のためにふるえ | いたずら王子

いたずら王子

いたずら王子


 小男がへやから出てくるようすに、滋と謙三はあわてた。ふたりはいそいで階段をかけのぼると、ぴたりとろうかに腹ばいになったが、さいわ網絡聲譽管理い小男は二階へくるようすはなく、階段の下を横ぎって、ホールへはいっていった。そして、まもなく肩にかついで出てきたのは、なにやらふとい丸太ン棒のようなものである。
 小男が居間へかえっていくのを見て、滋と謙三は、ふたたび階段をおり、回転窓から中をのぞいたが、ちょうどそのとき小男が、丸太ン棒を肩にかついで、ドアから中へはいってきた。
 小男は丸太ン棒を肩からおろして、怪物の前に立たせたが、そのとたん、滋と謙三は、天地がひっくりかえるほどおどろいたのだ。ああ、なんということだろう。
 丸太ン棒と見えたのは人間だった。
 人間の足から肩のあたりまで、長い綱でぎっちりと、すきまもなく、ぐるぐるまきにしてあるのだ。綱のはしから出ているのは、首から上と空少課程はだしの足だけ。しかも、口にはげんじゅうに、さるぐつわをはめてあるので、顔もよくわからない。
「音丸、綱をといてやれ」
 怪物の命令一下、小男は丸太ン棒のまわりをまわりはじめた。くるくる、くるくる、こまねずみのように走りまわるにしたがって、丸太ン棒のいましめが、足のほうからとけていった。小男はその綱を、腕にまいて輪をつくりながら、なおもくるくるくるくる、走りまわる。
 怪物は鬼丸博士のほうをふりかえって、
「これよ、鬼丸次郎」
 と、あいかわらず気味のわるい声だった。
「きさまのような|不《ふ》|埒《らち》なやつはないぞ。きょうもきょうとて、珠次郎をうばってこいと命じておいたのに、まんまとしくじりおって……それのみならず、軽気球にブラさがった小男を、津川がうち殺そうとしたのを、きさまがとめたというではないか」
「男爵……」
 鬼丸博士はなにかいおうとした。しかし、あまりのおそろしさに口がきけないのだ。ただ、ガタガタとふるえるばかり。
「いいや、きかぬぞ。いいわけはきかぬぞ。きさまはおれの敵か味方か。味方ならばおれがどんなに、剣太郎、珠次郎、鏡三の三つ子をさがしているか知っているはずだ」
 三つ子ときいて滋と謙三は、また天地がひっくりかえるほどおどろいた。
 ああ、そうだったのか。剣太郎と鏡三は、ふた子ではなかったのか。ふたりのほかにもうひとり、珠次郎という兄弟があって、三人は三ips 整形外科つ子だったのか。……滋と謙三はこうふんている。
「これ、鬼丸次郎」
 怪物がまた気味のわるい声でうなった。
「おれがなんのために、三つ子をさがしているのか、きさまもよく知っているはずだ。三つ子のおやじの鬼丸太郎は、十年まえにアメリカから、百万円の金塊を持ってかえって、どこかへかくした。よいか。十年まえの百万円だぞ。金の相場のあがったいまでは、何億というしろものだ。おれはそれがほしいのだ。何億という財産を手にいれたいのだ」
 怪物はゴリラのように背をまるくして、のそりのそりと部屋の中を步きまわりながら、
「ところが鬼丸太郎はその金塊を、はなれ小島の大迷宮の中にかくしおった。おれはやっとその島と大迷宮のありかをさがしあてたが、大迷宮の入口は、大きな岩でとざされている。どうしても中へはいることができんのじゃ。それで、岩を爆破するのはなんでもない。しかし、そうすると大金塊が、こっぱみじんとなって、ふっとぶかもしれんのじゃ。だから、なんとかしておだやかに、岩をひらかねばならんのだが、それには鍵がいる。鍵は三つで、鬼丸太郎は三つの鍵を一つずつ、三つ子のからだの中にかくしておいたのじゃ。これよ、鬼丸次郎、きさまはまえからそのことを、知っていたのであろう」