#がん悪液質
森永卓郎さんは体重減で56キロに…「がん悪液質」で痩せない生活改善を/ゲンダイ
●悪液質に対処して体重減少を防ぐ→生存率改善
●早期対応で悪液質食い止る→運動・食事・薬物の集学的治療
●アナモレリンはもっと使われてよい 他
先日、ナショナルジオグラフィークの記事で、メタボリックシンドロームとがんの関係性ということで、特に代謝の観点からがんについて色々と言及されていました。
がん治療と言えば、今や先端を行くのは遺伝子トピックで、これをいかにするかが重要なポイントです。
それだけではなく、代謝も大きく関係しているよというのがあの記事でした、ざっと言えば。
このがん悪液質もまた、やせ細ってしまう、という現象から捉えてみても、代謝が大きく関係していることは間違いなく、がん細胞に好きにエネルギー代謝させないことが、早期から対策されるべきということなのかなという感覚を持ちました。代謝対策です。
がんを持ったままどう食べるか運動するか。
これによって、がんに栄養は与えずに体には与える手法、要はこれが求められるところかと思います。
中川先生の仰せでは、悪液質は、言わば早期・中期・晩期というような進行を辿るようです。それは前悪液質、悪液質、不応性悪液質で、不応となれば抗がん剤が効かなくなってしまうとのことです。
ですから、早期のうちに手を打っていくべき、とのご主張ですが、実のところこれがなかなか曲者で、ただ痩せないように高カロリーのものを次々と摂取するというような事では進行が止まらないようです。
だからこそ、集学的(栄養・運動・薬物)な対応が必要なのです。
鳴り物入りのような扱いで取りざたされた悪液質対策の薬物「アナモレリン」ですが、これがあまり使われていないようですね。
それにはその理由があるはずですが、一つは、保険診療上の適応範囲にあります。どちらかと言えば、悪液質対策として”次なる手段”とか”残された手”的な運用とされているようです。
素人目には、もうちょっと適応範囲を広げて、前悪液質段階から使えるようにしてはどうか、とも思うのですが、薬物ですから、事はそう簡単ではないでしょう。
またそもそも、悪液質の症状が現れているかどうかも、前悪液質段階では患者さんが判断しにくいということもあるかも知れません。
そうなってくると、やはり悪液質はがん患者にあるものという前提の下で、全ての患者さんに対して早期から集学的治療に取り組むべき、と言えるように思います。
ここで素人目にやはり、やはり思うこと。緩和ケアの早期導入の重要性です。
まだ身体症状に乏しい時点から、緩和ケアの領域で、悪液質ありきで対策出来るようにすることです、例えば。
それから、切除手術はうまく出来て経過観察中というような、治療が順調な方への緩和ケアの積極介入も大事ではないでしょうか。
その場合ですと、悪液質対策というよりは、リハビリの範疇で食欲増進が期待されるアナモレリンを使えないのか、などの議論も出て来そうです。
いずれにしても悪液質対策の薬物の適応範囲の拡大が実践課題となってきそうで、それには当然高いレベルのエビデンスが求められます。
食事については、栄養学的なアプローチとなってきますが、食効レベルでの検討も必要ではないでしょうか。
というのは、慢性炎症が生命予後に関連していることがわかってきているということもあり、これと体重減少の因果関係も明らかになっているからです。
この慢性炎症を誘導するような食もあれば、発酵食品などのように、いわゆる腸活からそれを抑えることが出来るとされるようなものもあります。
がん患者さんに「食べたいものを何でも食べるべき」に異論はないのですが、早期介入という点ではその限りではなく、もっと食が与える身体への影響は考慮されるべきだと思います。
運動については、これはとりあえずやった方が良いものです。
どんな運動をすべきかについては、年齢、体力レベル、運動歴なども関係してきますから、加減が必要です。
これらを俯瞰してみると
悪液質対策はまだはっきりと身体症状があらわれていない早期から導入すべき・それは緩和ケアで導入していくことがスムーズそう・薬物の適応範囲は拡大されるべき、これらに加えて、個別医療的に進めるべき、ということも含まれてくるように思いました。
がんは誰もが罹る可能性のある病で完全なる予防法はありません。
しかし、代謝が関連するからには、予防の延長線上に治療効果の改善が図れるものとして、この悪液質対策にもつながってきそうに思えます。
薬物はさすがにがん予防段階から積極的に使用を考慮に入れることは出来ませんが(メトグルコとかはかなり考慮されてますが)、食事や運動は、がん治療のための事前準備と考えても良さそうです。