日本を代表するメタルバンドLOUDNESSに二井原実の後任として加入し「SOLDIER OF FORTUNE」という名作を残した。
その後イングヴェイのバンドに参加。2枚のアルバムで歌い武道館のステージにも立つなどの大出世を遂げる。
しかしイングヴェイの嫁に手を出して即刻クビになる。
(嫁も叩き出されたらしい)
自らのプロジェクトMVPでアルバムを発表したり、いろんなバンドに参加したりと積極的に活動を続け、現在はアニメタルをやってるんだったかな?

当時、誰が彼の辿るこの数奇な運命を想像し得たであろうか?彼の名はマイク・ヴェセーラ。彼がメタルの世界に初めて登場するのは、このバンドによってだった。


OBSESSION


コネチカット州ニューヘブン出身の5人組。81年に4人で結成され、Vo募集の広告によって加入したのがマイクだった。83年に制作したデモの1曲 "Shadows Of Steel" でMETAL BLADEの新人発掘シリーズ「METAL MASSACRE」の2に参加、好評を得て同レーベルから4曲入りミニアルバム「MARSHALL LAW」でデビューする。


MARSHALL LAW


強力なジャケ、コンセプトは悪くないのだが、絵がヘタすぎて泣ける。高校のころ美術の授業でこんな絵を描いた覚えがある。これはなんとかいう遠近感を出す図法だ。真ん中の点に線を集中させる描き方。
調べたら分かった。一点透視図法だ。そうそう、消失点ね。
にもかかわらずちっとも遠近感を感じない強烈な絵。



ルックスも悪い。いかにも田舎のバンドって感じ。
マイクが1人で頑張ってる。内容も一般的には全くお勧め出来ないが、それは大丈夫、一般人はこんなジャケのレコードを買ったりしない。買うのはクサレメタル好きだけだ。それなら充分お勧め出来る。1曲目の "Only The Strong Will Survive" のカッコよさに興奮するだろう。
音質の悪さや稚拙な面も多々あるが、そんなことを気にしてたらマイナーメタルは聴けない。正統派USパワーメタルとして楽しめる。

長い沈黙の後、86年にようやくフルアルバムを発売。


SCARRED FOR LIFE


待った甲斐はあった。実際このバンドを知ったのはこのアルバムが最初だったのだが、確実に成長している。
メジャーではないものの、かなり大手のENIGMAと契約(METAL BLADEはENIGMA傘下でもあったし)あらゆる面で質が上がっている。必要以上に外部の影響を受けず、田舎で純粋培養されたのが良かったのかもしれない。
JUDAS、MAIDENを正しく継承する超正統派、LAのような軽薄さは皆無、技巧や破壊力のみに走ることなく正統派メタルとして良い作品を追求した結果がこれであったならば、彼らの進んだ道は非常に困難なイバラの道ではあるが間違ってはいない。



イントロに続くアルバムタイトル曲 "Scarred For Life"、派手さはないものの正統派メタル好きを唸らせるフックやツインリードの妙、そして真っすぐなマイクのVoが冴える彼らを代表する1曲。やや時代遅れ感があったのかもしれないが、こういうアルバムを良いと思えなければメタル者である意味すらないと思うのだ。
地味であっても彼らのやっていることは間違いなく本物。個人的にはA面ラストの "Bang 'Em Till They Bleed" のギターソロが激しい興奮を呼ぶ。

続いて87年には2ndフルアルバムを発表。


METHODS OF MADNESS


このアルバムは日本でも発売された。邦題は「狂気の方程式」。
日本発売を決めた理由が分かる。前作を桁違いに上回る超強力作品。全く方向性を変えずに全ての面で激しい成長を遂げた。もはやメジャークラスに引けを取らない。同時期の主流に比べてのマイナス面は正統派であることのみ。彼らはヘアメタルの道を選ばなかった。あくまでもメタルのプライドにこだわって強力なアルバムを作り上げたのだ。
なにより曲が良い。前作ではやや曲のつまらなさやメロディの弱さをを感じたが、それを完全に克服、全曲に強力なメロディのフックを持たせ、鍛え上げたOBSESSION流の正統派メタルに融合させることに成功した。彼らの最高傑作。



BURRN!のレビューでさこた女史が「METAL CHURCHの強力なライバル出現!」と絶賛した気持ちがよく分かる。
LOUDNESSやイングヴェイでマイクを知ったファン、さすがにそれらより高品質とは言えないが、正統派メタル好きならこちらのが気に入るんじゃないかと思えるほどで、マイクのをルーツを知りたければ必聴。若く真っすぐな歌声が硬派で良いメロディによって一層冴え渡っている。マイクの声は間違いなく正統派メタル向きの声だ。
PVにもなった3曲目の "For The Love Of Money" はメタルPVの定番である炎と意味不明な踊る女、そしてバンドのパフォーマンスによるドラマティックな名曲。

名作を残したもののバンドは消滅。
これはマイクがLOUDNESSに加入したためか、あるいはそれに関係なく解散してしまったのか不明だが、もう他のメンバーは音楽を諦めてしまったのだろう。
マイクは他の活動と平行してOBSESSIONも再結成させてアルバムも発表しているが、そこにマイク以外のオリジナルメンバーは1人もいない。



"Only The Strong Will Survive"


"Bang 'Em Till They Bleed"


"For The Love Of Money"


"Panic In The Streets"


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