CDをジャケ買いした例はあまりないですが、それでもいくつかは装丁に惹かれて購入しました。
そのひとつが、CD普及期の1989年に出た「MERRY CHRISTMAS TO YOU」です。
1989年だから実のところ『普及期』とは言えず、レコードが完全に駆逐された時期と言えましょう。
その証拠にこの年から、わずかな例外を除いてLPとの併売がなくなりました。
すなわち、アルバムはCDとミュージックテープという体裁がほぼ全て。
さて、この「MERRY CHRISTMAS TO YOU」は特殊な包装がなされています。
ディスクを収納する通常のプラスティックケースの外側にアクリルケースが用意されているのです。
初回特典として『金属製“ひいらぎ”プレート付 スペシャルパッケージ』で、実際厚紙の中央に金色のひいらぎを模(かたど)ったプレートが埋め込まれ、裏面は立て掛けられるような仕様になっています。
いわば卓上プレートみたいなものとお考え下さい。
すなわち、これを通常のCDケースと共にアクリルケースに収める訳です。
ちなみに、店頭で販売されている時は、当然プレートの方が前~表紙代わり~になっていました。
そりゃそうです。
だって先程ジャケ買いの話をしましたよね?
この金色の葉が目に入ったからこそ購入したのであって、プレートが前面でないと筋が通らない。
もう少し詳しく申せば、白い台紙の真ん中に金の葉が組合せられ、そして上部に赤文字で『MERRY CHRISTMAS TO YOU』と質素ながら味わいのあるジャケットです。
内容は、アルバム名でわかるようにクリスマス企画盤。
演者は小林明子さん、永井真理子さん、麗美さん、辛島美登里さん(FUN HOUSEの表記順)の4人です。
まあ、麗美さんの新曲が2曲入っているため、全くの“ジャケ買い”とは言えないかもしれません。
麗美さんのアルバムは殆ど全て持っており、曲名を見ただけで新曲かどうかは一発でわかります。
他のお3方については、名前くらいしか知りません。
1. 今日こそは心を着がえて…永井真理子さん
2. 街に消えたクリスマスカード…麗美さん
3. Silent Night~祈り~…辛島美登里さん
4. 星空のクリスマス・パーティー…辛島美登里さん
5. Merry Christmas To You…全員
6. クリスマスの贈り物…小林明子さん
7. 真夏のSilent Night…小林明子さん
8. Lonely クリスマス…永井真理子さん
9. 走るそよ風たちへ…麗美さん
10. The Christmas Song…全員(ア・カペラ)
FM誌を見たところ、麗美さんのみならず全員が新曲(未発表曲)を持ち寄ったそうです。
クリスマスに向けた楽曲を用意した、と。
で、全10曲を4人で歌う際、1人につき2曲、5曲目と10曲目を4人全員で歌うのは予想できました。
予想外だったのは、前半に辛島さんの歌が2曲、後半に小林さんの歌が2曲続いたのは意外。
これはCDだからこそ通用した手法であり、LPだったら必ず片面1人1曲+全員歌唱1曲となったかも。
なぜなら、本作の構成のままLPで敢行してしまうと、A面には小林さんの曲が無く、B面には辛島さんの曲が無いことになってしまうから。
他の人については存知上げませんが、麗美さんの2曲はそのままシングルにもなりました。
A面が“街に消えたクリスマスカード”、B面が“走るそよ風たちへ”です。
前者は、ポップな曲調でストリングスも入るなかなか豪華な音作り。
イントロからストリングスとピッチカート、ハープの音が入ってくるので、いかにもクリスマスらしいでしょ?
“街に消えた…”の歌詞は…グループ交際をしていて、クリスマス・パーティーで賑わう中、意中の人に告白~クリスマスカードを渡す~したかったが、実現しなかったという内容。
1人淋しく…ではなく、みんなで楽しくクリスマスを過ごせたが、自分にはむなしさだけが残った、と。
失恋ソングとはまた異なる歌詞が面白いです。
でも、麗美さんが歌うと大抵感傷的な気持ちになることが多い気がします。
これは良い意味ですよ。
声やメロディのせいでしょうね。
勿論、歌詞も演奏も好きですが、ドラム・サウンドだけは気に入らない。
全体をぶち壊すほどではないにせよ、派手に鳴り過ぎています。
『また打ち込みのドラムが制御不可能になっているな』と思いきや、表記を見ると本物のドラムでした!
当時の録音機材のせいで、スネア・ドラムのサウンドが無機質になってしまうのかな…。
とにかく、麗美さんの声は“都会のサファリパーク”(1989年)のようなリズミカルな作品でもどこか落ち着いているのが最大の魅力です。
“走るそよ風たちへ”は翌1990年のアルバム名にもなりました。
同曲については過去記事で取り上げましたので、一部重複するのをお許し下さい。
それはさて措き、企画盤に収録した曲を正規盤に入れる例はままありますが、その曲をアルバム名にまでするのは極めて珍しいのでは?
“走るそよ風たちへ”では、軍事訓練を受ける若き兵士たちを歌っています。
クリスマスとの関連性は薄いととられるかもしれませんが、後半がそのままサビになっており、英語・ドイツ語・ポルトガル語で『彼らに幸あれ』と歌っています。
ドイツ語とポルトガル語は同内容ですが、英語は前者2ヶ国語とは異なります。
『クリスマス』の言葉が出るのは英語のみです。
英語のみ『我々と共に喜びを分かち合い、クリスマスを過ごそう』とあります。
しかし、本当に言いたいことは前半のヴァースにあり、♪活躍する日は 来なくていい♪が鍵でしょう。
他の部分はは情景描写と言うか、麗美さんから見た兵士たちの毎日ですから。
思うに、この曲は最初から次のアルバム(正規盤)に入れる予定だった気がする。
そこにクリスマス・アルバムの話が出たため先行公開する形になったのではないですか。
普通に考えて、クリスマス・アルバム向けに書き下ろして出てくる発想の楽曲ではあり得ませんよ。
演奏は、アコースティック・ギターとリコーダー(シンセサイザーで作った?)が最大の聴き所でしょう。
それからマーチング・ドラム~兵士を鼓舞する意味ではない~も良いアクセントになっています。
アルバムの最後は有名なクリスマスの定番曲を全員で歌っており、いわばアンコールとも言えます。
よってアルバムの9番目は本編最後でもあり、とても重要な位置だと聴き手に気付かせるに充分です。
いや、アルバム全体の曲順はよく練られていますよ。
最初に辛島さんと小林さんの歌の位置が偏っていると申しましたが、それは違います。
お聴きになればわかりますが、辛島さんの曲はメドレーの形を取り、“Silent Night~祈り~”は静かなバラード、次の“星空のクリスマス・パーティー”は一転してアップテンポに変わります。
冬から夏に移る感じ(笑)
小林明子さんの方はクロス・フェードこそしていませんが、やはり前半の“クリスマスの贈り物”は一面銀世界を歌と演奏で表わした美しいバラードです。
フルオーケストラが中心で、ドラムスはブラシを用いて控え目に演奏しています。
それが“真夏のSilent Night”ではファンキーなリズムに変わり、管楽器が大活躍します。
最後の“The Christmas Song”は、無伴奏で4人の声のみからできています。
ア・カペラですが、この編曲を行ったのが麗美さんです。
基本的に四声のハーモニーから進行し、そこに母音唱法や後追いコーラスも所々に加わります。
そして圧巻はミドルの♪They know that~how to fly♪でしょう。
ここだけは各々の単独ヴォーカルが聴けます。
4つのフレーズを4人が1フレーズずつ分けて歌う形ですね。
ただし、永井さんの歌ったパートだけは、歌いにくかったのか一部を麗美さんがサポートしています。
以上、アルバムの名義は『FUN HOUSE LADIE'S VOCAL』と記され、早い話ファンハウスに所属している4人の女性歌手によって作られました。
4人全員に馴染みがなくとも充分鑑賞に値するアルバムだと思います。
実際、通常はクルスマス・アルバムなど買うことなどない私でも、このアルバムは愉しめました。
それ以上に、麗美さんにはまたいつか復帰してもらいたいです…。
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