ON AIR STORY(´・ω・`)ノ ブログ小説 -7ページ目

ON AIR!!生徒会 リプレイ「ウソツキは恋ドロボーのハジマリ その8」お題『バニラソルト』

ワイシャツの胸ポケットに手に持って遊ばせていたコインを入れると、俺はハルの方へと移動して頭を撫でる。なぜ撫でる?まあ、なんとなくだ。昔からハルが泣いていたときは大体こうしていたから。
「大丈夫か?」
「うん……」
ハルのいつもの抱き着き癖が発動し、俺の腹に顔を付ける。
「あ、ハル!鼻水かんでからにしろ!」
「うん」
ちーん、という効果音が付くような感じで俺のワイシャツで鼻をかむハル。
「あ、コラ!やめんかい!」
「うん」
腹に抱きついたまま顔を上げる気配が無いハル。ワイシャツは洗えばいいか……。まあ、仕方が無い。と思っておこう。俺はそのままの状態でハルの頭を撫でながら。落ち着いたのを確認して秋西の方に顔だけ向ける。
「話、聞いてもいいか?」
「う、うん」
秋西に話を促す。タイガの揺らすブランコの錆びた高い音が公園内に響く。
やがて、タイガが足を地面に下ろす。するとブランコの音が止まり、公園内に静寂が降りた。
「私に彼氏がいた事は知ってますよね?」
俺とタイガは無言で頷いたのを秋西が確認するとそのまま話を続ける。
「タクミくんのときは失敗しましたがタクミくんにやった方法で彼を取られました。彼が本当に相手が好きで幸せになるのなら私は文句のいいようがありませんが、彼の場合、本来ならタクミくんもやられてたであろう方法で脅されてました」
「タクミ、どんなことされそうになったんだ?」
「なんかされそうになる前に成海先生にパスして来たからな。憶測だが俺を押し倒して秋西に覆いかぶさるように倒れこんだところを写真で取るとかそんなところだろうさ」
「ありがちだな」
「ありがちだが脅しの要素としては十分だと思うぞ」
「今、タクミくんが言った方法であってます。ただ、私と別れさせるだけならまだしも、その後も彼への嫌がらせは続いてるみたいで、今、彼は登校拒否で学校に来てません」
「あ~成海先生の言ってた、精神的に追い詰められたのは秋西の彼氏さんだったのか」
「たぶん、あってます。けど、他にも何人か被害者はいるみたいです」
「押し倒し作戦の実行者は元彼氏持ちの女の子でその時取った写真はその子達にも有効ってとこか」
「はい、タクミくんの憶測で間違いないと思います」
大まかな話の流れは理解した。秋西も他の女の子たちも結局は彼氏さんとかその他の女の子とかを守るために被害者から加害者になっていたと言うことだろう。こういうことが時たま起きるから恋愛というものは怖い。
恋は盲目。という言葉は状況によっては本当に怖いな。
「で、だ。これからどうするか、だが……」
と俺が話を進めようとしたとき。誰かが公園の敷地に敷き詰められた砂を踏みしめる音が聞こえたので俺は言葉を閉ざす。不穏な空気。気温が一度下がったような感じがした。タイガも同じように感じたのかスッとブランコから立ち上がり秋西の横に立つ。俺はというと着ていたブレザーを脱いでハルに掛け、
「ハル、ちょっとごめんな。少し離れるぞ?」
「うん」
ハルは返事をし、縮こまるように掛けた俺のブレザーをぎゅっと掴む。まあ、シワになっても仕方が無い。俺はハルの頭をポンッポンッと二回ほど叩いた後、音のした方を向き、誰にもわからないように腕時計のベルトに挟めていたコインを手の中に落とす。
誰だ?俺の目の先にいたのは一人の男。明らかに異質の空気を漂わせている。見た目からして同年代だが目に生気を感じられない。言って見れば病んでいる。だらしがなく手をぶら下げるようにして、その手には包丁。背中を軽く丸めてどこを見るわけでもなく、目は虚空を見つめている。
「コウくん!」
タイガの横にいる秋西はその明らかにおかしい男の名前らしき言葉を発する。
「おい、まさか……」
タイガは秋西の方をちらりと見て秋西に確認を取ろうか迷っているようだ。
「そのまさかだろうさ」
秋西の声に反応したのだろうか相手の男の目がこちらを向く。その目は秋西をしっかりと捉えている。
「コウくん!ねぇっコウくんでしょ?」
「……マエの……だ」
男は何かをぶつぶつと呟き始める。秋西の様子から間違いなく、あの男は彼氏さんだったんだろう。もう、まともとは言えない……。男は危なげな足取りでフラフラとこっちに近づいてくる。距離が半分になったところで男が力強く足を踏みしめ、砂埃が少し舞う。
「オマエのセイだっ!」
夕日を反射し朱の混じった光を発する包丁を構えて走り出す男。狙いは秋西、まっすぐに向かう。
すかさず間に入るタイガ。さすがだと言いたいがこのタイミングはまずい。俺もできる限り前に出て、コインを持つ手を構える。頭はまずい、力加減が出来ないから。手を狙うにしてもしっかり脇を固めているので落としづらいし、勢いのまま誰かに刺さるは無くても怪我をするかもしれない。なら!と相手の足に向けて思いっきり投げつける。
「よし」
見事にコインは男の右足のすねに当たり下から崩れ落ちるように倒れる。少し出来たその間にタイガは秋西の手を引き後方へと距離を取り、俺は男と秋西、タイガの間に立つ。
出来れば包丁を取り上げたかったが男の包丁の持ち方がしっかりしていたために離れることなく握り締めている。
男は右足をかばうようにしながらまた、フラフラと立ち上がる。
「どうして?コウくん。どうしてこんなこと……」
「オマエが悪いんだ。全部オマエと付き合ったカらオレノ全テが狂ったんダ」
その男の目には俺とタイガはどうやら映って無いらしい。あくまでも標的は秋西か……。今ならまだ包丁を落とせる。と思い、俺は屋上の時にブレザーのポケットにいくつかコインを入れていたので、コインを取り出そうと思い腰の辺りに手をやるが……。
あ……ハルに預けたんだった……。
ズボンのポケットを軽く叩きながら俺は顔を少しだけ振り向かせ後方にいるタイガの方をみる。
「やっちゃった……てへっ」
「てへってなんだ!前!タクミ前!前!」
タイガの声に俺は再び前をしっかりと見ると、体勢を立て直した男は再び包丁を構えて走り出している。間にあわないな。

ドスッ。

そんな音が聞こえた気がする。勢いのまま俺は倒れる。
男は包丁を手放したのだろう。金属の落ちる音がする。
痛い。すごく痛い。肺が思いっきり押され息が詰まる。
刺されたという痛みよりも何か棒で突かれたような鈍い痛み。
背が低いというのはなかなかに不便だ。
腹に刺さればまだいいものを背が低いがゆえに俺の左胸の位置に包丁が刺さるのだから。
刺さるのだから?
間違いなく何本か肋骨は折れてるだろう。
下手に動かないほうが良いのは確かだ。だけどそういうわけにもいかないか。
周りの騒がしい声に俺は無理にでも体を動かす。騒がしい声といっても水の中にいるときのように分厚いガラス越しに聞くようにぼやけている。
心臓の音がデカイ。どくっどくっどくっと速い鼓動が聞こえる。
息が荒い。整えないと…・・・。とはいえ肋骨にダメージがある以上、深呼吸なんてしたら痛いだろうな……。
視界は案外はっきりしている。軽くふらつく俺を支えようしたのだろうが俺の考えてる事がわかってんだろうそこはさすが幼馴染だ、タイガは俺が倒れたときに慌てたハルを抑えてくれている。ハルだったらおそらく怪我した俺を問答無用で揺さぶるだろうからな、ありがたい。
えっと、秋西は尻餅をついて泣いている、何が起きたかすらちゃんと理解して無いだろうがとりあえず怪我は無いようだ。
さてと、やっと自分がした事を理解したのだろう男を視界に収める。がくがく震えてんな~。今にも逃げ出しそうだ。
深く息を吸い込む。痛い。肺というよりこりゃやっぱり肋骨だな。
「歯ぁ食いしばれ!」
突然大きな声を出した俺の方を見て驚く男を捉えて、痛さを噛み締めて顔面を拳で殴る。
背が低いもんで右斜め下から顎を貫くように打ち込む事になった。
そういや、この間タイガたちとゲーセン行った時に遊んだパンチングマシーン助走無しで120kgだったか。ま、それくらいでも、問題ないか……。
殴った後、二人分の倒れる音。
「死ぬほどいてぇ」
目を閉じた分、今度は耳の方に意識が回るようになったのか周りの音がはっきり聞こえる。
「ハル!ちょっと待て!下手に触ると怪我が悪化する!」
「トラちゃん避けて!たっくんが!たっくんが!ねぇっ!」
俺はまだ、寝ちゃいけないらしいな……。右手はまだ動く、胸の痛みが大きいから人を殴った手の痛みはそれほど感じない。刺されただろう左胸に軽く右手を当て、目の前に持ってくる。
「ありゃ?血が出てない?」
俺は何時から人外になったのだろう?じゃなくて、血が出てない。手の甲を見ると殴った時の衝撃で血はにじんでいるがただそれだけ。
肋骨は折れてる。血は出てない。わからん。痛みを我慢しながらタイガ達に声をかける。
「タイガ、ハル。あと、秋西!」
「おう!?」
「何!?たっくん、どうしたの!?」
「へ!?あっはい!」
タイガ達はすぐに俺の近くまで来てくれる。ありがたい、あんまりでかい声出すと痛いからな。
「秋西はあいつの看病してやれ」
「で、でも……」
「仮にも元彼だろ。目、覚ましたら殴るなり煮るなり好きにすれば良い」
「う、うん」
秋西はすぐに倒れているもう一人の方へと走っていく。いい子だ。
「んで、ハルはそのまま動くな」
「いや!」
首をぶんぶん振り回すように振るハル。人形のようにポロッと取れてしまいそうな勢いだ。
「頼む」
「う、うん」目に力を込めてハルの目を見て言うと渋々ながらも肯定してくれた。
「頭出せ、ハル」
頭にクエスチョンマークを出しながらも言葉に従ってくれるハル。いい子いい子とするように俺は頭を撫でてやる。
ちくしょう、幸せそうな顔しやがって……。痛いがまあ仕方ないか……。
俺は頭を撫でながら最後にタイガに声をかける。
「タイガ、すまないが俺の胸ポケットに何か入ってないか見てくれないか?」
「大丈夫なのか?触れても」
「よく見ろ、血は出てない。でも、肋骨は何本かイってそうだから気をつけてくれ」
「ホントだ。よし、少し我慢して」
タイガはそっと俺の胸ポケットを探る。と思ったがさすがに少し荒っぽく痛い。ついついハルの頭を撫でていた手に力が入る。
「にゃ!」
猫みたいな声を上げるハル。それと同時にタイガが何かを見つけたようでそっと取り出す。
「これ入ってた」
そういうと軽く曲がり真ん中に傷が入ったゲームセンターのコインをタイガは手に持って見せてくれた。
「そういや、公園に来たときに胸ポケットに入れてたな、そんなの」
よくわからないが面白くなって声を上げて笑おうとしたが、刺さってなくても肋骨は折れている。
「いってぇえええええ!」
その後、俺は病院へと運ばれることに。秋西の元彼は逮捕、秋西はその彼としっかりと話し合って別れる事にしたらしい。
「私は新しい恋を探す事にします。誰になんと言われても次は譲りませんし、妨害されたとしてもぶっ飛ばしてやります」とのこと。
ハルはアヒルの雛のようにずっと俺のあとを付いてくる様になった。
「次、無茶したら怒るからね」
検査で2、3日入院すると言った時は、わざわざどこからかカメラを持ってきて設置、俺を24時間監視している。落ち着かない。落ちつかないったらないがこればっかりは許してやらなければ。
タイガはというとハルの監視行動に大爆笑し、
「ま、仕方ないわな!」
と怪我人の俺の背中を思いっきり叩いていった。せっかく直り始めていた怪我が悪化。全治3週間のところ、1ヶ月になった。
それから、何日か経った頃。1週間と少しで退院できると医者は言っていた。まあ、少しはやい夏休み気分だ。と言いたい所だがその前に一つやり残した事がある。散歩程度の外出は許可されているとはいえ、見つかったら怒られるのだがいいだろ、少しくらいは。
「多少は無理させてもらうか」
俺はハルの設置した監視カメラの範囲にあわせて作っておいた偽造用写真を一度カメラに布をかけてから設置して、服を着替えてこっそりと個室の部屋から出る。
着替える服は一応制服、上着のポケットにコインが入っているのを確認して、一枚取り出す。
「よっと」
右手の親指でコインを弾き、右手の甲で受け止めて左手で隠す。
「表」
そっと左手を開くとコインは絵柄の付いた表側だった。誰にも見つかりませんようにと願掛けしながら俺は病院から抜け出した。




つづく
その1はこちら
その2はこちら
その3はこちら
その4はこちら
その5はこちら
その6はこちら
その7はこちら



みなさんこんにちわ(*・ω・)*_ _))ペコ
いちわっとです。
後もうすこしでこのお話も終わりです。
バニラソルトからどんどん離れていってるって?
きにしないきにしない。とりあえず落とせるところまではのんびりと~いきたいと思います
はてさて、こっからどうなることかw
今後も楽しんでいってもらえると嬉しいです。
長く続けてしまって申し訳ないです
感想、意見がありましたら気軽にコメントください(*・ω・)*_ _))ペコ
ではでは



SSS「心象ドッペルゲンガー」

私の前に私がいる。そう、私の前に私がいる。
鏡ではない。そう、鏡ではない。
例えば前に鏡があったら。そんな封に考えて私は鏡に添えるように右手を出す。すると前にいる私は鏡のように左手を私の右手に添える。
やわらかい感触。人の感触。
無機質な冷たい感触ではない、人の軟らかさを右手に感じる。
「私は私。あなたはあなた?私とあなたは違う人?」
私は向き合う私に声をかける。返事など期待はしていない。ただ、問を投げかけるだけ。
『私は私。あなたは私。私とあなたは同じ人』
予想に反して目の前にいる私は返事をする。ただ、問に対しての答えを返すだけ。
「私とあなたは何が違う?」
『私とあなたに違いは無い』
「私とあなたは何が同じ?」
『私とあなたはすべてが同じ』
「私はあなたが大嫌い」
『私もあなたが大嫌い』
「大嫌いなあなたを私は殺したい」
『大嫌いなあなたを私は殺したい』
「あなたは私に何をする?」
『あなたは私に何をする?』
私は添えていた右手と下ろしていた左手を前にいる私の首へと伸ばし、押し倒す。目の前の私は抵抗などしなかった。
「なぜ、抵抗しない?」
『私はあなたが嫌い。殺したい。なら、殺されても同じ』
「どうして?」
『私とあなたは同じ私。私を殺せばあなたも死ぬ。あなたが死ねば私も死ぬ』
私は力を入れて首を絞めかけていた手を緩め、私に伸し掛かられて為すがままの私を見つめる。私は私が嫌い。だから目の前にいる私が嫌い。嫌いな私を殺せる機会はこれから先あるのだろうか。いや、もう無いだろう。
私は再び手に力を入れる。嫌いな私を殺す。殺す。殺す。コロス。コロス。ころす。
殺されそうな私は抵抗をしない。した事と言えば放り出されていた右手を首を絞めている私の手に微かに震えながら添えただけ。

そして、私は動かなくなった……。

どちらの私が動かなくなった?本当の私はどっち?
どちらの私が本物でどちらの私が偽者?
頭の中が麻酔にかかったようにくらくらとする。嫌悪感。気持ち悪い。私は何をした?何を?
動かなくなった私の首を閉めていた両手を離し、手のひらを見つめる。すると、なぜか涙が零れ落ちる。
頬を伝い、手のひらを伝い、動かなくなった私に落ちる。
悲しいはずは無い。嫌いな私を殺したのだから。嫌いな、嫌いな。キライナ。キライナ。
ダイキライナワタシヲコロシテ、カナシイハズガナイ……。
後ろから何かの気配を感じあふれる涙を抑えきれないまま、後ろを振り向くとそこには幼い頃の私がいた。
幼い頃の私は無表情でそっと動かなくなった私を指差す。
『ねぇ、あなたが本当に殺したのは誰?』
「私が殺したのは私自身」
私がそう答えると、幼い頃の私はその指を少し上へ向けて私を指差す。


















『じゃあ、今そこにいるあなたは誰?』












fin




はい、ということで皆さんこんばんわ(*・ω・)*_ _))ペコ
いちわっとです。
今回はちょっとグロかったですね
すみません(*・ω・)*_ _))ペコ
久々のSSSは「心象ドッペルゲンガー」でした
心象ということでまぁ精神にくる感じで書きました
どうだったかな?
感想あったらヨロシクお願いします
SSSは基本練習用なので今回は心的イメージをテーマに書きました
ありがちな感じではありますけどね~
まぁ自問自答ですね
ということで皆さんに考えて欲しいな~と思ったところは結局最後まで残った「私」は誰なのか
そんなところですかね
ではでは(*・ω・)*_ _))ペコ

ON AIR!!生徒会 リプレイ「ウソツキは恋ドロボーのハジマリ その7」お題『バニラソルト』

屋上への階段を上る。少し威嚇と来訪の意味を含ませて足音を大きめに立てながら一歩一歩力強く上る。反響し響く音を追うように遠くまで耳を澄ます。
すると上の階の方でかすかに複数の足音と内容までは聞き取れないが声が聞こえる。明らかにこちらの動きを探っているような感じだ。成海先生と話している辺りから何かの視線は感じていた。だって俺、軽度の視線恐怖症だもの。
まあ、それはおいておくとして。今はその視線といういらない俺へのラブコールを送り、放課後の落ち着いた静かな学校のはずが少し落ち着かない変な空気を漂わせるバカなやつらの話が重要だ。
屋上の扉の前にたどり着く。夕方でも昼間でもここは薄暗く、夏の暑さを忘れられる程度には涼しい。ちょっとした避暑地だ。あまりきちんと管理されていないのか所々黒ずんだり風雨にさらされて錆びたりしているのが目に付く。
「さて、とどうしたものかね」
俺は屋上の扉に耳をつけて外の様子を少し探る。誰かいるのだろう、それも複数人。これまた内容はちゃんと聞き取れないが一人は何かを嫌がり、一人は……いや三人くらいだな。その三人くらいは何かを強要している。あと、何人かいそうな感じはするが所詮そこまで。俺の勘違いかもしれないしどうしようもない。
俺は財布からゲームのコインを何枚か取り出して一枚を手に持ち、腕時計のベルトと腕の間に一枚、余った分をポケットに入れて置く。それと携帯を取り出して、校則でやってはいけないがこの際どうでもいい。メールを一本送っておく。
完全に静けさが広がったところを見計らって、まずは相手の予想通りに登場してやろうか。いや、それもまた面白くないな。ドアノブを軽くひねり重たい扉を足で思いっきり蹴って開ける。うん、こっちのがいい。
「わぁっ!?」
一歩前に、屋上に出た時、その先で俺宛に手紙を出したであろう人物が声を上げて驚く一方、扉のある方とは逆の位置からかすかに物音が聞こえた。確実に誰かいるか……。
「驚かして悪かったな。そこの扉立て付けが悪いみたいでさ。なかなか開かなかったんだ」
「い、いや大丈夫だよ。少しびっくりしただけだから。それよりも突然呼び出してごめんね」
「3組の秋西だったか?」
「う、うん」
3組の秋西 優、あきらのかわいい子データベースに入っていた。聞いてもいないのに俺に見せ付けて来る辺りあいつには余り友達がいないのだろう。とそんなことはどうでもいい。秋西には彼氏がいたはずだ。あきらが嘆いていたし、あいつのデータに間違いは無いはず。
「それで、呼び出した用件は?」
少し挙動不審に落ち着かない様子の秋西。あの封筒から言って告白なのだろうが、そういった甘い雰囲気は感じない。夕焼けで染まっている顔であったとしても照れくさそうな雰囲気はどこにも無かった。
「手紙、見てくれたんだよね」
「ああ、これだよな」
「そう、それで察しがついてると思うけど……」
「はい、ストーップ!」
俺は手を叩いて秋西の言葉を止める。秋西は突然の俺のストップコールにきょとんとしていた。
「俺に用っていっても告白とかじゃないんだろ?秋西には彼氏がいるって聞いてるからな」
「あ、いや、その。この間別れたの……」
後半の言葉がしぼみ、とても聞き取りづらかった。後悔している。納得がいっていない。そんな感じだ。
「俺さ、虫が嫌いなんだ」
「へ?」
俺の再びの空気を読まない突然の発言にきょとんとする秋西。その一方で屋上の扉のある壁の影からイライラとした雰囲気を感じる。嘘の本題になんか入らせてやんねえよ。
「ここさデカイ害虫が三匹か四匹くらいいるからさ。場所変えないか?」
俺は秋西に屋上の扉のある壁の影の方を目でちらりと見て気付いていることを教える。
「あっ」
秋西が俺のアイコンタクトに気付いたのか隠れているやつらの方を完全に見て、俺を見て声を上げてしまった。
「何こっち見てんの?あのバカ」
「あの男に完全にきづかれてるんじゃないの?」
「ねえもうやめようよ~」
三人だけだったようでひそひそと話しているのが丸聞こえだ。まあ、俺はまだ気付かない素振りを続けるわけだが。
「気付かれてるわね」
「じゃあ作戦Bで行くの?」
「だからもうやめようよ~」
「うっさい行くわよ」
ついに乗り出してくるか?と思ったが屋上の扉が別の人間の手によっていきなり開かれて、飛び出そうとしていた彼女らは慌ててまた隠れる。
「グッドタイミングだな」
「えっ?えっ?」
俺は屋上の扉から出てきた人の方を見て笑うと屋上から出てきた人も俺の方を見て微かに笑う。
「ほら、そろそろ下校時刻だぞ!青春ごっこならよそでやれ!帰った帰った!」
「すみません、成海先生。すぐに出ますよ」
「鍵閉めるんだから早くしろ!今日は宿直でだるいんだ」
俺はきょとんとしている秋西の手を掴み、屋上の扉の方へと向かう。
扉を開く成海先生とすれ違う瞬間、小声で。
「あとは頼みましたよ」
「お前もしっかりやりな」
秋西はそのやり取りに呆然とし、俺に手を引かれたまま屋上を出る。
「じゃあ先生!また明日!」
「明日は英語の翻訳忘れるんじゃないよ!」
わざと大きな声で二人して挨拶をする。これで第一段階終了だ。誰かは知らんがあとは成海先生にこってり絞ってもらえ。先生のメアド聞いててよかったな、ホントに案外役に立つものだ。
玄関まで無言で歩く俺と秋西。
「お~い、秋西~」
「へっ!?あ、うん」
「とりあえず外出るぞ」
「うん」
突然の状況に呆然として頭がしっかり働いていないようだ。靴を履き替えてとりあえず校舎から出る俺と秋西。
「ちょっとそこの公園まで行くか」
学校の近くにある公園の方を指差して俺は秋西をどこぞのRPGでは無いが後ろに連れるように歩く。
「結局使わなかったな」
俺は呟きながら手に持っていたコインを親指で弾いて宙に上げては手のひらでキャッチ。それを繰り返す。
「ねえ、タクミくん」
「ん?」
恐る恐る俺に声をかける秋西。俺はコインで遊びながら適当に返事をする。
「怒らないの?」
「誰に対して?」
「わ、私に……対して」
「なして?」
「だって、告白なんてこと嘘でもしようとしてだまそうとしたから……」
「結局しなかったろ?」
「うん、そうだけど」
「結局何も無かったし、秋西に強要しようとしたおバカ三人は成海先生にこってり絞られてるだろうからいいんじゃないか?」
「で、でも!」
「罪悪感があるなら何があったか話せばいい、それが罪滅ぼしってことで。Are you OK?」
「うん」
ちょうどよく近くの公園へたどり着く。少し大きめの公園でベンチやいろいろな遊具がある。夕方、それも夕飯近くということもあってか遊ぶ子供の姿はなく。夕日の朱に染まる公園はどこか悲しい。
「っと、先客がいたか」
「へ?」
その公園にいたのはハルとタイガ。ハルがすすり泣き、タイガが少しぼろぼろになっているところを見ると一悶着あったようだ。タイガの揺らすブランコの錆付いた音とハルの鼻をすする音が聞こえる。
「あ……」
秋西がその様子を見て足を止める。少しでも無理やりでも加担してしまった罪悪感があるのだろう。
「ほら、行くぞ」
俺は秋西を促して歩を進める。
タイガは俺に気付き、苦笑いしながら片手を上げる。
「よう、ひどくやったみたいだな」
「みっともないとこ見られたな、てっきり先に帰ったもんだと思ってた」
「まあ、こっちもいろいろあってな、成海先生にバトンタッチして来たところだ」
「そうか……」
「何かあったか聞いてもいいか?」
タイガは頭を掻きながら下の方を向いて苦笑い。タイガはハルの方をちらりと見ると軽く息をつく。
「タクミは知ってるからはしょるけど、バカの取り巻きの連中にハルがいじめられてたからさ。ぶっ飛ばしてきた」
「タイガが呼ばれてたんじゃなくてハルが呼ばれてたのか」
「タクミの手を煩わせるわけには行かないだろ?」
「そんなこと気にしなくてもいいのに」
「オレの勝手だ。気にするな」
これ以上聞くことも無いだろう。あとはハルを宥めるついでにいろいろ聞けばいい。
「それでタクミの後ろに隠れてるその子はどうしたんだ?確か、3組の秋西だったよな」
「ああ、そういやいろいろと聞くことがあったな」
俺は少し横にずれて秋西を前に出す。秋西は少し萎縮してまっている。罪悪感があるのだろう。
さてと、厄介なことが多いなこのツケはかなり大きくなるぞ……。本当にめんどくさい……。


ツヅク
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その5はこちら
その6はこちら

さてと、皆さん゚*。(o'∀')b。*゚こんにちは♪
と明るく行くいちわっとです(*・ω・)*_ _))ペコ
さてはて
もといはてさて、タイガとハルの裏話は別の機会で話すとして今回はあくまでもタクミくんメインで行きます
考えながらそのまま一発書きしているのでストーリー構成が崩れている可能性も
そんなときはなんか変だよ~っと叫びましょう
すぐさま確認しに飛んで行きます
感想その他、ありましたら声かけてください~
ではではいちわっとでした