車でも聴きたかったから改めてCDを買った。前にメタネタでやってるから重複するかもしれないけど、今回は特にこのアルバムについて書きたい。

スパニッシュメタルの帝王、スペインの国民的英雄バンド、BARON ROJOの確か5枚目のアルバム。日本ではもはや知る者も少ない、NWOBHM期からのメタル好きなら名前ぐらいは聞いたことあるかもしれない。
カルロスとアーマンドのカストロ兄弟を中心に80年に結成され81年「LARGA VIDA AL ROCK AND ROLL」でデビュー以来、数多くのアルバムを発表つつ現在も活動を続ける偉大なバンドだ。
彼らの代表作と言えば当時日本でも発売された2nd「VOLMEN BRUTAL」(邦題は「炎の貴族」)や3rd「METALMORFOSIS」のほうが有名なのだが、この87年の5th、最高傑作(個人的に)でありながら日本盤が出なかった。リアルタイムじゃないから当時の詳しい状況は知らないが、このアルバムも代表作や名盤と言われている「VOLMEN BRUTAL」「METALMORFOSIS」が霞むほどの傑作。


BARON ROJO / TIERRA DE NADIE


もうこのころすでに日本ではBARON ROJOのことを覚えているメタルファンも少なくなっていた。自分も当時中古盤屋で見つけて「おお!こんなアルバムが出てるのか」と初めて知って買ったぐらいだから。それぐらい情報は無かった。そしてなんの期待もなく聴いたこのアルバムにぶっ飛ばされることになる。

スピードロックからポップでメロディアスな明るい曲、そしてドラマティックな大曲や劇的バラードと非常にバラエティにとんだアルバムだが、全てにBARON ROJO印が付いていて散漫な印象は全くなく作品としての統一感は十分に保たれている。
ずっこけるような1曲目 "Pico de oro"、笑える、あるいは聴く気がなくなるようなオープニングに騙されてはいけない。曲自体はスピード感あるクールなドライヴィングロック。頭3曲はどれも良い曲ではあるが、明るめの能天気なハードR&Rが続く。
そして4曲目。アナログではA面ラスト。バラードと言うにはあまりにも劇的、それまでの雰囲気を一変させる超絶名曲 "Tierra de nadie" が炸裂する。この強烈な1曲が徹底的に涙をしぼり取った。スペインメタル史上に残る名曲中の名曲。
その余韻に浸りつつB面へ。再び "Senor inspector" で明るいR&Rのノリを楽しんだ直後、これまたドラマティックな必殺曲 "Sombras en la noche" で悶絶。もはや起き上がれないほどの衝撃を受ける。
ギターソロ後の静かなパートでは、荒野で空を見上げながら涙を流しているような、そんなイメージさえ浮かぶ。
続く "Pobre Madrid" もそれらに引けを取らない名曲。

全曲解説してるとまた異常な長文になってしまうから止めておくが、こんな素晴らしいアルバムが日本で全く知られていないというのはあまりに不幸、バンドにとっても日本のメタル好きにとっても。
さっそく今日、通勤時に車で聴いていたが涙で曇って前が見えないほどだった。ま、それは大げさだが、それぐらい言いたくなるほど好きなアルバム。

クサいメロディにスペイン語の巻き舌バンバンの古くさいHR/HM、演歌的とさえ言えるほどの過剰な劇的さ、冷静に考えたらこの世にこれほどダサい音楽はないから普通の音楽好きや少しメタルを好きってぐらいではこんなの聴いてられないと思うけど、なにか惹かれるものを感じた人は必聴。"Tierra de nadie" と "Sombras en la noche" の2曲の強烈さに震えるはずだ。



"Pico de oro"


"Tierra de nadie"


"Sombras en la noche"


Tierra De Nadie/Baron Rojo

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