ほんのにちようび -11ページ目

ほんのにちようび

心に残った本のあらすじと感想をつづります。

(時に映画、マンガ、音楽などについても)



著者: 荻原 浩
タイトル: 僕たちの戦争
双葉社 ★★★☆
[あらすじ]
バイトはクビ、彼女とも最近うまくいっていない……。そんな冴えない日々を過ごしていた19歳のフリーター・健太は、鬱憤を晴らすべく、大好きなサーフィンをしに海へと向かった。しかし、そんな日に限って波を読み違え、意識を失ってしまう。しばらくして意識を取り戻した健太が見たのは、なんと昭和19年の農村風景だった。そして、同じ頃、健太が遭難した海岸には海軍の練習生、吾一が倒れていた。しばらくして二人は、自分が誰かと入れ替わってしまったことに気づく…。

どうやら、9.11のテロにインスパイアされて書かれた小説のようだ。
今井雅之主演で昔公開されていた映画「WINDS OF GOD」と設定が似ている。(WINDS OF GOD」は、現代のお笑いコンビが交通事故をきっかけに戦時中にタイムスリップしてしまう話。この映画も面白かった)この小説ではさらに、戦時中へタイムスリップした主人公と入れ替えに、戦時中から現代にやってきた日本人兵士、吾一が登場する。

入れ替わった二人の若者はなんとか自分の置かれた世界になじもうと、入れ替わった人物(つまり、健太は吾一に、吾一は健太)になりきることを決意するのだが、吾一が現代へ馴染もうとする過程での奮闘ぶりが面白い。「超~」「まじ」などの現代語を使おうとしておかしな言葉になってしまったり、突然健太になりきれない吾一の地が出てしまって、周りの人がうろたえるシーンがうまく描かれている。

例えば、今まですねかじりばかりして小言の対象でしかなかった健太に、父親が逆に小言を言われて目を白黒させる場面。
「食事をする時は、よそ見をせず、きちんと食べなさい」
「あ、すまん」
「干物を残すな。もったいない、頭も食え」
「……お、おお」
 これで皇国代理店だか興国内裏店だか
(管理人注:「広告代理店」という言葉は戦時中からやってきた吾一にはよく分からないので、勝手に当て字をして判断している)の営業部長という要職に就いているというのだから、笑止千万だ。
「仕事は順調なのかね?」
「まぁ、おかげさまで」
「それはなにより、励みなさい」


現代の無気力フリーターの典型として描かれている健太が、いきなりこんなことを言うのだから、親もさぞかし戸惑うだろう(笑)。

一方、健太は戦時下の軍隊という厳しい状況のなかで「死」と直面し、順調に成長を遂げていく。

そしてもうひとつ、この二人を結びつけるのがミナミという女の子。健太の彼女だったミナミは、吾一と入れ替わっているとも知らずに健太と付き合いを続けている。女性を知らない吾一はミナミの一挙一動にどぎまぎしながら、すぐに彼女に惹かれていく。一方、吾一と入れ替わっている健太は、時空を超えた遠い空の下でミナミを思い続けている。顔がそっくりという以外に共通点のない二人だったが、やがてミナミという女性に対する愛情を共有するようになり、ひとつの答えへとたどりつくのだ。

健太と吾一という二人の主要人物の心の動きが生き生きと描かれていて、面白さと読後の爽やかさを楽しめる、いい本だった。

BGM:イツナロウバ/KICK THE CAN CREW



著者: 岡野 宏文, 豊崎 由美
タイトル: 百年の誤読
ぴあ ★★★☆  
「文学賞メッタ斬り」で宮本輝を「テルちゃん」呼ばわりし、ばっさりと斬って捨てたかの名剣士トヨザキ氏再登場。対談形式で20世紀のベストセラー100冊を語っているのが本書。  

この本でもおなじみの毒舌が炸裂。毒舌といっても単なる批判ではなく、適切な比喩を使った皮肉があまりに的を得ていてところどころ噴き出しそうになる。たとえば、1993年のベストセラー「マディソン郡の橋」はこんな風に一刀両断。  

豊崎「とにかく、これって、欲求不満の女の所にプラプラ~っとした浮浪者みたいな男がやってきて、クラッときてセックスしてアッハ~ンみたいなよくある痴話ばなし以外の何者でもないでしょ」(p.331引用)

かと思えば、同時期のベストセラーである「もものかんづめ」(さくらももこ著)を「ゾッとするほど巧い」と絶賛。さくらももこは”平成の林芙美子”だ、いや、むしろ”井伏鱒二”ではないか、と話が続く。  

自分が読んだ本については、(たとえ感想が真逆であっても)あたらしい視点を与えられたようで新鮮に感じられるし、未読のものについてはぜひこれから読んでみよう、と思わせる力のある本。

BGM:Go shopping / Bran Van 3000
終戦のローレライ 福井晴敏 講談社 ★★★☆

 [あらすじ] 
 第二次世界大戦末期、日本軍は海中に沈んだ空前絶後の秘密兵器「ローレライ」を回収するために、潜水艦を派遣した。それを阻止しようとするアメリカの執拗な攻撃を耐え抜き、やっとのことで手に入れたローレライの驚くべき正体とは・・・。
 
 作品世界へ没入するまでがちょっと大変で、実は一度挫折しそうになってしまった(笑)。しかし、そこを越えると、緻密に創りこまれた世界にどんどん惹きこまれていく。ローレライの正体とそれを生み出したドイツSSの悪魔的な政策、潜水艦の中で起こるそれぞれの乗組員の心の葛藤、浅倉大佐の策略と潜水艦のゆくえ。この辺りの描き方は本当にうまいと思った。秘密兵器ローレライの正体が分かってからはもうページをめくる手が止まらなくなる。マニアックな戦争ものではないし、読後の充実感が大きいのでなかなかおすすめ。ただ、最後のエピローグは賛否両論なのではないか(私は不要派)。

猫:これって、春先に読んだ本ではないですの。
  最近当たりがあまりないからって、昔の読書日記をコピペしてますのね。


 でもたぶん、このまま行くと今年読んだ本のベスト10に食い込んで来そうな本である。

 BGM: Merry Chistmas Mr. Lawrence / Ryuichi Sakamono

はじめまして。
最近、読んだ本の内容をすぐに忘れてしまうので、備忘録も兼ねてブログをはじめてみました。

猫:こんなアルツハイマー気味の管理人の補佐役でたまにあらわれますの。

 目標は、○○文庫の100冊ならぬ「私の100冊」を完成させること。
今エントリーしているのは以下の34冊。そのうち、ずいぶん前に読んで記憶があやしいものについては「?」マークにしてあります。
「?」マークのものは再読して消す可能性あり。
(順番はベスト順ではありません)
 
 1 なくしてしまった魔法の時間/安房直子  
 2 十二歳はいちどだけ(他、十二歳シリーズすべて)/薫くみこ
 3 新撰組血風録/司馬遼太郎
 4 こころ/夏目漱石
 5 ノルウェイの森/村上春樹
 6 パーフェクトブルー/宮部みゆき
 7 きらきらひかる/江國香織
 8 錦繍(あるいは「彗星物語」)/宮本輝
 9 後宮小説/酒見賢一
10 天の瞳/灰谷健次郎
11 詩のこころを読む/茨木のり子
12 塩狩峠/三浦綾子
13 智恵子抄/高村光太郎
14 不道徳教育講座/三島由紀夫
15 恋/小池真理子
16 しゃべれどもしゃべれども/佐藤多佳子
17 クリムゾンの迷宮/貴志祐介
18 橋のない川/住井すゑ
19 言語姦覚/筒井康隆
20 一握の砂/石川啄木
21 今夜、すべてのバーで/中島らも
22 放送禁止歌/森達也
23 変?/中村うさぎ
24 人間の絆/サマセット・モーム
25 壬生義士伝(あるいは「蒼穹の昴」)/浅田次郎
26 キッチン(のなかの「ムーンライト・シャドウ」)/吉本ばなな
27 雷桜/宇江佐真理

検討中のものたち。
28 命/柳美里
29 銀色の恋人/タニス・リー
30 白仏/辻仁成
31 絶対音感/最相葉月
32 GO/金城一紀   
33 猫のゆりかご/カート・ヴォネガット・Jr 
34 光射す海/鈴木光司 
 
 本日のBGM: Dragostea Din Tei/O-Zone 初日なのでノリノリ。