
それは使えない先読みになります。

現実問題については、
理論的なステップがあります。
間違いのない情報を土台にして
次の結論を生んでいくのです。
この産出の技術に間違いがないかどうかの研鑽は、
医学や法学の試験問題でトレーニングしていくことが
現実社会にとって有用なので、
今回、この講座を開講して教えています。

これらを学んで
皆さんは、より精密な回答をしていくよう
心がけていって下さい。