- 町田 康
- 東京飄然
- 中央公論新社 ★★☆
いまや何を書いても売れちゃう町田康が、東京近郊をふらふら歩いて、つらつら書きつづったエッセイがこれ。
「旅に出たくなった。なぜか。理由などない。風に誘われ花に誘われ、一壺を携えて飄然と歩いてみたくなったのだ」とはじまるこのエッセイ。とはいいつつも、売れっ子作家で遠出ができない町田康は、東京近郊に日帰り旅をして旅行欲を満たそうとする。
先日、平日に会社を休んで友人と鎌倉へ行ってきた。事前に行き先はまったく決めず、とりあえずうちにあったガイドブックをひっつかんで出発。品川で友人と合流して電車に乗ったところで、友人が鞄から取り出したのがこの本。何で今日これを?と思いながら前に読んだときの記憶をたどってみると、そういえば町田康も鎌倉&江ノ島に行っていたのだった。
どうせなら、ということで、町田康が行ったところを後追いすることに。初めての江ノ島はジリジリする暑さでへばりそうになったが、エスカー(モノレールみたいな乗り物)を使わず、島の端っこの方まで歩ききる。おっさんの町田康たちもエスカーを使わずに徒歩で行っていたのだ。神社を抜けて高台になったところまでたどりつくと、転げ込むように食堂へ入ってしらす丼とさざえの壷焼きをオーダー。これが絶品。
満腹になったあとはいい気分で帰る、かと思いきや、本を見てみると、町田康たちはさらに海岸沿いの洞窟「岩屋」へ行っているではないか。そこで負けじと岩屋へ。途中で海難救助隊みたいな人たちが海を眺めているのに出会う。私たちが軽い気持ちで「なんかあったんですか」と聞くと、「ええ、昨晩から一人行方不明者がいて」と言われる。聞くんじゃなかった。ぞくぞくしながら岩屋へ。中は寒くていっそうぞくぞくする。自然と早足に。途中、暗闇に光るものがあり、腰を抜かしそうになった。ちゃちな竜神が光っていた。友人の本だというのに、私は「東京飄然」の岩屋のページに岩屋のスタンプをしっかり押した。
岩屋を出てからの帰り道は登りだらけでつらい。つい、途中で休憩用に豆腐プリンを購入。すると、その店のおばちゃんが近道を教えてくれる。これがまたものすごく近道で、あっという間に島の入り口へ。あの豆腐プリンは、RPGでよくある、手に入れないと次に進めないアイテムみたいなものだったのだ、きっと。
そうこうして江ノ電乗り場まで戻り、町田康たちが目前まで行きながらあえて立ち寄らなかった鶴岡八幡宮へと向かった(江ノ電乗り場ではもちろん江ノ電スタンプを押した)。おみくじを引いてみると、「情欲を捨てよ。欲心の一部を捨てれば願い事は叶う」とある。情欲って・・・。慌てて参拝しようとしたら、拝み方を間違えた。
若宮大路で帰りのおやつに金平糖を買い、夕食を済ませたあと帰途へ。スタンプだらけになった本(しかも著者のサイン本)と鎌倉飄然の旅に私はいたく満足だったが、同行者はさていかに。
BGM:Magic Music/木村カエラ