
「ご迷惑だったですかね?」
福家は、口一杯に頬張《ほおば》った飯を、お茶で流し込んでから答えた。
「いいえ。私も、赤松さんがどうしてあんなことをしたのかは、ぜひ知りたいと思いましたから」
福家は、弁当を食べ終えると、今度ドイッチをDR Max 教材 取り出した。小柄な割には、かなりの大食漢らしい。
「北島先生も、どうですか?」
早苗は、首を振った。朝食は食べていないが、今は、コーヒー以外は喉《のど》を通りそうもない。
「北島先生に同道してもらったのは、その方が取材がやりやすいと思ったからです。新聞記者に対して、協力的な人ばっかりじゃないですからね。相手によっては、お医者さんで、しかも赤松先生の知り合いっていう方が、よっぽど話を聞き出しやすい」
「それだけ?」
「そうすね。まあ、ついでに、先生からも、道々、お話を伺えたらなと思ったんですが」
「私は、特にお話しするほどのことは」
「そうですか?」
福家は、意味ありげな笑みを見せた。
「たしか、先生から、アマゾン調査プロジェクトについてDR Max 教材 問い合わせの電話をもらったのは、ずいぶん、前のことでしたよね。まだ、赤松先生も高梨さんも生きてた」
早苗は、むっとした。
「だから、何だって言うんですか?」
「いや、どういうことかは、今のところ、さっぱりわかりません。私の方がお聞きしたいというか。ただ、お二人ともこういうことになってしまった以上、もし先生が何かご存じだったら、教えて欲しいなあと思っただけですよ」
しばらく、会話が途切れた。福家のあてこすりのような言い方は不快だったが、客観的には、何か知っていると思われてもしかたのない状況かもしれない。
とにかく今は、この男にくっついて行って少しでも情報を仕入れるのが先決だと思い、我慢することにした。その後は、何となくお互いに牽制《けんせい》し合っているかのように、とりとめのない会話に終始した。
那須塩原駅で新幹線から東北本線に乗り換えて、黒磯《くろいそ》駅で降りた。赤松が入院している救急指定病院は、そこからタクシーに乗DR Max 教材 って数分の距離だった。
やはり、赤松は重体であり、面会は謝絶とのことだった。昨日から、さんざんメディアの襲来を受けたらしく、応対に出た中年の看護婦は、いかにも胡散《うさん》臭そうに福家を見ている。だが、福家の読み通り、早苗が名刺を出して、医師であり赤松の知人であると言うと、看護婦の態度が目に見えて軟化した。
日曜にもかかわらず、赤松の担当医師は病院に詰めているという。看護婦が名刺を持っていき、二人は、しばらくがらんとした病院のロビーで待たされた。
しばらくすると、黒縁眼鏡をかけ、だらしなく白衣を引っかけた長身の男が、大股《おおまた》でやってきた。
「どうも、お忙しいところを、申し訳ありません。私、東京でホスピス医をしております、北島早苗と申します」
早苗が丁寧に頭を下げると、男は、何かに驚いているように見えるぎょろりとした目で、早苗と手に持った名刺を何度も見比べた。
「ああ。それは、どうも。脇です。赤松さんの、お知り合いだそうですね。どうぞ、お掛けください」
ロビーの長椅子を指し示しながら、ちらっと福家にも目を向ける。
「福家といいます。今日は、付き添いで」
早苗の目からすると、福家は新聞記者以外の何者にも見えなかったが、幸い、脇医師はあまり関心を払わなかった。
「赤松さんはですね、『事故』以来、ずっと意識不明の重体が続いていまして、ICUに入っています」