「ライルって奴、ますます、アクマの可能性が高くなったな」


『天使の代理人なんて呼ばれるトランクの男も警戒しないとな』

「白い羽が入っているだけで、天使の代理人とは、また大きく出ましたよね」

「本人が、そう言ってる訳じゃないさぁ…な、トマ?…結構、知られてるよな?」

「はい…多くの村や街に現れては、親族や親しい方を亡くされた方に、手紙だけを手渡して去っていく…手紙を受け取った者は、大抵、明るくなるそうです」

「それを見た近隣の人達が、あれはきっと天使の代理人だと言い始めたんさ」

「渡された奴じゃないんだな」

「なんだかライルって人と似てますね」

「そうさ。だから、早いとこ、鳥かライルを見つけた方が良さそうさぁ」

「そうみたいだな」

『じゃあ、探す効率を上げる為に、バラバラで探さないか?』

「バラバラですか?」

「効率良さそうじゃん」

『だろ?』

「俺はちょっと、心配さぁ」

「なんでだよ」

「いやぁ~…その…(汗)」

『んだよ!明確な理由もなしに反対すんなよっ』

「申し訳ないさぁ(汗)」

「(ラビ…あなた、もしかして…)」


そんなこんなで、バラバラで捜索を開始した。
ちなみにトマは、アレンと一緒にいてもらう事になった。



「旦那様ですか?…今日は、朝から出掛けていらっしゃいますよ…」


「あぁ~そうなのかぁ…それは残念さ…(汗)」

ラビの後ろでこそこそ話をする。
「どうしますか?お屋敷にいないとなると、顔の確認も出来ませんよ」

「それもそうだな」

『アクマだった時の警戒も出来ないな』

「確か…こういう屋敷に住む金持ちって、家の中に自分の肖像画飾ってんじゃねぇか…?」

『どこの豆知識だよ、それ(汗)』

「でも、その可能性は高いですよ!なんとか、屋敷に入りましょう」

『…だ、そうだ、ラビ』

「うぇぇ!?俺かよ!(汗)こ、ここは、ファインダーであるトマに任せるさっ!(汗)」

「わかりました、なんとかやってみます」

そんなやりとりで、トマが使用人と話、主人について、"屋敷の中"で話をしてくれる事になった。

「え?1年前にですか?…それはきっと、奥様が亡くなられた事ですね…」

『奥さんとは仲が良かったんだな』

「はい…それはもう、理想の夫婦でいらっしゃいました…なのに、突然の事故で」
涙を浮かべ始めた使用人。ここで働いているのはずっと昔からで、主人である夫婦とは、長い付き合いがある使用人だった。
「奥様を亡くされてからの旦那様は、それはもう、見ていられませんでした。お部屋に引き込もり、お食事もろくに食べてはくださいませんでした」

「食事も喉を通らないほど、悲しんでいたんですね」

「はい。それから月日が流れ、そう、ちょうど3ヶ月前…いえ、それよりもう少し前です…トランクを持った男性が現れたんです」

「トランクを持った男?」

「はい、顔は目深いに被った帽子でわかりませんでしたが、その男性が旦那様に、白い羽の入った手紙を手渡して去って行ったんです…それからです…旦那様の様子がおかしくなったのは」

「様子がおかしかったんさ?」

「お部屋から出て来られたのは嬉しかったのですが…昔より寡黙になり、お食事も相変わらず。…終いには、街をふらつくように」

「…街をふらつく…?(汗)」

「はい、それはまるで、夢遊病患者のようでした…そして…突然、私達に何も言わずに2ヶ月も姿を消してしまわれたのです」

「え?…旅行に行かれたと、街の人達に聞きましたよ…?違ったんですか?」

「はい…それは私達が言った嘘の話です…今は帰って来られて、昔以上に明るくなられて、私達は安心しています(苦笑)」


話を一通り聞いた僕らは屋敷を出る。ライルの肖像画は確かにあり、しっかりと目に焼き付けた。

『なぁ…トランクの男って…伯爵の手の者だろうか?』

「そうかもしれませんね」

「きっとブローカーさ。白い羽ってのも気になるけど、手紙の内容は、千年伯爵を呼ぶ為の何かが書かれてるんさ、きっと」

「トランクの男…怪しいぜ…」


ライル邸を後にする一行。そして、今後の行動について、話し合うのであった。



「幸せの鳥なら南に飛んで行くのを見たぜ」


『ありがと』

そう言って、次の聞き込みへ向かう。


「第一区で見ましたよ」

「わかった、ありがとな」

こちらも、礼を言って次の聞き込みへ向かった。


「朝方だったけど、この通りを飛んでたわ」

「ありがとうございました」

聞き込みで幸せの鳥が飛んでいたルートを探っているのだ。


「第三区方面に向かったぜ」

「ありがとうさぁ」

確実に、イノセンスへと近づいていると思われた矢先、奇妙な人だかりを見つけた。

「なんさ、なんさ?この騒ぎわぁ」

「あぁ若いの。ムゴイ事するヤカラも居たもんだよ、まったく」

「これはっ!(汗)」

「…酷いですね…」

「また、鳥の連続殺害の被害が出ちまった!街の奴なら俺のように、この街に誇りを持って生きてほしいぜっ!」

『…なんで…。…あんなに引き裂かなくてもいいだろうに…』

「イノセンスが、体のどの部分にあるかわからなかったからですよ、きっと」

「だからって、ムゴイさぁ」

『ちょっと待ってくれ。なぁ…これって、アクマの行動としておかしくないか…?』

「そういえば、そうですね。アクマなら、派手に人を襲ってレベルを上げますし。僕達に隠れてこそこそしませんよ」

『だろ?』

「アクマのレベルがかなり上って可能性もあるかもな」

「レベル2から自我が芽生えるからな、その上ならありえるさ」

「あるいは、他に協力者がいるかもしれませんね」

『金の為ならなんでもする、千年伯爵の駒…ブローカー…だな』

「はい。最近はますます、その数を増やしているみたいです」

「僕からしたら、理解に苦しむぜ」

「右に同じさぁ」

「お話中のところ、申し訳ございません」

『トマ、ライルについて何かわかったか?』

「はい。ライルという人物は、1年前に妻を亡くされ、ずっと引き込もっておられたようです。そして、3ヶ月前に突然、旅行に行ってしまわれ、2ヶ月も家をあけていたそうです」

「そんで帰って来たかと思えば別人さ?…こりゃ、使用人はビックリさぁ…」

「実は、使用人の方々はそれほど、気にしていないようです」

「どうしてですか?」

「妻を亡くした悲しみが吹っ切れ、明るくなられたと、逆に喜んでいる方々が多数のようです」

『なんだそれ(汗)』

「別人になっちまったのに、明るくとか(汗)」

「別人になられた主人を不気味に思っている方もいるようなのですが、その屋敷を追い出されたら行く宛のない方々で…辞めるに辞められないようでした…」

「なるほどな…また…厄介な主人さぁ」

「『…ラビ…』」

「ん?…どしたんさ?…ふたりして」

「『いや…なんでもない…』」

『一先ず、そのライルって奴に、一度会っといた方が良さそうだな』

「あぁ」

「そうですね」


こうして、ライル邸へと向かう。

ミカエルとガブリエルが、ラビを気にしたのには、理由がある。それは…似たような境遇の使用人とその使用人と仲良くなってしまったファインダー…ふたりの死を経験していたからだ。
このファインダーとは、ラビ経由でふたりも仲が良かった。だからこそ…信じられなかった…ファインダーである彼が悲劇を生んでしまった事が。
その最後をラビが"看取った"。
正確には、"アクマ"を破壊した。

悲しいはずなのに、それを見せないラビ。ブックマンの後継者だから関係ないなんて、思えない…だって…ふたりを見てると、兄弟がじゃれてるみたいで、暖かかったんだから。
きっと、心のどこかで考えてた…だから…あんな影のある言葉を言ったんだ。

だから思わず、ラビに声をかけていた…この使用人は大丈夫だと言いたかったんだろう…。
主人に殴り殺される事はない…悲劇を生む人もいない…と。