通称 México 又は、Mexico と書いて、
皆さんが、「メキシコ」 と 呼んでいる国
(そして我々スペイン語が判る者は「メヒコ」と呼んでいる国)
の正式の名前は、
Estados Unidos Mexicanos
といい、英語では、
United Mexican States
となる。スペイン語の直訳である。
( スペイン語の Estados Unidos は、
英語の United States に相当する )
世間の多くの人は、United States というと 即 米国を指すものと決め付けるが、
México も United States なのである。米国だけではないのである。
序でに言うと、United States 制を始めたのは、1581年、オランダ人であって、
米国は、唯一の United States でもないし、最初の United States でもない。
( 米国は、1776年、México は 1824年 )
で、México のことに話を戻して、この
西語正式名称 Estados Unidos Mexicanos
英語正式名称 United Mexican States
の日本語正式名称はというと、
メキシコ合衆国
なのである。
私は最初、これを知ったったとき、《 アチャー 残念 》 と思った。
丁寧に正確に言うと、
《 "Estados Unidos" / "United States" だったら、『合衆国』でなくて『合州国』だろ。
『米国』 "United States of America" のことを『アメリカ合州国』とせず
『アメリカ合衆国』とする奇妙な習慣が直されずに定着してしまった為、
México にまで、この間違いが伝染してしまったんだな。残念だ。 》
と思ったのである。
ところが、よく調べてみると、これが間違いであることが判った。
私は、
《 『米国』:"United States of America" を
『アメリカ合衆国』とするのはおかしい
『アメリカ合州国』とすべきである。 》
と、かねがね思っていた。
但し、同様のことを本多勝一も主張しているので、
しかもそっちはかなり有名なので、私としては、
本多勝一と一緒にされたくないので、黙っていた。
この、
《 『合衆国』は間違い、『合州国』が正しい 》説
のあらましは、
"United" = 『合』、"States" = 『州』
だから、"United States" は 『合州』となる。
『合衆国』としたのは、米国のことなら道端に落ちている犬の糞まで好きな人が、
米国が世界最大の大衆文化の発信国という憧憬の念を託し込んでおり、
いわば正確さを犠牲にした通俗的なもので、
正式名称を書くべきところでは、正しく『合州国』と書くべきである。
といったところであろうか?
本多勝一の言葉でいうと、以下のような表現になる:
『衆』は "people" に通じ、恰も様々な人民、様々な民族が
一つに解け合った理想社会であるかのような誤解を与えます。
加藤秀俊の言葉でいうと、以下のような表現になる:
アメリカという国は考えれば考えるほど不思議な国である。
とにかく、民族的に、世界中のあらゆる民族が、
なんとなくよせあつまってでき上った国なのだ。
本来は「合州国」であるのを、いつの間にか日本人が
「合衆国」というふうに書きかえてしまったのも、
大いに無理からぬことなのである。
あと、調べてみたら、以下のような、お堅い、アカデミックっぽい、
そしてそれ故に面白い説もあった:
米国は、一時、正式名称として、
"the Republic of North America"
と称していた時代があった。
その略語が、『アメリカ合衆国』である。
"republic" の訳が『合衆』 である。
( "republic" は、今では『共和国』と訳すのが普通だが、
この訳語が定着する前は、"republic" とは、君主のいない国、
民衆が力を合わせて国を運営してゆこうというレジーム
だということで『合衆』と訳した )
その後、"United Statues of America" に変わっても、
そのまま、間違ってずるずると使われ続けている
これは、一見、なるほど、と思ってしまうが、これも間違いのようである。
これらの考えが間違っていることを説明するのに、
まず、最初に、
『合衆国』ということばは、
--- 多くの日本人が誤解しているように ----
日本製の訳語ではない
ということから始めなければならない。
「朝鮮民主主義人民共和国」などに使われている「民主主義」という言葉は、
明治の日本人が "democracy" の訳語として創った言葉で、
「中華人民共和国」「朝鮮民主主義人民共和国」等に使われている
「人民」「共和国」という言葉も、明治の日本人が "people" "republic"
の訳語として創った言葉である。
両国とも、日本人のことがお嫌いのようであるが、自国の正式名称に、
日本人が創った言葉を使っているのは皮肉である。
その他にも、「遺伝子」とか「原子」「分子」「陽子」「電子」等の
科学用語・工学用語の多くが、今では、日本だけでなく、支那朝鮮等
漢字圏で広く一般に使われているが、元々は明治の日本人が創作した
言葉、というものが沢山ある。
そして、この『合衆国』ということばも、その一つ (:日本人が作った訳語)
だと、多くの日本人は考えているではないだろうか。
そこから違うのである。
『合衆国』(『合眾国』) ということばは、
マカオ在住の独人宣教師、
愛漢者(Karl Friedrich August Guetzlaff, 1803-51)
らをはじめとする、英米の対清交渉に活躍した中国語の達人である
通訳官によってつくられたもの、
だそうである。
ということは、どういうことかというと、
『合衆国』ということばの正否を問いたければ、
『合衆国』ということばはの中の『衆』の字に
どういう意味が込められているか、について考える際、
日本人が考える『衆』の字の意味ではななく、
支那人が、『衆』(若しくは『眾』)の字に
どういう意味を込めているかを考えなければならない。
ということになる。
日本人にとっては、『衆』という字は、「大衆」「民衆」等から、
《 多くの(複数の)人々の束、英語の "people" に対応するもの 》
と捕らえるが、
支那人は、『衆』(若しくは『眾』)の字を、
複数のもの (人間に限らない)
という意味で使う。
『衆人環視』とかの『衆人』なら、《沢山の人》 英語でいう "people" の意味となるが、
『衆』の字単体なら、沢山あるのは人のこととは限らない。
で、複数を意味する『衆』と "state"を意味する 『国』を並べた『衆国』は、
"states" (:"state" の複数形) を意味する語となる。
『衆国』 = "states"
また、『合衆』では「複数のものを合わせてひとつにする」という意味になり、
つまり『合衆』で "United" を意味する。
『合衆』 = "United"
つまり、
『合衆国』 は "United States" の直訳
なのであった。
《 『合衆国』は間違い、『合州国』が正しい 》
というのは、
《 『喫茶店』とは煙草を吸うところ、という意味だろ。なのに禁煙とはおかしい 》
と騒ぐ愚か者の主張と同じような間違いなのであった。