鳴かないうさぎが泣けた日 | 羊飼いの戯言

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作品の感想や雑感をつらつらと述べたblog

『うさぎ』は象徴的な動物です。声帯がないので鳴かないし音を立てない、でも言い換えれば『鳴けないし声に出すことができない』動物です。がみみちゃんを飼い始めた時から、『思いを声に出して好きなように訴えることができない無意識の自分』を投影する対象として『うさぎ』に心惹かれたのではないか、と感じていました。

 

 

キングレコードとの契約が終了し独立してcana ariaレーベルを立ち上げ、特に近年ではcovid-19禍でライブ活動ができなかった2020年を除いて、多くのライブ活動や楽曲制作をしてくれています。特に2023年~2024年は28か所の『with me』ツアーに22か所の『Honey bunny』ツアー。『Altoemion』と『You Are The World!』のEP2枚にミニアルバム『I love it♡』の制作で半年で18曲の新曲をリリースするなど、生き急いでいるのではと思わせる精力的な活動ぶりです。

 

 

自身の言葉を見ると
 

「自分ではこれがハイペースだとも感じていないんですよ」
「終わったら『楽しかったね。じゃあ次!』ってなっちゃう。きっと昔から、そのくらいのペースでやりたかったんだと思うんですよね。」

 

と前向きに語ってはいますが、その背後には

 

『田村ゆかり』の名前で活動しており、自分が中心であるというフロントマンとしての責任感
自分がゆかり組の中心として引っ張っていかねばならないというプレッシャー

 

を絶えず背負っていたのではないでしょうか。

 

もちろん
 

気心が知れたゆかり組のみんなであれば自分を支えてもらえるという安心感
ライブの現場でふぁんと顔を合わせることで、自分の存在が肯定・承認してもらえるという居場所感

 

が得られた側面もあると推測します。

 

 

そういった様々なファクターを天秤にかけて活動してきたものの、自身が年齢を経て緩やかに体が変化してきた、特に女性の場合にはライフステージの変化で体調が如実に変化していく時期でもあるので、知らず知らずのうちに身体的な限界を越えていた。でも目を瞑って前のめりに傾きがちな自身の気持ちに引っ張られて、体力的にはリミットを越えていたことに気づけなかった。後方視的に見れば、3月に体調を崩したのも実は黄色信号だったのかもしれません。でも

「しばらく体調を崩していて、初日もどうしようか悩んでいたのですが、立ち止まる勇気が持てませんでした。」
「楽しみにしてくれてるみんなと、一緒に歩んでくれているゆかり組のみんなの期待に応えたかった。」
「私の仕事は無理をしなければいけない仕事だと思っています。」
「私だけが特別ではないのだけど、私は立ち止まることができませんでした。」

 

という言葉が表していると思います。

 

 

今回06.02の八王子公演2日目は延期になりました。「のどの不調で長時間の歌唱が困難」なため延期という発表がなされましたが、その後ののdiaryにつづられた言葉を読んで、これは一種の『アクティング・アウト』だと解釈しました。
と同時に、自身がようやく自分の状態をメタ的に省察し言葉にして『語る』ことができたこと、『鳴かないうさぎが泣けた』ことが大きな変化だと考えます。確かに、金銭的な面や業務調整など多くの方面で影響を与えるのは事実でしょう。でも、いつの日か視点が転回して、この出来事はの長い人生における大事な意味のある『アクティング・イン』だったのだ、現実社会という枠組みでは公演を延期したり仕事に影響が出たりと『アクティング・アウト』に見えたけれども、が自分の抑圧してきた感情や想いを『ゆかり王国』の活動という安全な箱庭の中で表現することができた結果の『アクティング・イン』だったのだと捉え直して、ご自身の活動や生き方を見つめ直すきっかけとなるのではないかと考えます。

 

 

そして、そういう山あり谷ありで決して平坦ではない生き様を共時的に見せてくれる、我々に見守らせてくれることに、王国民として感謝する次第です。

 

とグダグダと書きましたが、何より自身が荷を下ろしてゆっくりと休まれることを願います(浦安、栃木もお休みが取れるようでよかったです)。これが終わりではなく、続きがあるのですから。

 

(追記:上記のように書きたくなる、知性化して整頓したくなるのが自分の性ですが、それだけ管理人自身も揺さぶられたものがあったのだろう、と家内と話していて(SV(笑)?)気付きました。)