デス系、ブラックメタル系が嫌い(もちろん良いバンドがあることは認識しているし好きなのもある)にも関わらず一時はまっていた。新譜や新しいバンドを追いかけなくなっていたこの時代「買う!」と強く思わせてくれた。
イメーシやルックスは完全にブラックメタルなのに知ってるそれとは音楽性が全く違う。スラッシュメタル創成期、まだスピードメタルと言われていたあの時代のとても懐かしい音で、そういうのが好きな人には直撃ストライク、初めて聴いた時、懐かしくて泣けてきたほど。


BEWITCHED


スウェーデン、ウーメオで95年に結成された4人組。
その手のは詳しくないから分からんけどKATATONIAとかNAGLFARとか有名ブラックメタルバンドのメンバーによって始められたと記憶している。96年の1st。

bewitched
DIABOLICAL DESECREATION


最初から分かっていた、言ってみればMETALUCIFERのような本職のブラックメタルをやっていたメンバーが別プロジェクト的に始めたのがこのBEWITCHEDで、だからある意味ジョークバンド、その音楽性はわざとらしく古典を狙ったものだ。
でもそれが完璧すぎて文句の付けようがない。あの時代を知っている者ならそのわざとらしさにさえ興奮させられる。
VENOM、EXCITERCELTIC FROSTなんかが好きなら気に入らないはずがない、完全にツボを狙ってくる感じ、ドカスカメタル好きの秘孔を突いてくる。

bewitched2

この単純さ。バカテク難解なメタルもそれはそれでいいが体中を電流が走るような、まず最初に理性が飛ぶ感じ、これこそがスピードメタルの醍醐味、好き者なら1曲目の “Hard As Steel (Hot As Hell)” で頭が勝手にヘドバンを始めること請け合い。この粗さや雑さがたまらない。ほどよく隙間のあるところが。久しぶりに聴いて鳥肌が収まらん。

97年の2nd。

bewitched3
PENTAGRAM PRAYER


前作も最高だったがそれを吹き飛ばすほどの傑作。
よっぽどメタルが好きじゃないとこんなアルバム作れない。爆裂バカメタルが好きじゃないとこんな傑作作れない。
オープニングの “Blood On The Altar” から “Hallways To Hell” への流れが完璧すぎて死ねる。
次の “Demondawn” も最高。続く “Night Of The Sinner” のリフも好きすぎる、CELTIC FROSTのトム・G・ウォーリアーの得意技だった「ウッ!」も随所に炸裂。たまらん。
ギターソロがツボを突いてきすぎて苦しい。5曲目の “Satan’s Claw” のギターソロには参った。ラストのタイトル曲以外、全曲最高。最後はどよーんとした呪文みたいな曲だから。
どの曲もギターリフが耳を惹く。7曲目 “Beastchild” のサビのリフなんて完璧すぎるだろ。やかましい音楽なのに超キャッチー。耳大喜び。リフはヘヴィなほどいいと思ってたら大間違い、高音リフのカッコよさを思い知るがいい。チューニング下げなくても、ノーマルチューニングでも死ぬほどカッコいいリフが作れる証明になってるよ。

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ドカスカバカスピードメタルの傑作。バカバカしいことを死ぬほど真剣やるとカッコよくなる典型的な例。これも久しぶりに聴いて鼻息が荒くなるほど興奮した。
雑な音楽なのにメロディや曲構成など、しっかりこだわって制作されていることが分かる。ギターの音色なんてまさにそう、相当こだわりがないとここまで懐かしい音にできないよ。演奏技術も相当高い。そのこだわりがわざとらしさを上回っているから聴く側も承知で楽しめる。

1stと2ndの間、96年にカヴァーアルバムも出している。

bewitched5
ENCYCLOPEDIA OF EVIL


この収録曲見れば一目瞭然。VENOM、BATHORY、MERCYFUL FATE、CELTIC FROST。。だからそういうの好きな者が興奮するのは当たり前。VENOM直系の初期SODOMやDESTRUCTION、KREATORとかが好きでも確実にこのBEWITCHEDは気に入ると思う。

98年にライブアルバムを出した後、99年の3rd。

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AT THE GATES OF HELL


2ndが最高だったから買ったが個人的には前作までかな。2ndが良すぎて以降はあまり聴いていない。
このCD、デジパック仕様でPOSSESSEDみたいに真ん中から開くようになってる。どっちも「GATES」ということで。

改めて聴いたらやっぱいいな。路線は同じ、キャッチーすぎるドカスカメタルは健在、ジャンル的にはブラックメタルスタイルのスピード/パワーメタルなのだが、このキャッチーさはTWISTED SISTERとかW.A.S.P.とか恐らくそういうところも通ってきているからこそのキャッチーさなのではないかと思う。メロデスのチルボドもそういう部分を隠していなかったから。どんな過激な音楽でもフックがなくては無意味。

だがずっと同路線であるが故の衝撃が弱くなってきてるような気もする。メロディを意識しすぎて過激さの部分が弱くなったような。2ndの最高のバランスが僅かにずれてしまったか。バカっぽさがなくなって、ちょっとこぢんまりしてしまったような印象。
マニアックなTHORの名曲 “Let The Blood Run Red” のカヴァーなんて演ってて、確かソア本人もVoで参加していたはず。

2002年の4th。

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RISE OF THE ANTICHRIST


1曲目がCELTIC FROST丸出し。
前作と逆にメロディアスな部分を減らし、ドカスカで過激な部分を強調した感じ。でも路線はこれまでと同じだから少々ワンパターンにはまりつつある。邪悪さは申し分ないがキャッチーな部分がちょっと弱い。すでにBEWITCHEDに取り憑かれた者なら大丈夫、十分満足できる完成度。2曲目の “Under Satan’s Spell” なんて最高にカッコいい。
同じ路線ながらアルバムごとに僅かにバランスが違っている。ただもうこれ以上この路線で行くのは苦しいかもしれない。だんだんどれ聴いても同じになってきてるから。

bewitched8

持ってるのはここまで。
2004年にEP、2006年に5th「SPIRITUAL WARFARE」を出した後、姿を消す。解散したのかそれぞれ本職のバンドに戻ったのか、詳細は不明。

新しいバンド、新譜を追いかけなくなっていた時代、かといってわざとらしい原点回帰バンドもあまり好きになれなかった、そんなときにこのBEWITCHEDとNOCTURNAL BREEDは積極的に聴いていた。こういうバカバンドはいつの時代にも必要だ。



“Blood On The Altar”


“Hallways To Hell”


"Satan's Claw"


“Beastchild”


“Hard As Steel (Hot As Hell)”


“Under Satan’s Spell”


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