昨年の10月に米国の10年国債利回りが4%を、フィリピンの10年国債(ドル建て)は5%を超えたので、久々に外貨建て国債投資のチャンス到来と、投資口座を開いているMetrobankへ勇躍と向かいました。
ところが、コロナウイルス・パンデミックで投資部門の業績が悪化したらしく、投資担当者が欠員で、投資はできないと言います。
米国10年国債利回り(WGB資料)
慌ててホームページをチェックしながら数行を訪問したのですが、外貨建て国債についてはライン・アップが貧弱でした。
1、BDO
日本の野村證券と提携したところで、投資部門の拡充は緒についたばかりである。
2、Security Bank
三菱UFJ銀行と提携しており、投資商品は拡充されつつあるが、外貨建て国債はフィリピン、インドネシアしか扱っていない。
3、UnionBank
Citibankから個人向け銀行事業を譲り受けて、投資商品も整備されつつあるが、外貨建て国債は米国、フィリピン、インドネシアだけである。
諦めかけた今年3月下旬になって、MetrobankにCebu市と掛け持ちの投資担当者が配属されました。
しかし、米国10年国債利回りは3.5%、フィリピン10年国債(ドル建て)も4.5%に下がっています。
チャンスを逃したのかと暫く考え込んでしまいました。
米国10年国債利回り(WGB資料)
外貨建て国債投資の判断は、今後の金利動向にかかっています。
米国のインフレ率(PCEPI)は6.8%から5.0%に下がっていますが、コアPCEPIは4%後半で急速に下がる気配はありません。
フィリピンのインフレ率(CPI)も8.7%から7.6%に下がりましたが、コアCPIは8%近辺を維持しています。
米国のインフレ率(PCEPI)
フィリピンのインフレ率(CPI)
各国の中央銀行はインフレ動向を睨みながら政策金利を上げてきましたが、インフレ率がピークを打ったと判断して、最近の利上げは0.25%に止めて、様子見体制をとっています。
現在、米国の政策金利は4.75ー5.00%、フィリピンは6.25%です。
アメリカの政策金利
フィリピンの政策金利
世界銀行は1月10日発表の「世界経済見通し」で次のような景況判断を示し、世界の経済成長率は2022年の2.9%から2023年は1.7%に減速するとしています。
「インフレの高進、金利の上昇、投資の減少、およびロシアのウクライナ侵攻による一連の混乱に直面して、世界の経済成長は急激に鈍化している。」
世界の経済成長予測(世界銀行資料)
世界金融危機を予見したことからDr. Doom(破滅博士)と呼ばれているNouriel Roubiniニューヨーク大学教授は次のように述べています。
「ここ60年のアメリカの金融史で、インフレ率(CPI)が5%以上かつ失業率が5%以下であったとき、金利を上げてソフトランディングしたことはない。
現在のインフレ率は7.1%、失業率は3.7%で、景気が急激に悪化してもおかしくない状況である。
欧州の状況はさらに悪く、イギリスはすでに不況である。」
米国のインフレ率・失業率と景気後退期(陰影部)
また、10年以上にわたる低金利とコロナ禍により、新興国の債務残高は現在100兆ドルに迫っています。
米国の急速な利上げに伴う金利高、ドル高で新興国債務の焦げ付きが金融危機の導火線になりかねないと懸念されるため、G20財務相・中央銀行総裁会議で重債務国の債務再編が議論されましたが、簡単に解決できる問題ではありません。
さらに、世界中の銀行が金利高騰による保有債券の価格低下で、巨額の含み損を抱えています。
3月には米国の地銀Sillicon Valley Bank、Signature Bankが相次いで経営破綻し、4月にはFirst Republic Bankが急激な預金流出で経営危機に陥って、地銀の経営危機は深刻です。
欧州では、3月に世界的な投資銀行である1856年設立のCredit Suisse Bankが経営危機に陥り、スイス政府主導でUBSに買収されました。
Credit Suisse Bank: Photo by Roland zh
景気が悪化することは避けられないようです。
中央銀行は利上げを間も無く停止して、いずれ利下げに転ずるというのが現在考えられるシナリオです。
現在の国債利回りの水準でも、投資チャンスはあることになります。
米国の政策金利と景気後退期(陰影部)
しかし、金利はどこまで下がるのか?
世銀チーフエコノミスト、クリントン政権財務長官を歴任したLaurence H. Summersハーバード大学教授は、次のような分析結果から、米国(世界)は長期的な停滞と低金利の経済には戻らないと見通しています。
「多くの変化があり、不透明性が高まり、投資家はリスクに対してより高いプレミアムを求める可能性が高い。
1、安全保障支出の膨張もあり、財政赤字と政府債務はいまや継続的に拡大する公算が大きい。
2、生産拠点の米国回帰とサプライチェーンの強化に取り組む中で、投資支出が増加する。
3、世界的な「グリーンエネルギーへの移行」も支出増加を後押しする。
4、一方で、価格圧力を抑えてきた中国や他の新興国の労働者の動きは、いまや行き着くところまで行き着いた。」
Illustration by Pete Bamlen
以上の情報を参考に、次の通り投資基準を設定しました。
なお、フィリピンでは外貨建て国債投資による利益は非課税です。
世界各国の信用格付け(WGB資料)
表面利率と利回りを高めに設定したので、投資基準を満足する外貨建て国債は限られており、次の通り決定しました。
残存期間が約15年と長いので、6ヶ月毎の利払いだけでなく、金利が低下するとかなりの売却益も見込めます。
僅かな金額でも、ドキドキするのが投資の良いところでしょうか?