PANTERAがテキサスの怪物ならWATCHTOWERは裏の怪物、PANTERAのような大人気になったりメタル史に大きく名を残すようなバンドにはなれなかったが、凄みでは負けてない。

 

 

WATCHTOWER

 

 

82年にテキサス、オースティンで結成される。結成時はジェイソン・マクマスター(Vo)、ビリー・ホワイト(G)、ダグ・ケイザー(B)、リック・コラルカ(Dr)の4人。地元でのライブ活動、83年、84年に制作したデモテープなどが評判となって85年に1stアルバム発表。

 

ENERGETIC DISASSEMBLY

 

 

BURRNでレビューされ日本でも輸入盤市場で話題になる。ただし初めて聴いたのは2nd、1stのオリジナルは入手できなくて買えたのは確か2000年代の再発盤。だから聴いたのも割と最近。

2ndで度肝を抜かれた者なら同様に興奮できる、なんなら難解すぎた2ndより生々しさがあっていい。まだ普通のメタルの要素が残ってる。ジェイソンのVoの方がこのバンドに合ってるような気もする。

しかし発表後、Gのビリーが脱退してしまい活動停止を余儀なくされる。ビリーは後にDON DOKKENでの活動で日本でも広く知られるようになる。

 

 

2年の空白期間を経て87年、ようやく後任としてロン・ジャーゾンベクが加入。同じテキサスのバンドであるS.A. SLAYERでGを弾いていたロン、RIOTのマーク・リアリがNARITA結成の際、S.A. SLAYERのメンバーを引き抜いたためS.A. SLAYERは解散(RIOT再結成時にもいたBのドン・ヴァン・スタヴァーンは元S.A. SLAYER)、残されたロンがWATCHTOWERに参加することとなった。ロンはRIOT、JUGGERNAUT、HALFORDなどでの活動で有名な名手ボビー・ジャーゾンベクの実弟。

 

再びデモを制作し活動を本格化しようとした矢先、今度はVoのジェイソンが脱退、再度動きを止められてしまう。ジェイソンは当時流行りのガンズタイプのR&RバンドDANGEROUS TOYSを結成、メジャー契約を獲得して大成功した。

WATCHTOWERの評判はすでに広く知れ渡り、契約の話もあったがジェイソンの脱退で流れてしまった。

 

89年、ようやくドイツの大手NOISE INTERNATIONALとの契約にこぎつける。「DOOMSDAY NEWS 2」に “Dangerous Toy” が収録された後(Voはこの時期短期間在籍したマイク・ソリス)、

 

DOOMSDAY NEWS 2

 

 

2ndアルバムを同年に発表。聴いたのはこっちが先。

 

CONTROL AND RESISTANCE

 

 

新Voは元HADESのアラン・テッチオ。

スラッシュメタルが進化した最終形態の一つ。これ以上進化するとスラッシュである意味が無くなって別の物になってしまう。高度なテクニックと複雑な曲構成、それらを相反するスラッシュメタルの原始的な暴虐性とをギリギリで融合、MEGADETHを始祖としたインテレクチュアルなスラッシュメタルはこの辺りが限界だったのではないかと思う。これを超えるとどんどん退屈になってくる。個人的な好みではあるが。

同様のテクニカル/プログレッシヴスラッシュの究極進化形であるMEKONG DELTAがクラシックを基礎にしているのに対し、こちらはもっとジャズっぽい感じ。異常に複雑な曲構成はつぎはぎ感があって伝統的なメタルの様式とかがあまり感じられない、逆に何が起こるのかわからない変な緊張感がある。一般的なメタルのスリルとか緊張感とは全然違うような気がする。

一番普通のメタルっぽいのはVo。GもBも凄いけど特にDrが変態、メタルのドラマーでこんなの聴いたことない。

 

 

爽快感とかカッコいいじゃなくてどっちかっていうと聴いててイライラするほど、MEKONG DELTAもそうだったがそれでもその気持ち悪さがだんだん気持ち良くなってくる、そんな錯覚起こすみたいな。自己満足なアドリブソロは退屈なだけだが、構築されたバカテクやメロディには感動したりをスリルを感じるみたいな。

オープニング “Instruments Of Random Murder” の気持ち悪い気持ち良さは異常。スラッシュメタル特有の後ろから追いかけられるような恐怖感や緊張感もしっかりある。

 

93年に解散、2000年代にアランと再結成したりジェイソンとも再結成したりしてる。2002年にデモ音源集「DEMONSTRATIONS IN CHAOS」、2016年に新作EP「CONCEPTS OF MATH: BOOK ONE」を発表、ここで歌うのはアラン。2023年から再びジェイソンと一緒に活動しているよう。他の3人は変わらない。

 

 

“Instruments Of Random Murder”

 

“The Eldritch”

 

“Dangerous Toy”

 

"Violent Change"

 

"Meltdown"