ニート | ほんのにちようび

ほんのにちようび

心に残った本のあらすじと感想をつづります。

(時に映画、マンガ、音楽などについても)

絲山 秋子
ニート
角川書店 ★★★

[あらすじ]

ごくたまに連絡をとる、古い友人のつけたブログを久々にのぞいた「私」。すると、そこには切迫した生活をおくる彼の姿がありありと現れていた。明日の食べ物にも困っているニートの彼を、「私」は呼びだし、なんとか負担をかけない形で軍資金を融通しようとするのだが・・・。


すっかり絲山マジックにかかってしまった。読む本読む本けっこうツボ。

表題作の「ニート」と、その続編ともいえる「2+1」が特によかった。

主人公が救いの手を差し伸べた相手である読元くんという友人は、端的に言えば無気力ニート。こういうキャラクターは「イッツ・オンリー・トーク」 にもいたっけ。絲山作品は概して女性が「男前」な性格をしていて、男性は無気力ニートだったり、過信と卑屈の間を揺れ動く不安定な人物だったり、寡黙で世間から自分を閉ざし気味だったりする。しかし、これらの「非さわやか」な男性キャラクターに決して魅力がないわけではなく、読み進めるうちにむしろ抗えない魅力を感じさせられてしまうところこそが、絲山作品の真骨頂。


「男前」な彼女たちは、セックスにも重大な意味を見出したりしない。彼女たちのなかで、それは「癒し」とか、「共感」の記号みたいなものだ。とはいえ、その行為はひそやかに彼女たちの生活に波紋を広げていくのだけれど。


余談だけど、「ニート」に共感したのには、もうひとつ理由がある。

読元くんのような友人が私にもいるせいだ、たぶん。

たまに連絡が来ると、決まって彼はひどい状態のなかにいる。大学卒業に必要な単位を落として留年していたり、就職したと思えば余分なところに労力を使いすぎていつも疲れていたり、かと思えばいつの間にか仕事をやめて、遠くで夫と子供のいる女性と同棲していたり。ここさえがんばればなんとかなる、というところで、彼はいつもくじけてしまう。


いつか彼は、「ニート」という部屋から出てこれるだろうか。願わくば大切なものを失ってしまう前に。


BGM:Tonight is the night/くるり