10年前にフィリピンへ移住して以来、最も懐かしいのは日本の四季折々の風情でした。

 

ところが、楽しみに出かけた昨年5月の関西旅行は、前半が夏のような天気で後半は雨でした。

 

それに、今年は初夏から台風が接近・上陸したり、猛暑・酷暑が発生しているというニュースを読んで、私の帰る場所がなくなったように感じています。

 

男性が展望台から街並みを眺める

2025年5月(尾道)

 

ふと思い出したのが、小学校の音楽の時間に先生のピアノに合わせて意味もわからずに歌った「夏は来ぬ」です。

 

初夏の風情を歌っているようなので、意味を調べてみようと思い立ちました。

歌詞は次の通りで、1番は今でも覚えています。

 

一、卯の花の 匂う垣根に
  時鳥 早も来鳴きて
  忍音もらす 夏は来ぬ

 

註)卯の花=旧暦の卯月(初夏)に咲くウツギの花

  時鳥(ほととぎす)=ホトトギス

  忍音(しのびね)=その年に初めて聞くホトトギスの鳴き声

 

ホトトギスが枝で休む様子

ホトトギス(Canon Global)

 

二、さみだれの そそぐ山田に
  早乙女が 裳裾ぬらして
  玉苗植うる 夏は来ぬ

 

註)さみだれ=旧暦の五月(さつき)頃の長雨

  早乙女(さおとめ)=田植えをする女性

  玉苗=早苗と同様、苗代から田へ植え替える苗

 

早乙女が田植えする風物詩

早乙女の田植え(日本気象協会)

 

三、橘の 薫るのきばの
  窓近く 蛍飛びかい
  おこたり諌むる 夏は来ぬ

 

註)橘(たちばな)=柑橘類の一種で旧暦の五月(さつき)に白い花を咲かせる

  おこたり諌むる=「蛍雪の功(夏は蛍の光で、冬には雪明かりで苦学して成果を上げた)」の故事に倣う表現

 

ホタルが光る日本の夏の風景

蛍(日本気象協会)

 

四、楝ちる 川べの宿の
  門遠く 水鶏声して
  夕月すずしき 夏は来ぬ

 

註)楝(おうち)=夏に薄紫の花をつけるセンダン

  水鶏(くいな)=クイナ、河川や湖沼にすむ水鳥

 

クイナが水辺で佇む様子

クイナ(弓削野鳥の会)

 

五、五月やみ 蛍飛びかい
  水鶏鳴き 卯の花咲きて
  早苗植えわたす 夏は来ぬ

 

註)五月(さつき)やみ=五月(梅雨時)の闇夜

 

田植えの始まる稲田と青々とした草

苗植えの終わった稲田(tandokuyaei)

 

「夏は来ぬ」は明治、大正、昭和と「小学唱歌」として歌われ、2006年には「日本の歌100選」にも選ばれました。

 

歌詞1−5番を解説書を参考に私なりに解釈すると次のようになります。

画像の製作はGoogle Geminiに頼みました。

 

(1番)初夏にウツギの花が白く咲きほこる垣根に、ホトトギスが早くも飛んで来て、今年初めて鳴いているのを聞くと、夏の訪れを感じる。

 

卯の花とホトトギス

 

(2番)梅雨の雨が降りしきる山あいの稲田で、女性が着物の裾を濡らしながら苗を植えているのを見ると、夏が来た思う。

 
(3番)タチバナの花の香りが漂う軒先きの窓の近くで、蛍が飛び交っていると、怠けそうになる気持を諌められ、夏が来たと思う。

 

田植えをする女性と蛍の飛ぶ古民家

 

(4番)センダンの薄紫の花が散っている川沿いの宿の遠くの門のあたりから、クイナがトントンと戸を叩くように鳴く声が響き、夕暮れの月が涼しげに空に浮かんでいると、夏が来たと思う。

 

(5番)梅雨時の闇夜に蛍が飛び交い、クイナが鳴き、ウツギの白い花が咲いて、早苗が一面に植えられているのを見ると、今年も夏がやって来たと思う。

 

夏は来ぬ 蛍と田植えの幻想風景

 

暫くは「夏は来ぬ」を口ずさんで、日本の夏を懐かしむことにしましょう。

 

参考文献:世界の民謡・童謡