6話目
そう言うと放送は切れた。それと同時に周りがざわめき始めた。
「おい....。東雲亮って誰なんだよ!」
「早く行けよ!」
「殺されたくねぇよ!」
などの様々な声が飛び交っている。
ぼくは黙って声の主、桂木アイラに従うことにした。
だが、エレベーターは動かなかった。桂木さんに止められてしまったのだ。
「ねぇ、ここから屋上まで何階だっけ?」
「確か、10階くらいはあったぞ」
ルカはそう冷静に言うが1階層を上がるのに2~3分はかかる。それが10ともなれば30分じゃ済まないだろう...。急がないと...。
ぼくは階段に向かって走る。なるべく犠牲者を少なくしたい。
階段を登っているうちに、既に4分は経っただろうか。何人殺されたのだろうか...。気が気でなかった。
「ねぇ、お前はなんで走っているんだ?」
「なにをってお前、ぼくが行かなかったら殺されるんだよ!」
「あ、え、っとごめん。」
こいつはなにをふざけているのかと思ったがけっしてふざけてなどいなかった。暁がいるところをみると、足場がないのだ。一体どういうことだ。
「暁、なんでお前は足場がないところにいることができるんだ」
「なんか、レアルの能力がそのまま俺に残ってしまったみたいなんだ」
「能力?なんだそれ」
「あれ?アキラは知らないの?吸血鬼には個人別に能力があって、俺のレアルは空を飛ぶことができるんだよ」
「じゃ、じゃあ!ぼくを屋上に運ぶことはできる!?」
「多分できる」
「じゃあ、やって!」
ぼくは、暁にそう頼むと抱きかかえて屋上まで運んでもらった。
屋上には10分くらいでついた。
辺りをみると真っ赤に染まっており直視することができなかった。
「あ!やっときたんだねー。あきらくーん。36人も殺しちゃったじゃないの」
「っ!?なんの目的なの?」
ぼくは冷静を装ってそう答える。
「えー?ただ単にー君の吸血鬼と殺り合いたかっただけー」
「そんなことの為だけに36人も殺したのか?」
ルカが怒り気味にそう聞く。いや、怒り気味ではなかった。完全に怒っていた。こんなルカはいままでに見たことなかった。
「そーだけどー?なんか文句あるー?」
「大有りだ!普通に呼びやがれ!」
「そんなに怒らないでー。それじゃつまらないと思ったからー」
「早く、だせよ...。」
「ん?なんて?」
「早くお前の吸血鬼を出せっつってんだよ!!」
「あれ?見えてないのかな?そっか!仕方ないよね♪」
桂木さんがそういうと
バンッ
と大きな銃声が響いた。ぼくは警察が来たのかと思ったが、そうではなかった。ルカが肩を抑えながらその場に倒れこんでいた。自分にはなにがあったのかわからなかった。
「桂木さん、いまなにをした?」
「……わかんない。銃声がしたと思ったらルカが倒れこんでしまった」
どうやら暁もなにが起こったかわかっていなかった。
「...うぐっ。お前、なにをした...」
「なにってー、ただ銃で撃っただけだよー?」
桂木さんは銃で撃っただけというがその手元にはなにもなかった。家に来た時もそうだった。なんもないのにそこになにかがあるような感じなんだ。もしかしてと思ってぼくは聞いてみる。
「ねぇ、桂木さん。桂木の吸血鬼の能力ってなに?」
「あら?気づいちゃったの?はっやーい。透明になる能力よ?」
予想とは違った…。
だが、相手の能力を知ることはできた。結果オーライということだ。
よし。ここからが本番だ。