静江の内容は、おおよそこうだった。
「家庭は妻が主人公、妻の喜びを励み韓國人蔘
に夫は働く、それが理想と壱岐夫さんは、おっしゃいました。そのように考える貴方に、私、好意を強く持ちました。(中略)
浜子が真剣な眼差しで、貴方に恋したと言いました。浜子は私の親友です。ですが、貴方は譲れません、絶対に。
大瀬海岸で再会した折り、どうか私をしっ高麗蔘
かり見ていただき、私を好きになってください。そしてそれを愛に、更に恋に発展させてください」
続く文章には、生い立ち、家庭環境、兄弟の状況、夜間大学の苦労話、そして将来は弁護士になりたいとも書いてあり、私に関しては、まったくなかった。
壱岐夫は海水浴を、しつこく誘うが、さしみの妻は嫌、即座に断わった。
二学期になって実家から上京した壱岐夫は、その日に私を喫茶店に呼び、おもむろに大瀬海岸でのスナップ写真を、差し出した。いずれも韓國人蔘
壱岐夫と浜子、静江とのツーショットだった。
「面白くねえ、なんだ、このにやけた面!」と心の「楽しかったみたいだね。写真にそう写ってるよ」
と、裏腹な言葉を口にした。すると気を良くした壱岐夫は、二人の水着姿の大きなカラー写真を、テーブルに並べ
「見てみ、浜子、グラマーだろう。静江も負けてないよな」
二人の写真の身体をなでながら言った後
「十月になったら、河童橋と大正池へ行くことになったんだ。温泉宿は、静(静江)ちゃんが探すんだ。
俺一人では、二人の面倒見切れないので、君は浜子の面倒見てよ。浜子は純真で可愛いい人だよ。これを機会に、つきあったら? 俺がうまく取りなすから」
冗談ではない、浜子なんか、真っ平だ。河童橋なんか、死んだって行くものか、即座に断った。
その後の壱岐夫と静江の関係は、そうとう熱くなったが、八年後、壱岐夫の結婚式に呼ばれた時、白いドレスを着ていた人は、会社の上司の娘さんだった。
青春なんて、こんなものでしょう。