『Melodies』から40年+ | 愛は限りなく ~DIO, COME TI AMO~

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一粒の雨にさえ心揺れることもある。いつもどんな時も心閉ざさずに…。

私:早いもので山下達郎さんの「メロディーズ」が発表され、今年で40年以上が経ちました。
過去に初めて買ったCDだとも聞きました。
本作に対しどんな思い入れがありますか?
 
N氏:達郎さんの音楽としては「RIDE ON TIME」でほぼ完成形に到達したと思います。
シンプルに過剰な装飾をせずに、ありがちな表現を使うとすればソフィスケートかな。

私:前作「FOR YOU」との比較は避けられないと思いますが、そこはどうですか?
 
N氏:「FOR YOU」は巷で人気のCITY POPとして、弾けた感じのいわゆるタツロー・サウンドの始まりでしょう。
AB面1曲目の“SPARKLE”と“LOVELAND、ISLAND”が好きです。
他の曲もいいですが、アルバムを通して聴くと良さが分かる曲順に配置されているので、単独では印象が薄いです。
“YOUR EYES”も最後の曲だからいいですけど、こういう正統派のバラードだけを聴くのは、実は苦手なんです。

私:それは考えたことなかった!
確かに“SPARKLE”や“LOVELAND…”そして“MUSIC BOOK”以外は単独で聴く機会はあまりないですね。
コンサートを除けば。

 N氏:本題の「メロディーズ」ですが、達郎さんが影響を受けた音楽が反映されてます。
前作はアルバム・ジャケット同様、澄んだ青色の印象ですが、このアルバムはバラエティーに富んでいて全曲好きですよ。
有名になる前から“クリスマス・イブ”も。
一番好きなのは“悲しみのJODY”です。
LPでもよく聴きました。
ベタですが“高気圧ガール”、そして“メリー・ゴー・ラウンド”をライヴで聴きたいです。
収録されているバラード曲もいいのですが、達郎さんには他にもバラードの名曲があるので。
間違いなく「FOR YOU」より好きなアルバムです。
 
私:話は前後しますが、本作と同時購入された「寒水魚」はいかがでしたか?
CDの音質も含めて。

 N氏:85年だったか、初めてのCDプレイヤーを買うと同時に、当時発売されていた中島みゆきさんの「寒水魚」のCDも買いました。
音が締まったスリムな印象でしたが、アナログ盤との違和感をあまり感じず、CDはこういう音なんだと納得しました。

私:なるほど、CDとしては「寒水魚」の方が当時としては良く出来ていた、と。

 N氏:同時に手に入れた「メロディーズ」はね…聴き込んだ“悲しみのJODY”がちょっと違うんです。
出だしのファルセットが上ずってるというか、要するにカセットでドルビーを外したような。
この曲の出だしで特に顕著でした。
他の収録曲はそこまでの違いはなかったです。

私:現行のディスクではあまり気が付かないかもしれませんね。
とりわけ、今出ている本作のリマスター盤や「OPUS」しか聴いていないファンには。

 N氏:今回“悲しみのJODY”を旧ヴァージョンとリマスターされた「OPUS」で聴き較べました。
旧の方でファルセットがやや浮いているのに対し、「OPUS」の方は普通にファルセットのパートがバックの演奏に溶け込んでいるように聴こえます。
ただ、そのCD2枚の差は僅かです。
考えると当時、何故そこまで上ずって聴こえたのか不思議です。
今だと高音の出にくいアナログ盤の方に違和感を持つかもしれません。
でも、手元にアナログ盤がないので確かめようがないのです。
 
私:えっ、LPはもうお持ちでないんですか?

 N氏:引っ越しで大量のLPを処分した時、『メロディーズ』を間違って捨てたかもしれません。
さらに「メロディーズ」のリマスター盤も持ってませんが、旧盤で聴いた“夜翔”、“ひととき”等のバラード、実にいいんですよ。
初期のCD特有の高音の尖った、低音のクールで乾いた再生が良い方向へ作用してます。
私は硬めの音の方が好きなのか?…新しい発見でした。

私:「FOR YOU」収録の“MUSIC BOOK”とは似ているが、どこか異なる高音の魅力ですね(笑)

 N氏:発売初期のCDがハイ上がりだという指摘は多々ありました。
~伝送ロスのあるアナログ盤では100%のダイナミックレンジを出すために、損失分を見越して110%のレベルでカッティングしているから、ロスなく伝わるCDではその部分が耳障りになるかも~という制作側からの回答がFM誌(多分)に載ってました。
“悲しみのJODY”に感じた上すべりの原因はそれなのか?
う~ん、わかりません。

私:しかし、一般的に指摘される初期CDの問題点は、音域の狭さや貧弱な音量が專らなのに、達郎さんの場合はかなり“高度な”お話ですね。

 N氏:今みたいなネット検索もない時代、1人の制作者の意見であって、一般論でもなく公式の回答でもありません。
全てのアナログ盤に当てはまる訳でもなく、メーカーやジャンルによっても違うかもしれません。
ダイナミックレンジ云々じゃなく、初期に見受けられた音が軽いとか、厚みがないとか、の避けて通れない弱点のひとつだった可能性もあります。

私:レコードの音自体はとても小さく、それをプリアンプで拡大しているのは何となくわかります。
が、カッティング時に起きる目減り分を見越し、過剰な音量レベルで元テープを完成させていたとは…。

 N氏:よく言われているアナログ盤特有の温かい音質というのは、レコード針がアナログ盤の溝をトレースする際に拾っている付帯音の類いを心地良い音だと勘違いしているように思います。
またプレイヤー→アンプ→スピーカーとオーディオ機器を通る度にそれぞれの機器の個性が重なり乗っかります。
そこで加味された余分な音、それが空気感、雰囲気の正体です。
しょせんは電気信号、創られた音です。
本当の意味での原音なんて、目の前で電気を介さない楽器を演奏してもらう以外には体験出来ないでしょう。

私:ああ、クラシックのコンサートでさえ、特定の楽器にのみ少しマイクを用いれば、もっと良くなる可能性が生まれるんです。
もっとも、これは音質の話ではなく、単に音量・音響の問題です。
正統派のクラシック・ファンは絶対(?)口にしてはならないでしょうが。
ともあれ、今日は詳しい解説をどうもありがとうございました。




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Ibaraqui, le 10 mars 2024