私の人生にいちばん大きな影響を与えた『ノルウェイの森」が映画化されたので、公開初日にいそいそと見てきました。
内田樹さんのブログ記事 を事前に読んで、それほど素晴らしい出来ではないだろうなあと予想がついたのと、原作を何十回と読んでいる自分にはどうしても違いが目についてしまうだろうなあと分かっていたので、あまり期待はしないようにしつつ。
恐れていた通り、やたらと性的なシーンばかりが印象に残る映画になっていて、とても残念。もともと原作もそういう場面が多いけれど、各登場人物のディティールが丁寧に描きこまれているからこそ、ただのエロ小説で終わらないあんなにも豊かな小説になったというのに。原作の性的なシーンは「生きる」ことの象徴であり、相手との「対話」であり、ときには「癒し」の意味合いを持つ深い行為だったのに、映画版ではただの発情期の女性たちが主人公と寝ることによって性的欲求不満を解消しているようにしか見えない。
一緒に見に行った相方(原作未読)は「それぞれの登場人物がどうしてお互いに惹かれあっていくのかよくわからなくて、感情移入が出来なかった」と言っていました。なるほどその通りで、主人公と直子が東京を歩き回る中でお互いに心を開いていく過程や、突撃隊の笑い話、永沢さんのエピソード、緑の父親と主人公の交流を見て緑の心が動く場面、火事を見ながら気持ちが高揚して思わず口づけを交わしてしまうシーン、レイコさんが病んでいくきっかけとなった少女との出会い、主人公とレイコさんが行った音楽葬など、重要なエピソードがことごとく削られているために、登場人物たちはなぜそんなに悩み、何に苦しんでいるのかがよく分からない。レイコさんなんて、完全に欲求不満のおばさんにしか見えません。
でも、結局のところ私がいちばん違和感を感じたのはリズムとトーンだったように思います。原作はところどころに心温まる話や面白いエピソードが散りばめられていて、だからこそ深刻なシーンとのメリハリがはっきり感じられる作りになってたのに、映画は音楽も含めひたすら陰鬱としてリズムがない。主人公と直子はやたらとせかせか歩き回り、直子は変に甲高い声でしゃべり(若作りのため?)、レイコさんも妙に高い声で(原作はハスキーだった)歌う。主人公も舌足らずで、知性が感じられない話し方をするせいで、原作どおりのセリフが浮いてしまって白々しく感じます。
よかったところを探すのは難しいけれど、緑役の水原希子さんはイメージに近くはつらつとしていてよかった。あと、永沢さん&ハツミさんのカップルも雰囲気があって印象に残りました。また、草原のシーンをはじめ、映像は全般を通して美しかったです。
願わくば、日本人脚本で再度映画化して欲しい…。
BGM: Norwegian Wood/ The Beatles