週刊メタネタ。
そのうち月刊になって季刊になって廃刊になるだろう。

カナダのバンドを紹介するときいつもカナダらしさということを強調して書いているが、もちろんそういうバンドばかりがいるわけではない。特にカナダらしさのないというか、いつも書いてるような大陸的とか壮大とかそんなことを感じさせない無国籍なバンドももちろんいる。
今回紹介するのも書くときに思い出したぐらい、ああ、そういえばカナダだったなって。そんなに思い入れがないのもあるが、彼らの音楽に別にカナダらしさは感じない。アメリカの田舎のほうの出身って言われても全然普通に納得する。


THOR


この単語は日本では色んな読まれ方をする。トール、ソール、ソー、ソア、ソアー。。北欧の神話の神様、雷神とか戦の神とかそういうの。メタルの世界には剣や騎士、神話やファンタジーの世界、そしてそれらに共通して付き物である筋肉がよく似合う。そういったイメージやジャケのバンドはこれまでに星の数ほどあったはずだ。
いつぞやのジャケ展で紹介したのもそんなバンドのほんの一部、シュワルツェネッガーのコナン・ザ・グレートなどのイメージはまさしくそういったメタルの世界と共通する物であり、力強さを強調するためにそういうジャケを使ったり衣装を着たりするバンドも多くいた。
しかし筋肉だけはなかなか簡単に身に付けられるもんじゃないから、強そうな衣装を纏っていてもひょろっとして力強さに欠けていたのが多かったのも事実、MANOWARはそれを再現出来た数少ないバンドだと思う。

そこで今回登場するのがMANOWARさえ裸足で逃げ出すほどの超強力ボディの持ち主THOR。
ヴァンクーヴァー出身のソアことジョン・マイクはミュージシャンになる以前からボディービルダーであったらしく、デビュー前からその世界では有名な存在だったようだ。
そんな彼がロックに目覚めバンドを結成、78年に「KEEP THE DOGS AWAY」でデビューする。


KEEP THE DOGS AWAY


このアルバムは当時日本でも発売されていて邦題は「怒りの雷神」、アーティスト表記は「ソー」であった。
凶暴なドーベルマンを引く強力ボディのソア。凄いジャケ。インパクトありすぎ。しかしまだNWOBHM勃発以前のアルバム、ジャケの力強さとは対照的に音楽的には軽めのロックンロール、古くさいグラムロックといっていいほどの軽薄さで、それほどメタリックな印象は感じない。でもこの時代の能天気なロックとして聴けば別に悪くないと思う。

83年に6曲入りのミニアルバム「UNCHAINED」を発表、しかしこのころはまだ日本ではほとんど話題になってなかったようで当時は知らなかった。
日本で知られるのはこの作品によって、1stから7年の時を経ての85年の2ndアルバム。


ONLY THE STRONG


本国ではRAZORなんかも出していたVIPER、日本でもあのFEMSから発売された。
ジャケからも分かるように完全なメタルバンドになった。大仰なイントロ、重厚なナレーション、音楽的にもMANOWARに共通するような過剰にドラマティックで暑苦しいメタルをやるようになった。残念ながら楽曲の質はMANOWARに遠く及ばないものの進むべき方向は正しくなったと思える。
よく聴くと曲自体は単純でイントロからの "Only The The Strong"、代表曲である "Let The Blood Run Red" などはマイナー系のUS正統派メタルに通じる感覚で楽しめる。"Thunder On The Tundra" やラストの "Ride Of The Chariots" なども普通に良い曲だと思う。
バンドイメージも完璧、もう1人のVoである女性(単にバックVoだと思うが)パンテーラは確かソアの彼女だったか奥さんだったんじゃなかったかな。

thor3

このころB!誌にもよく取り上げられていたから見たことある人も多いはず。

同時期に出たライブアルバム。
85年と書いてあるから2ndと同じ年に出てる。


LIVE IN DETROIT!


ジャケにあるようにステージで水まくらを膨らませて割ったり鉄棒を曲げたりといったパフォーマンスを行っていて、日本ではこういう部分が強調されて紹介されてたからギャグ扱いされることが多かった。それを上回るほどの楽曲の質が高ければいいんだけどそんなに大した曲もなかったし。ソアの歌も下手だし。だからMANOWARと違って日本で人気が出ることもなかった。
以降日本で名を聞くことは無くなったが、地道に活動は続けていたようで何枚もの作品を発表し続け、途中JON MIKL THOR名義やTRITONZ名義のアルバムもあるものの現在もバンドは存続している。

久しぶりに彼の名を聞いたのはスウェーデンのブラック/スラッシュメタルバンドBEWITCHEDの99年のアルバム「AT THE GATES OF HELL」、そこでTHORの代表曲 "Let The Blood Run Red" をカヴァー、なんとソア本人も参加している。
ま、最初にも書いたようにそこまでこのバンドに強い思い入れはない。聴いたのも10年以上ぶりじゃないかな?



"Only The Strong"


"Thunder On The Tundra"


"Let The Blood Run Red"


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