「ミカエル、またなぁ~…しっかり休めよぉ♪」


こうして、ラビから解放されて、やっと、自室へとたどり着く。ベッドの端に腰を掛けると、無意識に、ため息が出た。

…疲れた…教団の人達のことは、嫌いじゃない…だけど…息苦しいんだ…人と触れ合うのが…
僕が、一番恐れているのは…ここに居られなくなること…

そんなことを、ぼんやりと考えていると、コンコンと、丁寧に扉をノックする音が聞こえてきた。
「ミカエル?…居る?」
可愛らしい声が聞こえてくる。室長の妹、リナリー・リーだ。

彼女は、僕の事も家族だと言い、親友とも思っているようだ。だけど僕は、ちゃんと、心を開けている自信がない。
リナリーの優しさが、逆に、僕を不安にさせる…いつか、急になくなってしまうような…。

複雑な心持ちのまま…
「あぁ…居るよ、リナリー…」
ドアを開ける。僕と目が合ったリナリーは、微笑んだ。
「よかった、部屋に戻ってたのね」
どうやら、探していたらしい。
「うん…何かよう?…もしかして、再検査?」

「もう、検査は大切なんだから、そんな嫌な顔しないの(苦笑)…でも、今回は検査じゃないわ…今日から科学班に配属された人がいてね、一応、紹介しておこうと思って(微笑)」

「科学班に?…また、変な人じゃないだろなぁ…?」

「ん~…先ずは会ってみてくれる…?(苦笑)」

そう言われるがままに、自室を出て、司令室へと向かう。その最中。

「そういえば、他の奴らは会ったのか?その新入りに」

「アレンくんたちのこと?」

「そっ、アレンとかラビ」

「そうね…私の知る限りでは、アレンくんやラビ、ガブリエルもまだ会ってないわ…神田はもう会ったらしいけど」

「ふぅ~ん、まだ会ってないんだ。…もう少し、早ければラビと一緒だったんだけどなぁ…あと、食堂に、まだアレンがいるはずだよ(笑)」

「あっ、もしかして、食堂に行ってたから部屋に居なかったの?…アレンくんも」

「そうなんだ。検査終わって、部屋に帰ってる時にさ、会ったんだよ。そんで、アレンが食堂に行くって言うのに着いてったんだ」

「そうだったの」

「ん?…待てよ…検査終わった時に紹介すりゃよかったじゃねぇか!そうすりゃ、リナリーが探さなくてよかったよなっ!?」

「あっ、そうよね」

「あんの室長、余計な事はペラペラしゃべるくせに、肝心なとこは言わねぇのかよ!(怒)」


このあと、リナリーがなだめてくれて、少し落ち着いた。

けど…やっぱ、二度手間だ…!(怒)


「…どうしよ…(汗)」


ガブリエルは、食堂に来て、食べる物を注文、受け取り、さて座る席はと見回していた。しかし、今の時間帯は、ちょうど込み合う時間。どう見ても、空席が見当たらない。なおも、探していると…
「あっ!…ガブリエルっ、もしかして席を探しているんですか?」
そう、声をかけてきたのは、食べ終わったらしき皿を数十枚持つ、団服で白髪(はくはつ)の少年…アレン・ウォーカー…。彼との任務は、まだないが、よく食堂で顔を合わせていた。
僕が頷いたのを確認したアレンは…
「僕の隣、空いてますよ…もしよかったら、ご一緒しましょう(微笑)」
と言う。しかし、明らかに食べ終わりました的に皿を持っている為、思わず…
「お前、団服じゃん…これから任務か、部屋で寝るんじゃねぇの?…食べ終わりだろ?」

「いえ、先ほど帰って来たばかりです。…とても、お腹がすいていたので、そのまま食堂に来ました」
アレンは、照れたように苦笑いをした。
「そうだったのか…お帰り…」
そう言うと、一瞬、驚いてから嬉しそうに微笑み。
「ただいま!」
アレンは、教団を帰ってくる場所…ホーム…としている。僕も最近、そう思うようになってきた。

「では、席に案内しますから、ちょっと待っててください」
そう言うと、皿を置きに行く。それから、戻って来ると、また、手に何か持っていた。
「お前、まだ食べるんだな」

「はい、今度はデザートです(にこり)」
なんとも幸せそうに、微笑むアレン。もう、苦笑いしか出ない。

「では、案内しますね」
そう言って歩き出すアレンに着いて行く。少しこちらを振り返った彼が…
「ところで…餡蜜と羊羹(ようかん)と…ガブリエル?…また和菓子ばっかりですけど、まさか朝食ですか?(汗)」

「そうだけど…なに?」

「なにって…僕も人のこと言えませんけど…もう少し、バランスよく食べた方がいいんじゃないんですか?(汗)」

「考えとくよ」
そんな会話をしていると、やたらに、席が空いているところにたどり着いた。
「え?(汗)何でここ、他より席が空いてるんだ?」

「それはですね…前まで神田が居たからですよ…少し前までは、ミカエルとラビも居ましたけど」

「神田がぁ?(怒)」

「はい。そういえば、ガブリエルも神田と仲が悪いんでしたね(苦笑)」

「和菓子が不味くなる…この話は終わりだ…」

「あはははは…(汗)」

そんなこんなで、彼らは、大量の食べ物を食べ始める。実は、二人揃って、寄生型のイノセンスな為、他人の倍は食べるのだ。しかも、このふたり、教団内の1位2位を争うほど。だから、彼らの回りに席が空いていても、誰一人として座る者はいない…料理があるから…。

ある意味、混んでいる今、迷惑な二人組である。



「おっ、やっぱ居るさぁ~♪…おぉい、ユウぅ~…♪(笑)」


ラビが手を振りながら、名前の主の所に向かって行く。その後ろを、アレンと並んで歩いた。名前を呼ばれた本人は、あからさまに、嫌な顔を全面に出して、顔をあげる。そして、人を殺せそうなほど、鋭く睨み付けてきた…ラビだけ…。本当に、彼の周りだけ、明らかな空席が並んでいた。

彼に好んで近づくのは、僕らくらいだろう。

「貴様…何度言ったらわかるんだ…刻むぞ(怒)」

「うわぁ…めっちゃ不機嫌さぁ…(汗)」

「お前がファーストネームで呼ぶからだろ?」

「そうですよ」

「こっちからは、的確なツッコミさ(汗)」

「チッ…で、何の用だ?…用がねぇなら、さっさとどっか行きやがれ(怒)」

「ユウまで、つれないさぁ(泣)」

「座れる席を探してたんだ…お前の前が空いてたから、座らせてもらうよ…」
無視されたさぁ~と、呟いてる奴には目もくれず、食事を再開する神田。今日も蕎麦だ。
「フンッ、知るか」
そう呟いたのを、僕は聞き逃さなかった。
「そうさせてもらうよ(にっ)」
同じように、神田に聞こえるよう呟いてから、前の席に腰をかける。その左側にラビ、右にはアレンが来た。
「さて、席は確保できましたし、食べる物を持ってきましょう」
僕が持ってきますよと、アレンは向かう体勢をとる。
「俺も行くさぁ…アレンは自分の分だけで、手一杯さ(笑)…ミカエル、何食べるんさ?」
それを言われたらと、アレンは肩を落とした。
「まったく、ラビは一言余計だ(苦笑)…そうだなぁ、ナポリタンとカルボナーラ…大盛りで」

「ははっ、また突っ込まれたさぁ(笑)」

ふたりは、料理を取りに向かった。その後ろ姿を見送っていると、目の前から舌打ちと共に、呟きが聞こえてくる。

「まったく…うぜぇ連中だなぁ…」

「まぁ、そう言ってくれるな(苦笑)」

「こっちは、静かに食いてぇんだよ」

「いやぁ~…それは悪いと思ってるんだけどね…お前の周りしかなかったんだ、勘弁してくれ」

「フンッ、勝手にしやがれ」

「もう、そうさせてもらってるぜ」

それ以上は、何も言わなかった。
僕と神田は、良くも悪くもない関係。アレンのように、出会いが最悪でもなかったし、自分で言うのもなんだが、任務中での連携はなかなか良いと思う。
まぁ、たまには頭にきて、喧嘩をする事もあるが、アレン程でもない。大抵の非は、僕にあったりするからだ。
それに、彼の強さには、一目置いている。彼の足を引っ張らないように、僕も強くならなくてはと、常々、思っている。

そんな事を考えながら、彼を眺める。

心なしか、顔が赤く見えるのは気のせいだろうか?…風邪でも引いたのか…?

そう思っていると、さっさと食事を終え、足早に食堂を出ていった。

「あれぇ~?ユウが居ないさぁ」

「さっさと食べて、出てったぞ」

「なんだぁ、つまんないさぁ」

「つまんないって、お前なぁ」

「僕は、清々してますけどね…神田と顔をつき合わせて食べたら、食事が不味くなります…」

「おいおい(汗)」


何だかんだと言いつつも、僕らは食べ始めた。

それから数時間後、自分の分が食べ終わったので、まだ食べると言うアレンを残して、ラビと一緒に食堂をあとにした。