- 著者: 中島 らも
- タイトル: なれずもの
- イーストプレス ★★★
知らずに読んだのだが、どうやら中島らもの遺作らしい。
あとがきに、中島本人が「夢をかなえられない人のための本を作りたい」と提案した、とある。
内容は、中島らもとそれぞれの著名人の対談形式で構成されている。
相手に選ばれているのは、柴山俊之、竹井正和、宇梶剛士、安部譲二、本上まなみ、松尾貴史。
柴山俊之とは、音楽家であり、多数の歌手に詞を提供した作詞家でもあるらしい。
70年代~の音楽界について語りながら、どうして音楽をはじめたか、周りに反対されても続けざるを得なかったか、という二人の思いが語られる(らももバンド活動をしていた)。
出版社リトル・モアの社長である竹井正和と中島らもの意見の一致が面白かったのが、ブルーハーツについて。二人とも「青空」という彼らの曲の詩を絶賛している。自分より若い人の才能を素直にすごいなあ、と言える彼らは読んでいて好感が持てた。
最初の柴山俊之といい、この竹井正和といい、「最先端で無茶した友達はみんな死んでいった」という発言をしていて、それにらもが深くうなずいている。「友人の死」は3人に共通したひとつのテーマであるかのようだ。「彼らにあこがれていたけれど、そうなりきれなかった僕たち」、それが「なれずもの」なのだろうか。
私が意外だったのが本上まなみが対談相手に入っていること。でも、読んでみると、ほかの人とは違ったやさしい語り口で、でもほかの人と遜色のない対談になっているから面白い。ちなみに、らもは本上が書いたという「ぱたのはなし。」という絵本をずいぶん誉めていて、ちょっと読んでみたくなった。
最後はらも主宰の劇団の一員でもある松尾貴史。二人の過去の話が語られる。
松尾が劇団できちがいのインドおかまの役をやったとき、台本には
「ホーホッホッホッ。ホーホッホッホッ」
きちがいインドおかま登場、ここで5分間わけのわからないことをする
とだけ書いてあったという。これには笑ってしまった。
つまみぐいのような紹介をしてしまったが、ここで話している6人と中島らもは、みんな、最初からやりたかった職業についた人々ではなかった。野球選手になる夢に破れ、神童と呼ばれたのに落ちこぼれ、それでも確固たる「今」がある人たちだった。
ちなみに、あわせて読んだ本として・・・
「中島らも列伝」鈴木創士
河出書房新社★☆
作者の私的な回想録の域を出てない感はあるが、中島らもの青春時代と奥さんの話は興味深かった。
余談だが、中島らもの本の中で「今夜、すべてのバーで」を殿堂入りにしたけれど、タイトルで一番気に入っているのは「永遠も半ばを過ぎて」だ。終わりのないものの終わりを感じさせるこのタイトル。
文中ではこのように続く。
永遠も半ばを過ぎた
私とリーは丘の上にいて
鐘が確かにそれを告げるのを聞いた
私たちは空を見上げる。満天の星を。
永遠の書物を。
私とリーはまだその表紙を開いたところだ。
いずれにしても、立ちあがりそして立ち去らねばならない。
星々の香気を追って、旅を始めねばならない。私はリーの細い手を取った。
彼が突然この世からいなくなってしまったのが、本当に残念だ。
先月渋谷でやっていた中島らも追悼写真展に行けばよかったな。
BGM:ハイブリッドレインボウ/The pillows