ごく普通の田舎町を横断する列車。乗っている一人の女が車窓から眺めているのは、愛し合う夫婦や幸せなファミリーが暮らす住宅地。一見、日常的なよくある風景だが、女の目線で見たそれは羨望と嫉妬の象徴である。といった、何やら不吉な空気ではじまるこの作品。
舞台となる田舎町は、昼間でも異様に薄暗い雲に覆われていて、こういう田舎町はどこにでもありますよね。いつ行っても太陽が出ていないみたいな場所。道中は晴れてたのに、そこに近づくと曇りだして「嫌だなー、嫌だなー」なんて稲川淳二さながらの気分にさせる不安な地域。
で、そんな場所だから当然、殺人が起こります。
太陽が出ない地域なんかに暮らしていたら、セックスか殺人しかやることないですからね。マジで。この映画もそんな内容。
女が車窓から眺めていた家で起きたある事件。
その事件自体はものすごく単純なのに、主人公が持つ「酔うと記憶を無くす」という厄介な仕掛けによって、真相がじぇんじぇんわからない。さらに、生理的不快感に満ちた映像と音楽、そして入り組んだ時間軸なんかもあって、もう何がなんだかさっぱり。シラフである観客も派手に記憶を無くしているような感覚になります。
俺は酒が苦手なので、酔っ払いの質の悪さが良くわかります。基本的に飲み会の席では俺ひとりが始終シラフで、周囲は「酔っている」ということを免罪符に、大いに騒ぎまくる。暴言を吐くしゲロも吐く。グラスを割る。仮性包茎ちんちんを出す等、いろいろとやらかしたあげく、こっちが本気で怒ると「楽しい席なんだから落ち着いて」などと言い出すので本当に迷惑。しかも次の日には「酔っていて覚えていない」ですべてチャラにしようとするからマジでつらい。
とにかくそんな迷惑極まりない、軽蔑すべき「酔っぱらい」に感情移入しなきゃいけない俺の立場になってください!最高じゃありませんか!酒を飲んでいないのに、気持ちは悪いわ、視点ふらふらだわ、記憶障害だわでもうこれが本当の「4DX酔っぱライド」。
世界的ベストセラーとなったミステリー小説の映画化らしいですが、主人公も観客も酔っぱらっているせいで、物語が進んでも事態の全貌がぜんぜん見えてこないという演出が秀逸。事件に関わる他の登場人物たちは変態ぞろいで、キャラ設定も完璧です。
そして、気になるラストはとんでもなく気持ち悪いので注意。
田舎町で巻き起こる地味な事件、なのに出演者は美男美女、演出は派手。圧倒的スケール感でミステリとしても最高峰の作品なので、アル中の方はぜひ一杯ひっかけてから鑑賞してみては。
100点満点!


