そこで見た光景は現実のものとは思えないほど悲惨なものであった。
目の前は、真っ赤に染まっており血の生臭さが鼻をつき、先ほど食べてたビッグマックその場に嘔吐してしまった。
ルカの方を見てみると、真剣な表情で現場を眺めていた。
ぼくは不思議に思いルカにむせながらも声をかけた。
「ねぇ。どうしたの?そんなに真剣な表情であんなのを見て」
「もしかしたらなんだがこれ、同士によるものかもしれないんだ」
「同士?どういうこと?」
ぼくは最初、ルカがなにを言いたいのか全くわからなかった。
だが、次の一言でわからなかったことを理解してしまった。
「つまりだ。吸血鬼の仕業ってことだ」
「え?それは、ぼくたち以外にも契約者がここにいるってこと?」
「あぁ。そういうことだ。放っておいたらまだまだ死人が出る」
この会話をしている間にもまた別のところから真っ赤な血の噴水が視界を真っ赤に染めた。
まさかとは思ったがそのまさかの事態が起こってしまったのだ。
2人目の犠牲者がでてしまった。
「くそっ!早く見つけるぞ!3人目の犠牲者をだしたくない!」
「……羽があった」
「はぁ!?お前はこんな時に何を言ってやがる!死体のせいで精神が狂ったか!」
「違う...。羽が首を跳ね飛ばしたんだよ...」
「なるほど...。じゃあ、吸血鬼で確定だな。問題は、どうやってそれを見つけだすかだ」
そうだ...。まずはそこなんだよ。相手の正体がわかっても見つけだすことが出来なかったら意味がないんだ。
こんなことを考えているとルカが
「しゃがめええええええええ!!!!」
と叫びながらぼくを力いっぱい押し倒してきて、背中をアスファルトの地面に強打してしまった。
「…かはっ!ルカ...。なにをする!」
「ハァ...ハァ...。じゃあお前は死にたかったのか?」
ルカは、ぼくの顔のすぐ横に目をやったので、ぼくもそれに合わせて自分の顔の右側をみる。
するとそこには、黒くて鋭利な羽がアスファルトに深々と突き刺さっていた。
「ねぇ。ルカ。これが飛んできた方向、わかる?」
「わかるが....。なんで、そうか!これが飛んできた方向にいけば犯人がいるな!」
「うん。早速向かうよ」
ぼくらは、羽が飛んできた方向に足早にむかったが、そこは、ぼくたちがさっきまで居た場所よりも無残な状況になっていた。
道路全体が真っ赤になっており、ところどころに人間のものと思われる肉片や内臓、四肢などが転がっている。しかし散らばっているのはそれだけではなかった。先ほどの黒い羽も同時に落ちている。この真っ赤な道の先を見ると唯一の生存者がいた。
いや、生存者という言い方は間違いだろうか。この事件の犯人がいた。
真っ黒で大きな翼を羽ばたかせながらその犯人は宙に浮いていた。
「ん?なんだぁ?お前らもここに死にに来たのかぁ?そんならぶっ殺してやるぞ?」
「違うんだ。待ってくれ。君はここでなにをしているんだい?」
「かははっ!なにをしているんだい?だってぇ?見ればわかるだろ!こいつらをぶっ殺してたところだよぉ」
「おい!てめぇ!そろそろやめろよ!なにがしてぇんだよ!」
「ん?その声はもしかしてルカかぁ?懐かしいなぁ。覚えているか?レアル様だぜ?」
(なんだ...?こいつルカと知り合いなのか?)
「....っ!お前の契約者はどこだ?いないわけはないだろう?」
「あぁ。いまも後ろにいるぜ?出てこいよ。暁」
「はぁ....。俺が契約者なんだから立場上は俺が上だろ?なんでそんな上から目線なんだ...。そういえば自己紹介がまだだな。俺の名前は『暁 御影』よろしくな。よろしくって言ってもお前らはもうすぐで死ぬだろうけどな」
そう言いながら出てきたのは顔の整ったぼくよりも二つほど年が上そうな男性だった。
「細けぇことはいいんだよ!そんでどうするんだ?あぁ?ルカよぉ!何のためにここまで来た?」
「くそ...。おいアキラ...。相手が悪い。逃げるぞ!」
「え?はい?えぇ!?」
ぼくはなにも理解ができないままルカに腕を引っ張られて連れられて行き、壁の隙間へと隠れる。壁と壁の間は狭くぼくとルカが密着しているような感じなので無駄な動きはできない。
「ねぇ。ルカ?なんで逃げたの?」
「もしかしたら俺らで敵うあいてじゃないんだ...。あいつは強い」
「で、でもこれ以上犠牲者を増やしたくないよ...」
「お前は、自分の命と他人の命、どっちが大事なんだ!」
「そんな...。やってみるだけやってみようよ...。やらなかったら0%なんだよ?」
遠くから大きな音が聞こえてくる。その大きな音の正体はすぐにわかった。レアルたちが建物を破壊しながらぼくたちを探しているんだ。
「ルカちゃ~ん。どこに隠れたのかなぁ?まぁ!どこに隠れたって意味ないんだけどな!」
「お前、スタミナ大丈夫なの?すぐに消耗するじゃん。そろそろソウルユニゾンする?」
「わーったわーった。そんじゃするぞ!」
《ソウルユニゾン!》
掛け声と共にレアルと暁 御影の周りを眩い光が包み込んだ。
「なに!?あいつら、ソウルユニゾンをしやがった...。チッ仕方ねぇ。俺らもするぞ」
「え?なに?ソウルユニゾンって?なに?どうすればいいの?」
「とりあえずソウルユニゾンって言えばいいんだよ!」
「わ、わかった」
《ソウルユニゾン!》
レアルたちと同じようにルカとアキラの周りを眩い光が包み込んだ。
その光の中から出てきたのは、ルカの姿を纏ったアキラだった。
しかしその光のせいでレアルたちに居場所が見つかってしまった。
レアルたちも先ほどとは姿が違い、暁がレアルの姿を纏っていた。
「やぁ。てめぇたちもソウルユニゾンできたんだな。まぁ、そうこなくっちゃね。つまらないもの」
「随分と大きな口を叩くんだね。弱いやつほどよく喋るって言うよな」
「んだとごるぁ!とっととぶっ殺してやんよ!」
「こいよ!返り討ちにしてやるから!」
その言葉でぼくらは身構えた。