2014年8月24日
中日春秋
 <広い 広い 空の なか/一ばん星は どこかしら/一ばん星は もう とうに/あたしを 見つけて まってるのに/一ばん星の まつげは もう/あたしの ほほに さわるのに/広い 広い 空の なか/一ばん星は どこかしら>。詩人まど・みちおさんの「一ばん星」だ
▼この宇宙の本当の一番星は、どこだろう。世界中の天文学者が懸命に探している。宇宙が生まれたのは、百三十八億年ほど前。しばらくして水素とヘリウムの原子ができたが、それが集まり核融合を起こし輝き出すまでにおよそ三億年かかった
▼そうして生まれた最初の星々は少なくとも太陽の四十倍、大きいものは百倍以上といわれる。そんな巨大な一番星の痕跡を国立天文台の研究者らが見つけたそうだ
▼太陽の寿命は百億年あるのに、最初の星の寿命は数百万年。儚(はかな)い一生の中で炭素や鉄など新たな元素を生み出し、最後は大爆発を起こした。そしてまた次の世代の星が生まれ…そういう宇宙のめぐりで、地球や生命の素(もと)となる物質もつくられた。一番星の小さな小さなかけらが、それこそ私たちのほほやまつげにも含まれているのかもしれない
▼一番星は、太陽の百万倍もの明るさで独特の青い光を放っていたとされる。その光を科学者がとらえ、私たちが目にすることができる日も近いのか
▼「一番星見いつけた」という声が待ち遠しい。
2014年8月23日
中日春秋
 最大で高さ十五キロ。それほど巨大な入道雲が続々と生まれ、一列に行進しながら、ひとところを襲い続ける。あまりに多くの犠牲者を出した広島の豪雨・土砂災害は、そんな積乱雲の波状攻撃でもたらされたという
▼一つの積乱雲の後方(バック)に積乱雲が次々形づくられるので、「バックビルディング現象」と呼ぶ。三年前の新潟・福島豪雨やおととしの九州北部豪雨など、この現象は大災害をもたらしてきた
▼それほど危険な「怪物」であれば、その名を覚えておいた方がよさそうだが、長たらしい英語を聞いてどれほどの人が漠然とでも理解し、覚えられるか。何か適切な訳語はないのかと思う
▼この言葉に限らず、理解を拒むようなカタカナ語が公文書や報道で使われすぎる。このままでは大切な情報を受け取っても理解できない人を増やしかねない。そういう危機感から数年前に国立国語研究所が外来語の言い換えを提案していた
▼イノベーションに応じ、ハザードマップのアクセシビリティーを高めていかないと、デジタルディバイドが拡大しかねない…ではちんぷんかんぷんだ。「技術革新」に応じ、「災害予測地図・防災地図」の「利用しやすさ」も高めないと、「情報格差」が拡大しかねない…でいいではないかという提言だった
▼行政や報道の現場などであらためて考えたい、カタカナ語の氾濫対策である。
2014年8月22日
中日春秋
 『イルカの日』は一九七三年に米国で製作されたサスペンス映画だ。海洋動物学者がイルカに人間の言葉を覚えさせる。研究は秘密裏に進められるが、ある集団に嗅ぎつけられ、要人暗殺計画に巻き込まれる
▼人間に欺かれたことに気付いたイルカは言う。「人間、ない事言う」。動物たちに人類の営みはどう映っているのか。彼らが私たちに分かる言葉で話せたら何と言うか。スリルの中に、そんなことを問い掛ける映画だった
▼『海に還った哺乳類 イルカのふしぎ』(講談社)などの著書がある東海大学の村山司教授(54)は高校時代にこの映画を見て、イルカの研究を一生の仕事に選んだという。「やり続ければ、いつかはイルカと話せるようになるはずだ」と信じて
▼夢のような話だが、ついにイルカが人の言葉をまねられることを世界で初めて証明した。千葉県の水族館で飼われているシロイルカが長年の訓練の末、「オハヨウ」「ホーホケキョ」など八つの言葉を「話した」のだ
▼今のところ、言葉の意味を分かって発音しているわけではないが、このイルカは物と記号や音を関連付ける力もあるそうなので、本当に「話す」日も近いのかもしれない
▼イルカと話せるようになったら、何を聞くのか。村山さんに尋ねたら、「今何をしたい?と聞きたいですね。『放っておいて』と言われるかもしれませんが」と笑った。