コロナでメタル者が思い出すのはこれ。

バカの音楽であったスラッシュメタルに技巧、インテリジェンスを持ち込んだMEGADETHを祖とするインテレクチュアルスラッシュ、ジャズ/フュージョンをも取り込み複雑な曲展開を難なくこなす演奏力は、下手でも出来たパンク直系のドカスカスラッシュから別次元の物になった。
多くのフォロワーが生まれ高度な音楽性を持つバンドも数多く登場したが、なんでも行き過ぎると飽和状態となる、巧いだけでつまらんのが多かったのも事実、一流どころ以外は淘汰されていく。
そんなシーンの中でも特に好きだったバンド。


CORONER


流行りの伝染病とは関係ない、ストーブとも違うし昔あった車の名でもない。コロナワールドとも関係ない。ビールも違う。太陽のメラメラした部分をコロナというがあれはCORONA、コロナーとは検死官のことだ。

スイス、チューリッヒ出身、83年にCELTIC FROSTのローディーをやっていたと言われるDrのマーキス・マーキーを中心に結成される。
デモを製作しつつ、Gのトミー・T・バロン、Vo&Bのロン・ロイスらの最も知られた編成となって、CELTIC FROSTと同じNOISE RECORDSと契約、87年にデビュー作を発表。


R.I.P.


デビュー前から話題となっていたCORONER、その噂に違わぬ超強力作。新人の1stとは思えない。いきなりそれまでいたテクニカル系スラッシュバンドを無意味に、インテレクチュアルスラッシュメタルの完成形といっても過言ではないほどの傑作。スリル、パワー、アグレッション、テクニック、曲展開、耳を惹くフック、各所にキャッチーとも言えるメロディも絶妙に仕込まれそのバランスが見事、核融合的な恐ろしいまでの緊張感を生む。
演劇や映画が始まるかのようなイントロからの “Reborn Through Hate”、そして3曲目の インスト “Nosferatu” までの流れで完全にKO、あまりにも劇的な “Nosferatu” に当時震えたことを覚えているよ。映画音楽に使われても不思議ではないなと。スラッシュメタルなのに。



これは一つのスラッシュメタル究極完成形。好き嫌いは別にして、これ以上はなかなかない。
日本盤もVAPから発売された。

88年、2nd。


PUNISHMENT FOR DECADENCE


1stが死ぬほど好きだったから当然2ndも即買い、後に日本盤も出たがそんなの待ってられん、輸入盤屋に注文。そしたらこれが来た。同じNOISEからの発売なのにCDはこんなジャケ。こっちを期待してたのに。。



1st好きなら不満の出ようがない、ただ大仰さがちょっと下がって冷めたインテリ感というかクールさが強くなった。それはPVにもなった2曲目 “Masked Jackal” の印象によるものだろう。超名盤である1stを超えてはいないが、CORONER好きなら十分納得、かえってスラッシュ好きならこちらの方が気負わずに聴けるかもしれない。
ジミヘンの “Purple Haze” のカヴァーも収録。その7インチシングルをたまたま見つけて買ったこともあった。


PURPLE HAZE / MASKED JACKAL


89年、3rd。


NO MORE COLOR


初期CORONERの完成形。1st、2nd、3rdと流れているものが同じような、三部作的な纏まりがある。彼らの世界観は常に暗く、かといってそんなに地味でもないような、いや、地味だけど聴き様によってはこんなに派手な音楽はないような。。やはり彼らの音楽には演劇的な、どこか映画音楽を聴いてるような感覚、しかもあんまり嬉しくない情景が浮かんでくるような気がする。それはジャケのイメージによるものなのかもしれない。



NOISEのオムニバスシリーズ「DOOMSDAY NEWS 2」に未発曲 “Hate, Fire, Blood” を提供、


DOOMSDAY NEWS 2


90年、東ドイツで開催されたNOISE主催のスラッシュイベントに参加、そのオムニバスライブCDや、単独ライブビデオなども発売された。


DOOMSDAY NEWS III - THRASHING EAST LIVE



NO MORE COLER - LIVE IN EAST BERLIN


同時期に出たこれには “Last Entertainment” のPV収録。


DOOMSDAY NEWS - THE VIDEO COMPILATION VOLUME 2


どちらもテイチクのMETAL MANIAレーベルから日本盤も発売、それを買ったからこんな帯も付いてる。



91年の4th。


MENTAL VORTEX


ここから音楽性が少々変わる。暗さや不気味さは維持されているが一層無機質になって、だんだん減ってきていたキャッチーさが完全に失われてしまったように思う。もちろんCORONERらしさはあるが暗さや地味さが強調されすぎて退屈になって来た。ということはスリルや緊張感も失われつつあるということだ。悪い意味での煮詰まり感というか。。
メロディの重要な部分を担っていたトミーのギターソロも似たようなフレーズが多くて、その効果を生んでいない。起伏に乏しい退屈なアルバム。
6曲目の “Pale Sister” なんて良いフレーズが連発されてて、もっと良くなりそうなのに。。
ラストのビートルズのカヴァー “I Want You (She’s So Heavy)” が一番耳を惹くのは問題だと思う。無機質で地味なくせに変なファンキーさと言うか、サイケデリックな要素が強くて聴き辛い。

93年の5th。


GRIN


不快なジャケ。民芸品かなんかの嫌なニヤニヤを気に入りジャケに採用したとか。
そういや2nd以降のジャケの黒帯、これは日本のレコードの帯の真似だとインタビューで見た記憶がある。CORONERのアルバムと一目で分かって良いと思う。
。。とここまで書いて探したが見つからない。なんでだ。もちろん当時買って聴いたことはあるのだが。。これだけどこ探してもない。聴こうと思ったのに聴けない。だからジャケ写はネットからの借り物。
覚えてる限りでは4th以上に無機質な、インダストリアル感さえあるようなあまり好きになれないアルバム。

ここでNOISEとの契約終了、契約履行のための新曲を含めたコンピレーションを95年に発売、


CORONER


この時点でバンドはすでに解散していたそうだ。
トミーはKREATORに加入し2枚のアルバムに参加、2000年代になって再結成するが、オリジナルメンバーであるマーキスが脱退、新ドラマーを迎えて現在も活動中。



そういやマーキスがプロデュースしたフランスのNO RETURN、確か1stだったと思うがCORONERと似た音楽性の優れたバンドで、こちらも当時好んでよく聴いていた。
ギターリフがカッコよくて後期CORONERよりずっといい。



“Intro / Reborn Through Hate”


“Nosferatu”


“Die By My Hand”


“Masked Jackal”


“Purple Haze”


“Last Entertainment”


R.I.P.R.I.P.
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No More ColorNo More Color
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MENTAL VORTEXMENTAL VORTEX
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CoronerCoroner
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