対岸の彼女 | ほんのにちようび

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心に残った本のあらすじと感想をつづります。

(時に映画、マンガ、音楽などについても)

著者: 角田 光代
タイトル: 対岸の彼女
文藝春秋 ★★★☆


[あらすじ]

職場の人間関係に辟易して、結婚とともに仕事を辞めた小夜子。専業主婦として3歳になる娘のあかりを育てている。毎日あかりを連れて公園へ行くのだが、思うように「公園デビュー」ができない自分と、その自分を映すかのように子どもたちの輪に入れないあかりを見比べて焦っている。そんな自分を立て直すために再び働くことを決意した小夜子だったが・・・


角田光代は昔読んで、「ぱっとしない作家だなあ」と思っていたが、吉田修一に続いて最近すごく見直している作家の一人。本作で直木賞受賞、というタイミングは絶妙だったのではないだろうか。


とにかく、女性同士の友情の描き方が素晴らしい。大きくわけて2つの友情――思春期の友情と、立場が違う大人2人の友情――が描かれている。


一般的に女性は異性と恋愛をする前段階として、同姓に対してひときわ結びつきの強い友情関係を築くと言われている。その相手が他の友人と話していると嫉妬を感じたり、2人きりになりたいと願ったり。まるで相手に恋をしているかのようだ。この作品に登場する少女たちは、この段階でお互いと出会う。そして、彼女たちは、その関係性が永遠には続かないものであることを心のどこかで感じている。


また、文藝春秋の紹介文に


子持ちの「勝ち犬」小夜子と、独身、子なしの「負け犬」葵。性格も生活環境も全く違う二人の女性の友情は成立するのか!?


とあるとおり、この作品には、仕事に生きる女性と、専業主婦をしている女性との関係も並行して描かれている(かといって、このコピーは内容と少しそぐわないと思うけれど)。生活環境が違う人間とは、なかなか感情の共有がしにくい。学生時代には仲の良かった友人と、いつの間にか距離が出来てしまった、などというのも、お互いの間に生きる環境の違いが生じたことが原因であることが多い。


ここに描かれている2つの友情は、どちらも葵という女性に関するものだ。高校時代、同性と、忘れられない友情を結んだ葵が、今どのように人間関係を築いているのか――それが気になって最後まで一気に読み進んだ。


BGM:遠い音楽/ZABADAK