そう言うと暁を家に招き入れた。
暁と一緒に部屋に入るとすぐにルカが目についた。
「ん?そいつは、確か...赤ずきん?」
「それは童話だよ。アカツキだよ」
ルカがわざとなのかそれとも素で間違えたのかわからないがボケてきたのでぼくはすぐにツッコミをいれた。
「あぁ。そうだそれそれ。そしてなんで暁がここにいるんだ?」
ルカが、そういうと暁は怯えながらもルカの前に行き正座をした。
「この間は、悪かった...」
ルカはもちろんのこと、ぼくまで驚いた。
「は、はぁ!?なんでお前が謝るんだよ」
「そ、そうだよ。暁が謝る必要がないよ」
「だって俺、お前らを傷つけたし...」
「ん?あー、気にしていねぇよ。あんな過去のことをいちいち気にしていられるか」
「で、でも…」
「まぁまぁ、暁。ルカもこう言ってるんだし」
「わかった。ありがとな」
「にしてもお前、服がボロボロだな。他に着るものはないのか?」
ルカがそう聞くと暁は黙って頷いた。その間、ぼくは自分のクローゼットを漁って他の服を探していた。
「アキラはさっきからなにをしているんだよ」
「え?暁が着られそうな服を探している」
「え?あ、でも大丈夫だよ。俺は」
「そんなこと言わないでー。あとでデパートに買い物でも行って一緒に洋服を選ぼ?」
「うん!行く!」
暁が目を輝かせながらそう答えた。
「あ!これなんかどう?」
ぼくはクローゼットから1着のパーカーを取り出し、暁に渡した。
数分後、暁が先ほど渡したパーカーに着替えてきた。サイズはちょっと小さそうだったが思いのほか似合っていた。
「それじゃ、暁も着替えたことだし、デパートに行くか」
「え?ルカも行くの?」
「行くに決まっているだろ!お前は俺から離れられねぇんだよ!」
「あー、そういえばそうだったね」
などとぼくらがしょうもない会話をしていると暁がクスクス笑い出した。いまの会話、そんなに面白かっただろうか。
いまの時期にパーカーを渡したのは大間違いだった。
湿度はあるし、気温もある。長袖をきていたら洋服でサウナが完成してしまう。ていうよりかは暁は既にサウナ状態のようであった。汗をどんどんかいており、ぼくは申し訳なくなってしまった。
時は進み現在ぼくらはデパートについた。クーラーで店内が冷えており暁の汗も一気にひいたが、風邪をひいてしまわないか心配になった。
それにしても、なんの問題もなく外にいることが、珍しく感じてしまった。
「なぁ、洋服売り場って何階だ?」
「確か6階だったと思うよ」
「もしかして6階まで歩いて行くのか?」
「そんなわけないだろう。エレベーターを使うよ」
すると暁がぼくの耳元に小声で
「ねぇ?ルカってバカなのか?」
と聞いてきたので思わず大笑いをしてしまった。ルカは「なんだこいつ」っていう顔をしているし暁は戸惑っている。
「あ、えっとなんか悪かった」
「いやいや。暁は悪くないよ」
ぼくは笑いながら返した。
また謝られた。今のはぼくがただツボっただけなのに。
ぼくは複雑になりながらもエレベーターに向かう。
エレベーターは予想通り人が多くおり、乗れば蒸し焼きになるのではないかと思ってしまうほどだ。暁は脱水症状で死なないだろうか。
だが、無事に乗ることができ6階に向かうことができた。
6階には洋服や下着の様々な衣料用品が並んでいた。
暁は目を輝かせながら辺りを見回している。
もしかして暁は女の子なのだろうか。
そんなことを考えていると暁がぼくを睨んできた。もしかして心が読まれている?
「ん?なに?」
「お前、いま変なことを考えていただろ」
「いやいや。なんも考えてないよ」
「ふうん。そうか」
なんとか誤魔化すことができた。変なことを考えるのは控えめにしなければいけないと痛感した。
ぼくらは、様々なところを回った結果パーカーを買ってしまった…。
まぁ、本人も気に入っているし問題ないだろう。
無事に服も買うことができたし帰ろうとエレベーターに乗ろうとした途端、
ビーッビーッ
と大きな警告音がデパート中に鳴り響き窓際のシャッターが全て閉じられてしまった。
「おい!一体なにがあったんだ!」
ルカが大きな声で叫ぶがその場にいた人たち全員、状況を把握できていなかったので、無視をするしかなかった。
ピーンポーンパーンポーン
〈えー、デパート内放送です〉
放送がなりだしたので誤操作かなにかかと思ったが違うことがわかった。その放送者の声は、一度、聞いたことのある声であったからだ。
〈どうも~。このデパートは占領しました~。館内にいる東雲亮くんは屋上にある観覧車の前まで来てください~。1分経つごとに2人を撃ち殺しますので、なるべく急いでくださいねー〉
そう言うと放送は切れた。それと同時に周りがざわめき始めた。