「旧宮家の皇籍復帰で女系天皇阻止」説を吟味する | 安濃爾鱒のノート

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なんというか、私の「ノート」です。

 「女性宮家創設」(:女系天皇容認)に反対する意見は、大体、「旧宮家の皇籍復帰」と併せて語られるようなので、その「旧宮家」について、ちょっと書いておく。

 

 所謂「旧宮家」、正確に書くと、1947年(昭和22年)にGHQの命令で皇籍離脱させられた11宮家、具体的に挙げれば、伏見宮・東伏見宮・山階宮・久邇宮・北白川宮・閑院宮・賀陽宮・東久邇宮・梨本宮・朝香宮・竹田宮家、の各家は、伏見宮家以外はすべて伏見宮家の連枝、つまり、数代遡れば全て伏見宮家に収束する家系で、その伏見宮家は、父の父の・・・と遡れば、北朝第3代崇光天皇(すこうてんのう、1334年5月25日~1398年1月31日、在位期間は 1348年11月18日~1351年11月26日)にたどり着く。伏見宮家 第26代の 博明王(ひろあきおう) が GHQの指令により 昭和22年(1947年)10月14日皇籍離脱した。

 

 つまり、皇位継承者として男系男子に拘るために、旧宮家の方を皇籍復帰していただいても、どなたも、北朝第3代崇光天皇から20代前後も経過した方々なのである。

(竹田恒泰氏は、北朝第三代崇光天皇から19代)

 

 因みに、
   平清盛は 桓武天皇から11代の男系男子。
   源頼朝は 清和天皇から10代の男系男子。
 平清盛も、源頼朝も、天下を獲った後、「私は桓武天皇から11代の男系男子だから、私が皇位を継承する」「私は清和天皇から10代の男系男子だから、私が皇位を継承する」などということは言わなかった。
 平家も源氏も、既に臣籍降下しており、皇籍復帰は(基本的には)できない、というルールがあったのだ。(一旦臣籍降下した後の皇籍復帰には 僅かに 例外あり)

 

 そして、歴代天皇から⼀定の距離を経た者は⾂籍に⼊るもの と されていた。

 律令においては、4世王までは皇親 となり、5 世下れば皇親とはならない(但し 王号を有し従五位下の蔭位を受ける)、6 世王は王号を得られないもの とされた。

 1920年(大正9年)5月19日に制定された内規「皇族ノ降下ニ関スル施行準則」では、
  皇玄孫までを皇族としその子孫は臣籍降下させる
  但し 宮家を継承する長男のみは例外とするが、
  これも皇玄孫の更に4世(玄孫)までを皇族とし
  それ以降の世代は臣籍降下させる
となっていた。これは、それまでにあった臣籍降下のルールを明文化したものと考えられる。

 では、伏見宮家はどうなのかというと、このルールを厳格に適応すれば、当然、とっくの昔、数百年前に臣籍降下しておらなければならない筈なのだが、伏見宮家は、その時々の天皇(若しくは上皇)の猶子(ゆうし)となることにより、名目上の親子となり、それを根拠にして親王の地位・称号を得て、宮家であり続けてきたのである。
 また、近代以降では、伏見宮家系の11宮家が、「天皇家の『親戚』」と認識されているのは、これらの家は、最近の皇室と女系で繋がっているからなのである。
( 東久邇家は、昭和天皇の女系の子孫
  北白川家・竹田家・朝香家・東久邇家は、明治天皇の女系の子孫
  久邇家は香淳皇后の実家 )

 

 実際、竹田恒泰氏は、紹介されるとき、「北朝第三代崇光天皇から19代子孫」などとはいわれず「明治天皇の玄孫」といわれる。(正しくは、明治天皇の "女系の" 玄孫)

 もし、旧宮家の男子が皇位を継承することとなったとき、公式には、「北朝第三代崇光天皇からXX代」ということになるが、実際の国民の受け止め方は、「明治天皇の玄孫」とかいう認識となるのだろう。(明治天皇の女系の玄孫)。

 

 いうなれば、伏見宮家とその連枝の旧宮家というのは、皇位継承者が居なくなるを防ぐための宮家ではなく、皇女の嫁ぎ先に相応しい家系を確保するための宮家、最早、皇統とは別系統の "尊い家系" なのである。

 

 女系天皇を阻止するため、旧宮家を皇籍復帰させ、それらの家系の男子から皇位継承者を選ぶというのは、まぁ、辛うじて男系男子ではないことはないが、本来ならとっくの昔に臣籍降下している筈だったというレベルでの薄いうすーい「男系の繋がり」に過ぎず、実質は、殆ど 女系皇位継承なのである。

 或いは、「女系天皇絶対反対」を主張する人たちは、「女系の子孫が皇位を継承すれば、それは『王朝の交代』ということ」と主張するが、それなら、伏見宮家系の11宮家の男子が皇位を継承するのは、現実には、現天皇家の親戚への皇位継承というより、現天皇家と(隔絶してはいないが)非常に遠い伏見家、本来ならとっくの昔に臣籍降下している筈だったのに策を弄して宮家として存続し続けてきた伏見家への『王朝の交代』と殆ど同じ と 看做すべき事態なのではないだろうか。

 

 という訳で、女系天皇容認に反対するために「旧宮家を皇籍復帰させればよい」という考えは、「ドヤ顔」(:したり顔)するほどのものではない。

 

ーーーーー杉浦 憲二 (Sugíura Kenji) ーー sui generis ーーーーー

 

 

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