人のセックスを笑うな/1月の読書記録 | ほんのにちようび

ほんのにちようび

心に残った本のあらすじと感想をつづります。

(時に映画、マンガ、音楽などについても)



著者: 山崎 ナオコーラ
タイトル: 人のセックスを笑うな
河出書房新社 ★★★☆

39歳の美術専門学校の教師と、19歳の同専門学校学生の恋愛を描いた作品。
特に大きな出来事が起こるわけでもなく、普通に始まって、普通に終わっていく恋愛。描かれている恋愛自体にものすごく共感できるというわけではないし、キャラクターが強烈に魅力的というわけでもない。なのに、なぜ読んだあとに心にあたたかいものが残るのかというと、表現がとても生き生きしていて、ところどころで読み手の感情を揺り動かす力を持っているからなんだろう。

特別起伏のない物語を、「自分の言葉」で、かつ人の感情に訴える豊かな表現で、これほどのびのびと書いている人はほかにちょっと思い当たらない。

私が一番好きなのは、相手の年上の女性について書いたこの部分。

あの、笑ったときにできるシワはかわいかったな。手を伸ばして触ると、指先に楽しさが移るようだった。

そして、すごい表現だなと思ったのが、

「ユリちゃん」
名前を呼んでみたら、
「磯貝くん大好き」
と、言ってくれた。
それはちょっと幸せに似ていた。


「幸せだった」のではない。あくまでも「幸せに似ていた」、その感情。幸せだ、と声を大にしていうにはちょっと面映いような、ささやかでじわっとしたあたたかみ。その微妙なニュアンスが、絶妙な温度で伝わってくる。

次回作が楽しみな作家がひとり増えてとてもうれしい。


 最近読んだ本   

笑犬楼の逆襲/筒井康隆 ★☆   
「笑犬楼よりの眺望」は面白かったんだけどなあ・・・  

・チルドレン/伊坂幸太郎 ★★☆   
 彼の過去の作品のどこかで出てきたようなキャラ設定。  

悪人正機/吉本隆明・糸井重里 ★★   
 興味ある二人の取り合わせなのに、テーマが多すぎて内容が薄いのが残念。

・雨にも負けず粗茶一服/村松栄子 ★★★   
 期待しすぎたので、ちょっとあてが外れた。普通に面白い。  

生きながら火に焼かれて/スアド ★★   
 すごい経験の持ち主なのに、著者の表現が貧弱すぎてそのすさまじさがあまり伝わらなかった。「女盗賊プーラン」の方がリアリティあり。

世界悪女物語/澁澤龍彦 ★★★   
 名前のとおり、世界の名だたる悪女の生い立ちを集めたもの。知識欲が満たされてなかなか面白い。  

家守綺譚/梨木香歩 ★★★   
 不思議な世界をなにげなく描いていて心地よい。やや川上弘美風? こんな家に私もお邪魔してみたい。  

親指Pの修行時代/松浦理英子 ★★   
 よくよく考えると奇想天外な話だが、淡々と書いてあるのですんなりその設定を受け入れられる。主人公の恋人になる盲目の少年のキャラ設定が新鮮だった。  

・ダ・ヴィンチ・コード/ダン・ブラウン ★★★☆        
 話の大筋はオーソドックス。ただ、中で語られるキリスト教にまつわる謎の解明部分がかなり面白い。あのボリュームでも読む価値あり。  


 BGM:藍色夏恋/原田郁子