「一年ほど自由な時間を満喫してみようかなー。将隆も一緒に旅行とかしようよ!」
昔読んだことのある漫画みたいな話を、和志はこともなげに口に出す。
いつの間にか俺の前には、何処からか集められた見慣れた国の名ばかりの旅行パンフが、所狭しと陳べられていた。
「俺は付き合わねえからな。俺が仕事辞めたわけじゃねえんだからな!」
「えwwwwww!!まーちゃんと俺の仲なのに~、ケチンボ!」
「まーちゃん言うな!」
「まーちゃんは、まーちゃんじゃんか~」
「26の男がそんなふうに呼ばれて嬉しいはずないだろ」
「俺はカッチンて言われるの今でも嬉しいよ?」
「...。」
こいつとの会話はマジ疲れる。毎回がこんな調子だ。俺は小学生と話をしているのかと錯覚しそうになる。
話の主旨がずれるのは20数年の付き合いで嫌と言うほど身にしみて知っている。
無駄な議論は早々に放棄してしまうに限る。
「遊ぶのは止めないが二ヶ月後には仕事を探し始めろよ」
和志が文句を言い出す前に妥協案で五月蝿い口を塞いだ。
「俺の言うことを聞くなら旅行には付き合ってやるから。返事は?」
俺からの妥協案=決定事項、それはいつの間にか二人の間での決まり事になっていた。
「...分かったよ」
「行き先は俺が決めんだかんな!まーちゃんじゃないぞ! オ・レね!!」
幼稚な内容の会話に頭が痛かったが、なんとか話に決着がついた。
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