2014年8月27日
中日春秋
 「ばか歩き(シリー・ウオーク)省」。ここの仕事は「ばか歩き方」を発見し、国中に広めることである。足を高く上げ、のしのしと歩く。役人は出勤、会議でもばかな歩き方をしている
▼七月に再結成した、英国のコメディー集団「モンティ・パイソン」。公演チケットは、あっという間に売り切れたそうで「コメディー界のビートルズ」の人気は相変わらず。日本でも一時期、テレビシリーズを放映していたのでファンがいる
▼「ばか歩き省」はパイソンの中でも有名なスケッチ(コント)で本国では歴史上、最も偉大なスケッチの一つに数えられているという。ひねった笑いの裏には、国の無意味な政策とそれに投じられる予算への痛烈な批判がある
▼安倍政権にもファンがいるのか。九月の内閣改造で安全保障担当相を新設するという。集団的自衛権の行使容認を踏まえた法整備を担当するポストというが、安保担当ならば、防衛相がいる。不可解である
▼裏にあるのは、権力闘争。首相は来年の自民党総裁選で敵になるかもしれない石破幹事長を交代させて、このポストに就任させたい。幹事長を続投させれば、石破さんが力をつけると警戒しているのだが、「ボス争い」で、必要とも思えぬ担当相を新設するのなら、嘆かわしい
▼この笑えぬコントの題名は「シリー・ウオーク」ではなく、「シリ・シヨーク」という。
2014年8月26日
中日春秋
 夏の暑さも一段落で、ずいぶん過ごしやすくなってきた。蝉(せみ)の声は「ジージー」や「ミンミン」から「カナカナ」に変わった。高校野球は大阪桐蔭の優勝で閉幕した。三重の選手の涙に夏の終わりを感じた人もいたか
▼作家太宰治の感覚では、秋は「夏ト同時ニヤッテ来ル」のだそうだ(『ア、秋』)。夏の中に、「秋がこっそり隠れて、もはや来ているのであるが、人は、炎熱にだまされて、それを見破ることが出来(でき)ぬ」
▼子どもの夏休みも似ていて、実は新学期と「同時ニヤッテ来ル」のかもしれない。夏休みの初めには、ずっと遠い未来のことのように思えた夏休み「最後の日」がいつの間にか目の前に迫る。いつの時代も子どもは二学期が隠れていたことにあわてふためくものだ
▼変な事実もある。二学期はいつから始まるか。夏休みの終了の翌日という答えは不正解のようで、実は夏休み中の八月一日なのだという。やはり隠れていた
▼「どうでもいいよ」と宿題を前にオロオロしている子には叱られるか。ならば、嫌な仕事を片付ける「魔法」を一つ教えてあげよう
▼やりたくなくても、とにかく四十秒間、机に向かって宿題に手を付けてみる。不思議だが、四十秒がまんすれば、その後も続けられる。疲れたら、休んで、また四十秒。始めさえすれば、ゴールは「こっそり隠れてもはや来ている」ものかもしれない。
2014年8月25日
中日春秋
 寸法詐欺という詐欺がかつてあったそうだ。終戦直後を描いた井上ひさしさんの『花よりタンゴ-銀座ラッキーダンスホール物語』の中に出てくる。狙われたのは子ども。昔の話とはいえ、手口を聞くと無性に腹が立つ
▼子どもが洋服を着て遊んでいると上品そうな女性が近づいてくる。「うちの子にも着せたいから、洋服の寸法採らせてくれない」。子どもなので脱いで貸す。女はそのままどこかへ消える
▼服など現在ではいくらにもならないが、物のない当時のことでこんな詐欺も横行したのか。親がやっとの思いで買い与えた服を、子どもの「優しさ」に付け込んで奪うやり方が嘆かわしい
▼気の毒な方のお宅を狙って金品を盗む。終戦直後ではなく現在の話である。土砂災害の広島市安佐北区で空き巣被害が発生しているという。ある民家には警察官を名乗る人物が避難を促してきたが、偽者。避難させてその間に盗みを働こうとした可能性もあるそうだ
▼被災地泥棒に嫌な気分になるのは、困っていることを知りながら、それを狙った情け容赦のなさ。被災地泥棒は既に苦しむ現地の人の心に追い打ちをかけ、二重三重の傷を負わせる
▼現地に捜索支援ボランティアがたくさん来ている。「善」が目方で量れるのならば、現地では「善」が「悪」を大幅に上回っているだろう。それだけにその「悪」が悲しく残念でならぬ。