ベスト・アルバムのジャケット その25 | 愛は限りなく ~DIO, COME TI AMO~

愛は限りなく ~DIO, COME TI AMO~

一粒の雨にさえ心揺れることもある。いつもどんな時も心閉ざさずに…。

普段とは全く印象が異なり、ベスト・アルバムならではの写真が使われた例としては、矢沢永吉さんの「ザ・グレイト・オブ・オール~スペシャル・ヴァージョン~」(1983年)も有名な作品でしょう。

ただし、昨日の「レインボー・グレイテスト・ヒッツ」(1981年)ほどには完成度や芸術性は高くないと思います。

車越しに今にも大雨が来そうな暗い空をとらえた1枚です。

歌詞で言えば、“黒く塗りつぶせ”(1977年)の歌詞のまま。



♪いつかおいらのハートは Hurricane

  闇を引き裂くハリケーン♪



上記の歌詞を写真で表現したらこうなった…って感じ。

しかも真っ黒に染まった雲を背景に、白枠で描かれた『E.YAZAWA』の稲妻ロゴの存在も決まっています。

普通なら、文字が大き過ぎてうるさいと思うところですが、『Z』部分を稲妻に模したロゴタイプを見れば、誰もが納得するでしょう。

それに本ベスト盤はCDのみの販売ですから、元からジャケット・レイアウトもこの寸法を想定しています。

すなわち、LPをCD化した作品ではなく、最初からCDのベスト・アルバムとして世に出ました。


題名の副題にある『~スペシャル・ヴァージョン~』とは、『CD向けに編まれた』との意味です。

発売年が1983年であるところを見ると、このベスト・アルバムが初めて発売された矢沢さんのCDになるでしょう。

何と言っても、コンパクト・ディスクを開発したのはソニーですから、結構早期にCDが出されたのですね。

当時、個別のアルバムは未CD化であり、その代わりベスト・アルバムのCD版の発売となったのでしょう。


話は前後しますが、本ベスト・アルバムの写真は、十中八九「THE GREAT OF ALL VOL.2」(1980年)で使われなかった写真の流用だと思います。

だって、あの時に写っていた車と同じモデルでしょ?

その証拠に、バック・インレイにも『同 VOL.2』のフロント・カヴァーに写っていた永ちゃんの顔が使用されています(苦笑)

もっとも、だからと言って本作の意匠が手抜きだなどと言うつもりはありません。

これはこれでよく出来ています。



1. バイ・バイ・サンキュー・ガール

2. 黒く塗りつぶせ

3. ゴールドラッシュ

4. チャイナ・タウン

5. 古いラヴ・レター

6. 世話がやけるぜ

7. 時間よ止まれ

8. キャロル

9. ライフ・イズ・ヴェイン

10. ウイスキー・コーク

11. 雨のハイウェイ

12. バーボン人生

13. さめた肌

14. Mr.T.

15. 苦い涙

16. 長い旅



構成は、「I LOVE YOU, OK」(1975年)から4曲、「A Day」(1976年)から1曲、「ドアを開けろ」(1977年)から5曲、「ゴールドラッシュ」(1978年)から4曲、そして「KISS ME PLEASE」(1979年)から2曲。

確かに、「A Day」の楽曲が少な過ぎる印象はありますね。

“トラベリン・バス”を入れないとは!

でも、同曲ってライヴの定番との印象が強く、スタジオ版(盤)はそこまで浸透していないかもしれません。


「A Day」の表題曲が入らなかったのは理解できます。

それを収録してしまうと、“長い旅”の立ち位置がなくなってしまうでしょ?

逆の例で考えてみましょう。

実は、「THE GREAT OF ALL」(1980年)そして「同 VOL.2」両者に未収録なのは唯一“長い旅”です。

前者の最終曲は“ひき潮”(別テイク)、後者の最終曲~正確にはバラード編の~は“A DAY”が収まっており、“長い旅”を入れようがない。

ベスト・アルバムとは言え、ひとつのドラマ、ひとつの流れを意識して曲順を考えると仕方のない話ですね。


また、「KISS ME PLEASE」から2曲である点も意外。

まあ、2曲にするなら“バイ・バイ・サンキュー・ガール”ともう1曲の組合せになるのは何となくわかります。

アルバムを代表する曲として“ワン・ナイト・ショー”を選ぶか、バランスを取りバラードの“天使たちの場所”にするか迷うところ。

いずれにせよ、“Mr.T.”の選択は考えられない…。

ただし、「THE GREAT OF ALL」に“ワン・ナイト・ショー”、“I SAY GOOD-BYE, SO GOOD BYE”と並び、「KISS ME PLEASE」作品のひとつとして“Mr.T.”が選ばれています。


ご多聞に漏れず、本作も心斎橋のソニー・タワーで試聴しました(笑)

ソニー製品、つまりソニーのCDプレイヤーを展示する関係からCBSソニーのソフトが試聴できたのです。

だから、音質に関しては期待していませんでした。

3,500円も出してこれはないだろう、と。

別に永ちゃんのベストだけが悪かったのではなく、初出がCDの作品だってあまり変わらなかったです。

しかし、レコードにつきものの“チリノイズ”が一切無いのは、大きな美点ではありました。


あと、本作は~あまり知られていないかもしれませんが~リマスターされています。

1990年代に入り、『CD選書』シリーズのひとつとして価格を下げて再発された際、明らかに音質改善がなされました。

このことは、私が図書館で再発された「ザ・グレイト・オブ・オール~スペシャル・ヴァージョン~」を見付け、借りて試聴したので確実です。

音量調整は当然として、“キャロル”のストリングスの動きや、リム・ショットの響きを聴けば、ずっと明瞭になっています。

ストリングスに関しては、曲が始まって7~8秒のところ~弦の動きが速くなる箇所~に注目(耳?)して下さい!

それと、“ライフ・イズ・ヴェイン”にもあてはまりますが、ベース・ラインが素晴らしいですね。

演奏も、またその録音も。


最後に、帯に記された惹句をご紹介しておきます。



<矢沢永吉、1975-1979年、この偉大な軌跡。録音:一九七五~七九年。>



なぜか、前半がアラビア数字、後半が漢数字という凝りよう。

アルバム名よりも永ちゃんのロゴタイプの方が大きく目立つ表紙なのに、背景写真と稲妻のロゴから不自然な印象を与えないです。

当然、CD専用の意匠のためブックレット裏表紙とバックインレイの装丁は異なります。


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Ibaraqui, le 10 janvier 2018