- リリー・フランキー
- 東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~
- 扶桑社 ★★★★
[あらすじ]
いつも昼過ぎまで寝て、夜になると酒を飲みに出て行くオトン。ボクが3歳のとき、オカンはそんな父を置いて家を出た。その後もオトンは家にやってきたり、来なかったりの日々。でも、オカンだけはいつも変わらずボクを大切に、しかし過保護にすることなく育ててくれた。やがて高校を卒業する日が来て、ボクは「ここではないどこかへ行かなければ」という強い想いと共に町を離れ、東京へと旅立った・・・。
話の筋には特に目新しいところもなく、特異なキャラクターが出てくるわけでもない。しかも、「上京」というテーマはもう、小説にしろ曲にしろ、嫌というほど見聞きしてきている。なのに、読んでいて途中から涙が止まらなかった(←この表現あんまり好きじゃないけど)のは、場面場面の登場人物の心情があまりにもストレートで、かつリアルだったからだろう(まあ、ストレートを装ったあざとい部分もあると思うけど)。
リリー・フランキーは特別マザコンってわけじゃないけど、母親への愛情の表し方がとっても自然だ。というか、家族を大切にしない日本の風潮においては、それはちょっと“不自然”ともとれるぐらいの自然さなのだ。なまじ社会人になると、「あたしももういい年だし、家族に頼らなくても生きていける」などと錯覚しがちだけど、本当に大人になるっていうのは、育ててくれた家族が頼ってこれるような自分になるってことなんだなあ、とこの本を読んだ後で思った。
リリー・フランキーが、母親の葬式で遺骨を食べるシーンがある。「蛇にピアス」でも、死んだ恋人の歯を砕いて飲むシーンがあったけれど、このシーンには「蛇にピアス」のような狂気はなくて、ただ純粋な愛情が感じられる。うちのおばあちゃんが死んだとき、叔父さんが遺骨拾いの場面を何枚も何枚も写真に撮っていて、しかもその写真を兄弟全員に送ってきたことがあった。遺骨の写真なんて気味が悪い、と一瞬思ったけれど、今思えばあれも純粋な愛情がさせたことだったんだろう。愛情表現って多彩。
まったく余談だけど、うちの愛猫が子どもを産んだとき、私は彼女の母乳を飲んだことがある。あれも愛情のなせる業・・・
猫:それはあんたが単なる変態だからですわよ。
BGM:東京/くるり